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「でもラルカ、一緒に行っても足手まといにならない?」
最初聞いた時は、舞い上がって即答したけどよく考えると
大事な時に魔法もろくに使えない子供が
一緒にいては足手まといな気がしてならない
「いいえ、アスラ様をお一人で留守番させるわけにはいきません!」
ぐわしっ!と抱きしめられた
いきなり力強い抱擁に身長差もあって
ラルカの硬い腹筋に鼻を押しつぶされた
ローブ越しで普段気づかないけど意外と腹筋が硬い…
うーん
心配で置いていけないて事か…過保護すぎるなぁ
クスッ
さっきの厳しい雰囲気からいつものラルカに戻った気がして
何だかくすぐったくてつい笑ってしまった
「アスラ様?」
「ここなら皆いるし一人じゃないょ?」
ラルカは困ったような顔をしてアスラの小さな手をとり
「アスラ様…私が一緒にいたいのです。
お気遣い痛み入りますが…
アスラ様一人守れないような腑抜けでもありませんし
私の居ない間に何かあればきっと私は夜も眠れません!」
と頬っぺたを両側から引っ張られる
何も腑抜けなんて言ってないのに…
「ごふぇんなふぁい」
間抜けな声で反射的に謝ってしまった
そんなアスラを
フッと笑い
「寧ろ今回は、色々みておくよい機会でしょう」
寿命は短いもののこの地で一番初めに生を受けた種族
人間にアスラは前から興味があった
神々に愛され祝福され
そして
絶望させる程の悲しみを与えた種族
会ってみたい
「チェイラが何かしら情報を掴んでるかもしれません私たちも参りましょうか」
と気が済んだのかパチンと指をならすと
ラルカを中心に風が駆け抜けた
すると今までラルカの白い肌が濃い肌色になり
長く透き通るような白髪が
つやの無い短めの茶髪になり綺麗な碧眼が茶色に変わった
体格と優しく整った顔立ちはそのままだけど
色が変わるだけで結構違うもんなんだと関心した
「アスラ様も今のお姿だと目立ちますので」
自分に向き直ると妙に色気のある仕草で髪を一房手にとり口付けた
「見事な銀髪、艶やかな金の瞳を変えるのは忍びないですが」
とたんラルカの指の隙間から見えた自分の髪が赤茶に変わる
「申し訳ありません、暫くこのような見窄らしい格好で
居させてしまう私を許してください…」
抱きついたかと思うと
着心地よかったローブからお互い麻で出来た
肌触りのごわついた地味な色合いの上下になっていた
「うぁーっなんか新鮮だね!?」
いつも社と家の往復
そして座学と代わり映えのない日々に
不満があったわけではないけど
自然と気分が盛り上がってしまった
「そうですか…私は何時もの愛らしくも美しいアスラ様がもう恋しいです」
ここにいるから…
怪訝な顔をラルカに向けると
クシャッと髪を撫でられ
「さて、ケチュアに向かいますか」
ーいらっしゃい、一緒に飛びますょー
とアスラを片手で抱え上げ
バランスを崩しそうになったアスラは、ラルカの首に手を回した
これから何が起こるのか想像も出来ない上に
初めての外出
緊張と期待感から神経が研ぎ澄まされていく気がした