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黎明を祈る者  作者: GM
7/9

「さてと、困りましたね不測の事態が起きてしまいました」


家に戻りアスラとラルカは机を挟んで向かい合って座り

ラルカの背後にチェイラが立っていた


「不測の事態って?」

チェイラがどっかから戻ってきた時は決まっていつもラルカは難しい顔をする

といっても涼しい顔の中に僅かに感じ取れる程度だが

ここ最近は考え込んでる事が確かに多かった気がする


ーまだ早いですがしょうがないでしょうー


ボソっと呟いたがラルカの顔から迷いは消えていた


「アスラこれから言うことはしっかり心得てください」


いつになく真剣にアスラを見つめる


「はい」


自然と姿勢を正し緊張してしまう


「以前人間と妖魔の関係について説明しましたね?」

アスラが記憶を失ったことによって

ラルカは根気よく1から全ての事を丁寧に教えてくれていた

カオラの森の周辺にいる妖魔について

人間という種族がいるということも

そしてカオラ族の役割についても


「動物は自然を食し、人間は動物を捕食し

妖魔は人間を捕食するそれが自然の摂理」

確認するようにアスラは答えた


「そう、私たちは見守る者決して手を加えてはいけません」


古くからカオラ族はそうしてきたらしい

遠い昔

神々は、この世界を造り

そして自分に似せて人間を造った

糧となるよう自然と動物を造り祝福した

だが愚かにも人間は欲を覚え

争いを繰り返し殺し合い

領地を広げるために自然を破壊し

糧としてでなく動物を殺し牙や皮を剥ぐ

その結果世界の均衡を崩したという


神々は悲しんだ

そしてその悲しみを掛け合わせ

人間の欲を形にし妖魔を造り罰した

だが人間は変わらなかった

絶望した神々は

終焉に向かうであろう世界を見兼ね

カオラ族を残った全ての力を使い造り出し

自分の代わりに見届ける者とし

悲しみながら長い眠りについた


前ラルカが自分に聞かせた話を思い出した

妖魔はカオラの森にもいるので

防御壁越しだがたまに見かけていたが

実は、アスラはまだ人間を知らない

外見は自分達と似てるらしいが

人間の欲を形にしたといわれる妖魔は

恐ろしい外見をしてた


「ですがー

ラルカが声色を変えてアスラを見据えた

ハッ

いけない真面目な話をしてるところで考え事してしまった

慌てて再度姿勢を正しラルカの言葉に耳を傾ける


「見守るという事は摂理の番人でもあるということです。

アスラ様には今回私と一緒に人間が住む地へ向かってもらいます」


「はい」

不本意ですがー

と呟くラルカの気持ちとは裏腹に胸が高鳴った

記憶を失ってから自分はこの森から30年間1歩も出た事がない


その時

ずっとラルカの後ろで控えてたチェイラが割って入ってきた

「お話の途中恐れ入ります

動きがあったようですので先に失礼いたします」

とラルカに許可を貰いアスラに深く一礼しその場で消えた

思ったよりも切羽詰まった状況なのだろう


ラルカはチェイラが消えた場からまたアスラに顔を戻し



「今回妖帝も絡んでるので妖帝について説明しなければなりませんね」

と一段と厳しい顔つきになった


「妖帝?」

初めて聞く言葉だった


「言葉のとおり妖魔の王ですが

その力は絶大で東西南北に夫々妖帝が存在してます」

街一つ消してしまうのも造作ないでしょうと付け加えた


「妖帝はカオラと同じく何も口にせずとも永遠の時を生きる事ができます

ただー…彼らは生命力を維持し続けるために魔力を糧にする必要があります」


「あれ?魔力は枯れる事ないのでしょう何故糧する必要があるの?」


「種族によって魔力の量も質も違ってきます。魔力の量は生命力に比肩し

故に魔力が尽きるとき生命も終わりを告げるのです。

人間はそれを寿命と言いますがカオラは、不死ですので…」

だから枯れることがないとー


「妖帝の魔力は膨大ですが永遠には続きません。

先ほど説明したように魔力の量は生命力に比肩するため

永遠の時を生きるためには魔力を糧としなければならなくなってきます」


ラルカが苦虫を噛んだような顔に一瞬なった…ように見えた

「ラルカ?」


と声をかけたら妖帝の話を続けましょうと話を戻した


「そこで今問題となってるのがその魔力の行方についてです」


「えっ…?魔力の行方?」

素っ頓狂な声を上げてしまった

誰かが行方不明になったて事だろうか…


「本来妖帝は眷属をもたないものですが、

北にいる妖帝には眷属に近い存在がいまして」

ーこれも不測の事態と言えるべき事なんでしょうが…ーと呟き


「その力は妖帝と比べたら僅かなものですが…

妖魔や人間に比べると大きすぎるものでした。

ですがそれがここ数ヶ月で徐々に薄れ今は殆ど枯れてしまったといっていいでしょう」


「寿命じゃないの?」

だって、生命力と魔力は比肩するんでしょう?

と聞き返したらラルカは無言で首を振り


「チェイラの報告によると

人間との間に子供が出来た可能性があるようですね」

まだ確認は取れてませんが…と


え…?

妖魔は人間を捕食する者だったはずじゃ?

例え妖魔でなく妖帝の眷属に近い存在でも同じ事では??

と今教わった事から必死に頭を回転させ

考えている事が思いっきり顔にでたのか

ラルカが頷いた


「妖帝の糧は人間ないし妖魔の魔力…

その眷属とて同じ事でしょう」


「そして人間とその方の交わりは許されません」

とラルカは一層厳しい顔つきになった


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