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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

じゃ

掲載日:2026/04/13

部活終わりの微かな熱気を漂わせ、へとへとになった身体で帰路を辿る。辺りは静寂が続いていて、街灯も少ないせいか心細く感じられる。


ふと隣を見て、私はあからさまに肩を大きく跳ねさせてからその子を見つめる。



白髪で、良く似合うハーフアップで華奢な体型の色が白い女の子、ぱっと見は人形だと勘違いする程だ。彼女は同じ部活仲間で大親友のユヅキ。


部活動の道具やら教科書やらを詰めてるのか、中々に鞄はパンパンだ。


そして極めつけに重ね着しすぎじゃ...?なんて思う程の厚着。

自分とは対照的だ。


それを見てから、私はさっきからほんのり伝ってる額の汗を拭う、目元に近いのがウザったかった。



もう夏頃になるだろうか。

その事実を反芻して口にする。



「あ"っつい〜...春なのにこれってなんなの...?

もはや春夏秋冬じゃなくて夏冬でしょ...」



静寂の中だからか、私の言葉は少し響いていた。

私の言葉に返すようにユヅキは言う。



「そうかな...? まだまだ丁度いい位の温度だと思うけど〜...


ふふっ...、本当に暑がりさんなんだから。」



そう言ってユヅキが微笑んだのを見て、不覚にも頬が熱を少し帯びるのを自覚したが、鼻がツンとした、認める訳には行かなかった。


「...うっさいな...暑いもんは暑いんです〜...!」


少しだけ拗ねたような口調になってるのに気付かずに私は返す。


「はいはい、そうだね〜」


軽くいなされた。その反応を見て改めて、コイツ...と思うが、それ以上に今の雰囲気と心地良さが勝っていた。


結局何も言い返さずにそのまま、とぼとぼと歩く。こんなふうに帰るのもいつぶりだろうか、もうかなり久しいのだろう。



学校でも見かけなくなったし、最後の会話も交わしたのはいつか思い出せない程には疎遠だった。


だからこそ、今の跳ねるような胸の温もりと高鳴り、少しの自嘲が止まらなかった。



他愛もない話をする。楽しい、思わず笑みが零れていく



そうだ、これだった、これが、1番したかったことだ。



最初の心細さなんてもう見る影も無くて、街灯の少なさも静けさも、今は自分だけのスポットライトみたいで心地よかった。


変わらない景色だが、公園を見つける。それがユヅキの家との分かれ目の印だったか、ある程度歩いた所で止まる。


名残惜しくもあるが、ここで別れなければならない。私は、少しだけ勇気を振り絞って言う。


「ねっ...、泊まってかない?今日...」


かなり心臓がバクバクなってる。ユヅキが居るだろう方向を見つめて、ユヅキの反応を伺う。


少しだけ眉をひそめて、困り顔だった。隠しきれない申し訳なさと、それ以上の熱を感じた。


そして、ユヅキは言った。


「ごめんね、ちょっぴり具合が悪いからさ....?

...じゃ!また今度ね!」


そう朗らかに言って、ヒラヒラと手を振って言ってしまった




その言葉を聞いて、私は呟くように言う。いや、漏れ出たの方が正確なのか。


「...相変わらず、釣れないなぁ...ユヅキは...、ははっ...」

私は最後にユヅキをもう一度見てから手を振る、また明日。と。








振り返ることはなく歩く

涙が止まらなかった、拭っても拭っても流れてくる。息も浅くなって、どうしようもない胸の痛さと名残惜しさだけが残る。




馬鹿だな...

そう自分自身に言いつけて乾いた笑い声を上げる。



















もう居ないのに



















あの子が、私に1番心配をかけたくないから、最後まで隠し通していたのも、彼女が亡くなってから知ったか。


あの厚着からも、鞄の異様な張り具合からも、察することはできたはずだろう。



だから言葉が、あの最後の言葉が忘れられない。「また今度」



嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき...!

また今度泊まるって言ったじゃん...!



やり場のない怒りとそれ以上の辛さを抱えて、帰路を再び辿る。静けさがのしかかる。


先程の幻聴に、独り言を返していたのも分かりきってる。


だけど、それ程までに、ユヅキが大好きだった。


しばらく歩き続けて、公園のベンチに座る。



やや遠くには馴染み深いセメント工場が見える。良くユヅキと、そこを研究室みたいだ。と笑いあったか。



その工場からでる廃棄煙を見て、手を伸ばしていた。直ぐに自覚した、自己嫌悪がじわりと滲んだが。


「いっか...」

そう割り切った。




今はただ


あの不純な煙を最愛のあの子によく似た朧と見なして、この世で一つだけの (ヒカリ)を見続けていたかった。


数ヶ月経とうとあの子はあの子のままだった、死人なんだし当然か。そう自嘲したが、それだけで、私は酷く満たされていた。




たとえ最愛の人が

幻覚として、幻聴として現れたとしても、それを光に見なすことを、私は辞められなかった。

儚い百合

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