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黎明を祈る者  作者: GM
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黎明を祈る者 1

大分修正させて頂きました

長く凍てつく冬も明け寂しさを吹き飛ばす嵐が春の訪れを知らせてくれる

やがて緑や色とりどりな花々が森に溢れるようになり

暖かい日差しがそよ風にのって

窓口に鮮やかな自然の香りを運んでくるようになり

おのずと心地よく目が覚めた


目蓋を開くと


正面には足を組んだ本



あぁ、ラルカの足か…

とぼんやりしながら無心で頭に入ってきた情報を整理した



「アスラ様おはようございます」


枕元の椅子に座ってる銀髪銀眼青白い肌をした儚げな麗人は、

アスラの寝覚めに気付くと読んでいた本を畳み

寝起き見るには眩しすぎる笑顔を向けてきた


「ふふっ、おはようラルカ」



釣られて笑顔を返しガバっと一気に上半身を寝台から起こした


それを見越してたかのように立ち上がったラルカの向かった先には

薬水の入った水差しがあり器にそれを注ぎ入れ差し出してきた



「では、寝覚めの一杯をどうぞ」


と差し出された器の中身の色は

寝覚めの一杯と呼ぶには憚れるような

ドロドロした茶色の液体があり飲むのが日課といえどたじろいてしまう


「うっ!やだ・・・飲みたくない」


と何時ものように駄々をこねてみたが

笑顔のまま無言で威圧してくるラルカに気圧され


「・・・けど飲む」

とすぐ心が折れ胃酸が込み上がってきそうな臭いを嗅ぐまいと息を止め一気に飲み干した


おえっ…


バタバタもがくアスラに苦笑しながら今度は口直しの水を差し出してきた

直ぐ様空の器と交換し口の中を浄化するべく大量に水を含み

クチュクチュと濯ぎながら飲み干した


ふう・・・助かった・・・

念のためにもう一回・・・


ゴン!!


「何度言ったら分かるんですか、

くちゅくちゅごっくんしない!そんな無作法だと立派な大人になれませんよ!」


敢えての拳骨と今日一回目の一喝

ラルカは自分に叱る時だけ魔法でなく拳骨をしてくる


これがまた格別に痛いんだ

両手で頭に受けた打撃を高速で擦りながら悶える


「うぅっ…ごめんなさい…でも、もう大人になんてならなくていいよ…」


それは、本心


アスラは両親を亡くした衝撃で記憶を失い成長も止まったままらしい

なんせ記憶をなくしてるから当時の事を覚えてるはずもなく

以来、過去も自分の親さえも思い出せず30年間

ラルカが付きっきりで親代わりをしてくれている


さっきのまずい薬も飲まないと頭痛がひどくて普通の生活もままならない

ラルカの話だと魔法ではどうにもできないとか


心的外傷からくる記憶障害


どんな両親だったのか

どんな生活をおくっていたのか未だに何一つ思い出せない


全身燃えるような痛みで目が覚めた時自分を心配そうに覗き込んでいた麗人は


【アスラ様】そう発した言葉は自分の名前だと言い

自らをラルカと紹介し生前【カオラ】の長であった父に仕えてたらしい


きっと生きていれば父は立派な人だったに違いない

だから自分の世話をこうも甲斐甲斐しくしてくれるのだろう


先ほどまで頭をさすってた小さな手のひらを眺めてると


人間で例えるならまだ10歳程のアスラの小さな体をそっと抱き締めてくれた

このまま時が止まればいいと思う程にとても心地よく

物思いにふけ広がる不安を和らげてくれた


「アスラ様心配しなくてもちゃんと成長してますよ。このラルカが保証します」


教えられるがままに時を数え重ねた30年

成長できずにカオラの森から出ることも叶わないまま

それがどれだけの時の流れなのか知ることもない


森の外は恐ろしい見た目をした妖魔という魔物がいて

まだ幼く魔力も乏しい自分には危険だという


「うん…」


チクリ


一生懸命過保護なくらい尽くしてくれるラルカをみてると

自分の無力さ加減に苛立ちを覚えるが


「あっ、そろそろ御勤め行かなきゃでしょ?」


無力なのは、まだ子供だからなんだとアスラは自分に言い聞かせ

慌てて沸き起こった罪悪感に蓋をした


「おや、そうですね急いで支度をしちゃいましょう」


とラルカが体から手を放した瞬間に

アスラの纏ってる空気が重く変化し寝間着から礼拝用の白いローブに変わる


「自分で着るのに…」


と唇を尖らせ不満そうに言うと


「こっちの方が早いでしょう?」

クスッと笑い頭を撫でられた


父と母の魔力はもっと強かったらしいが

今のカオラ族随一魔力が高い人からすれば

全て“こっちのほうが早い”になってしまう…


自分も成れるだろうか …


と子供のままでいいと思う反面

大人になり強くなってラルカに追いつきたいという矛盾した感情に

自分でも気づかないまま先に寝室から出ていくラルカの細い背中を追う



アスラ視点になるので(今回は本人の外観とカオラ族について)詳しく書いてません

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