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最奥のアスラの部屋を出て
隣接しているラルカの部屋を過ぎ突き当たりの階段を降りると
二人暮らしには広すぎる食卓があり
簡素だが全て一枚石で出来てるかのような
継ぎ目がない不可思議な作りの家を出ればすぐ階段が続き
下には円陣になった20世帯程の小さなカオラ族の集落が見渡せた
その円陣になった家の中央広場には社があり
その社へ毎朝御勤めにいくのが両親が他界した今、
カオラ族の長としてアスラの唯一の“仕事”だった
床や屋根、家屋を繋ぐ地面にいたるまで一枚石からなっている集落は
見るものがいれば森の中にあるのにも関わらず
無機で厳かにみえるだろうが、
強力な魔法の防御壁や結界やらで外界との接触を遮断してるため
中から外は眺めれても外から中を覗くことは叶わない
アスラとラルカが御勤めといわれる礼拝に行く朝から正午までの時間帯は
誰も姿を見せない決まりになっており静まり返っていた
中央広場までくると無言のままラルカが道を譲りアスラを先に行かせる
いつもここで御勤めが終わるまで控え待っていてくれる
中央には社と呼ぶにはとても小さな
だかとても見事な石細工が施された円柱型の社が空に浮かんでいて
どこにも入口は見当たらず
その下に発光された方陣が描かれてある
方陣は、長たる者にしか反応しないので
そのまま独り陣の中に入る
すると光に包まれ次の瞬間社中にいた
外観は小さな円柱型の社
中に入ると異空間に繋がってるのか
だだっ広く真っ白な空間の中央に小さな泉がみえてくる
お勤めといってもアスラは厳密に何をすればいいのか分からない
ラルカの話だと泉に入ればいいとしか言ってなかった
泉に入ることで清められ
カオラ族すべての者に生命力を分け与えるとかなんとかかんとか
実は、流石のラルカも中に入れないらしく
それ以上の情報がないらしい
ただ不思議とこの泉に入水すると意識が途切れ目覚めて外に出ると
あっという間に正午になってたりするのだ
意識が途切れたからといって
顔ぎりぎりまである水位に足を滑らせ溺れる事もなく
ローブも濡れることもない
今日も不思議泉に入水し同じ反応を起こし外に出た
「ぅぅ…疲れたぁー」
朝っぱらからていっても正午になってるが
水から出ると疲労が半端なく襲ってくる
「本当にコレでいいのかな…」
本来は、長から受け継がれるべき知識がごっそりないのだ
毎度意識が飛ぶしかといって意識がない間何か起こってる様子もなく
今日もただ疲労だけが襲ってきた
きっと自分には力がないからこうも体力を奪われるのだろう
父ならもっと…
ダメだ
ここに来るといつも自己嫌悪に襲われる
ラルカを待たせてしまう
出よう
心の中で元居た場所を思い浮かべ念じる
すると景色が変わり足元で方陣が発光していた
そこにあったのは何時もと同じ穏やかな光景ではなく
険しい顔でラルカとラルカの腹心のチェイラがなにやら話しをしていた
アスラが戻ったことに気がつくと一旦話を止め二人で恭しく
「お勤めご苦労様です」と敬ってくれたが
広場の彼方此方がざわついた感じになっていて
一目で何かあったのだろうと分かった
ラルカが一旦チェイラを下がらせ自分の元に歩み寄り屈んで
「アスラ様少し厄介な事になりました一旦家に戻りましょう」
と耳打ちされ急かされた