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35話「あなたの側にずっと……」最終話



一度キスを止め、外の様子を確認する。

外はバケツを引っくり返したような土砂降りだった。


「急な天候の変化でしょうか?」


「いや、この時期にこのような激しい雨が降るとは思えない。

 これはノエル能力に起因すると考えた方がよいだろう」


レイヴン様が僕の肩越しに窓の外を覗き込む。

先ほどまでキスしていたのもあり、接近されると照れくさい。


「ノエルは長い間能力を奪われていた。

 まだ己の能力をコントロール出来ていないのだろう。

 ふとしたきっかけで、能力を使ってしまったということは十分に考えられる」


「ふとしたきっかけ……あっ!」


「心当たりがあるのか?」


「……」


きっかけがあるとすれば、「レイヴン様と離れたくない!」と強く思ったことくらいだ。

それはちょっと言いづらい。


「言いたくないなら無理強いはしない。

 この雨では領地に帰るのは無理だ。

 王都に戻ろう」


僕たちは辺境伯爵領に帰るのを諦め、王都に戻った。

幸い王都からそんなに距離が離れていなかったので、なんとか戻ることができた。




◇◇◇◇◇◇◇




それから数日、雨が降り続いている。


僕たちは、オルデンローア辺境伯爵家のタウンハウスで休んでいる。


休んでいるのは僕だけで、レイヴン様もお祖父様もジルベルトさんも忙しそうに仕事していた。


最初の数時間は土砂降りだったが、今は小康状態で小雨がぱらついている。

だけどいつ天候が変わるかわからないので、馬車を出せない。


これだけ雨が降ったら、街道はぬかるみだらけだ。

雨が上がっても、しばらくは動けないだろう。


僕の心が天候に影響を与えている……とレイヴン様は言っていた。


あれから何度も「止んで」と願ったが、雨が止む気配はない。

このままでは作物などに被害がでてしまう……いったいどうしたら……。


「ノエル!

 重大なことがわかった!」


扉が勢いよく開き、レイヴン様が飛び込んできた。

彼の後ろにお祖父様やジルベルトさんの姿もあった。


「レイヴン様、重大なこととは?」


レイヴン様の息が弾んでいて、急いでこの部屋に来たことが伺えた。


「落ち着いて聞いてくれ!

 伝書鳩を放って情報収集をしてわかったんだが……この雨は王国全土で降り注いでいる!」


レイヴン様が僕の肩を掴み、真っ直ぐに僕を見つめる。


「……え?」


「ノエルの能力は王国全土に及んでいる!

 つまり、そなたが乾季の間国を回り、雨を降らせなくても良くなったということだ!」


レイヴン様は瞳を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。 

僕も嬉しさと一緒に涙がこみ上げてきた。


「それでは、僕は……?」


「ずっと、辺境伯爵領にいられる!

 陛下の許可も頂いた!」


ドクンドクンと心臓が音を奏でる。

涙で視界が滲む。


「僕、乾季の間、旅に出なくても良いんですね……?

 レイヴン様のお側にいられるんですね?」


「ああ、そなたが嫌だと言っても絶対に離さない!!」


レイヴン様の手が僕の背に伸び、強く抱きしめられた。


「レイヴン様……!」


「ノエル……!」


レイヴン様の顔が近づいてくる……。

僕は口づけを期待して瞳を閉じた。


「あの……閣下、自分達もいるのですが……」


「まったく、ノエル殿の常駐を陛下に掛け合ったのはわしだというのに、手柄を独り占めしおって!」


お祖父様の咳払いと、ジルベルトさんのため息が聞こえ、僕はレイヴン様から距離を取った。

お、お二人がいることを完全に忘れていた……!


「いいところだったのに……」


レイヴン様がボソリと呟いた。

僕もレイヴン様とキスしたかった……けど、それはまた後で。


「あっ、見てください閣下、ノエル様!

 外に……!」


ジルベルトさんが窓の外を指差す。


いつの間にか雨が上がり、厚い雲の隙間から青空が覗いていた。

そして空には……。


「虹だ……!」


大きな虹が美しいアーチを作っていた。


「しかもくっきりとした虹が二つ重なっているな!」


「僕、二重の虹を初めて見ました……!」


「ああ、俺もだ!」


寄り添うようにかかる虹は……まるで僕とレイヴン様みたいだった。

なんて、恥ずかしくて言えない。


「どうやら、ノエル殿のレイヴンと離れたくないという強い思いが、雨を降らせていたようだな」


お祖父様の言葉に、僕の顔に熱が集まる。

今まで雨が止まなかったのは、僕のわがままのせい?


「癒しの雨の能力は、術者の心に強く影響を受ける。

 二人の思いが通じ合ったことで、ノエル殿の能力は飛躍的に向上し、雨の範囲を拡大した。

 それと同時に、レイヴンと離れたくないという思いが雨を降らせ続けた」


お祖父様の言葉に僕はハッとした。

僕の深層心理が雨を降らせていたとしたら……。


「王国全土に雨が降っていることが判明し、レイヴンと離れて暮らさなくても良いとわかり、ノエル殿の心が安寧を取り戻し、雨が止んだのだろう。

 今後、陛下がノエル殿に旅の提案をすることはないだろう。

 ノエル殿とレイヴンを離れ離れにしたら、どのような天変地異が起きるかわからぬからな」


お祖父様が目尻に皺を作り、柔らかく微笑んだ。


「ノエル殿の精神の安定の為には、レイヴンがいつも側にいて、ノエル殿を慈しむことが重要だからな。

 今後は、二人のイチャイチャを要求されるだろう」


イチャイチャって……!


「それは願ったり叶ったりです!

 お祖父様!」


レイヴン様が僕の腰に腕を回す。

人前なのでちょっと恥ずかしい。


「ノエル、帰ろう。

 辺境伯爵領へ」


「はい!」


リゼット様やクラウスさんやヨハンナさん、屋敷で働く人達や領主町の人達に早く会いたい!!





◇◇◇◇◇





それから数カ月後の三月下旬。

辺境伯爵領が一番過ごしやすいこの時期に、僕とレイヴン様の結婚式が執り行われた。


籍はずっと前に入っていた。

だけど結婚式はしていなかったから、レイヴン様と辺境伯爵領の人たちがこの機会にと準備してくれたんだ。


「ノエル、そなたを永遠に愛すると誓う」


「僕もレイヴン様を永遠に愛すると誓います」


鐘の音が鳴り響く教会で、大勢の人に見守られながら僕達は誓いの口づけを交わした。





――終わり――







最後まで読んで下さりありがとうございます。

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