朝のキスは奴隷のルールです
翌朝——
「ご主人様、おはようございます」
目を開けると——
シエラの顔が、至近距離にあった。
「っ!?」
近い。
唇が、触れそうな距離。
シエラの青い瞳が、俺を見つめている。
漆黒の髪が、俺の頬に触れる。
いい匂いがする。
——心臓が、爆発しそう。
「朝のご挨拶です」
シエラが、俺の額にキスをした。
「な、なな——!?」
柔らかい唇の感触が、額に残っている。
——ドキドキする。
いや、待て。
相手は十五歳だ。
中学生だ。
額にキスされただけで、こんなにドキドキしてる俺は——
変態か?
ロリコンか?
いや、十五歳はロリコンじゃない。
——ギリギリだ。
——ギリギリセーフだ。
——いや、何がセーフだ。
「奴隷は、ご主人様に朝のキスをするものです」
「そんなルールは聞いたことない!」
「私が、今決めました」
「自分でルール作るな!」
シエラが——
少しだけ、笑った。
——笑った?
今、シエラが笑った?
可愛い。
すごく可愛い。
笑うと、目が細くなって、頬に小さなえくぼができる。
唇が、ほんのりと桃色に染まっている。
漆黒の髪が、白い頬にかかっている。
——いや、可愛いって思っちゃダメだ。
相手は十五歳だ。
俺は二十七歳だ。
十二歳差だ。
——異世界で犯罪者になる気か?
これは——
「ご主人様、顔が赤いです」
「うるさい!」
自己嫌悪で死にそうだ。
---
朝食を作ろうとしたら——
「私がやります」
シエラが、キッチンに立った。
俺のシャツをまだ着ている。
大きすぎて、太ももが見える。
裾から覗く、白い足。
すべすべした肌。
——目の毒だ。
「いや、俺がやるから——」
「ご主人様に、家事をさせるわけにはいきません」
「でも——」
「座っていてください」
押し切られた。
シエラが、料理を始める。
——意外と、手際がいい。
「料理、できるのか」
「昔、覚えました」
シエラが、淡々と答える。
でも——
少しだけ、声に温かみがある気がする。
「はい、どうぞ」
オムレツと、サラダと、スープ。
「すごい……美味そう」
「どうぞ、召し上がってください」
一口食べた。
「——美味い」
「本当ですか?」
シエラの目が、少し輝いた。
青い瞳が、キラキラしている。
——可愛い。
——いや、可愛いって思うな。
「ああ。すごく美味い」
「……ありがとうございます」
シエラが、少し嬉しそうな顔をした。
頬がほんのりと赤くなっている。
——可愛い。
——だから、可愛いって思うなって。
——良かった。
少しずつ、表情が戻ってきている。
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