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7.

先頭の男は…服装が1人だけ仕立てが良さげなのはリーナさんが言ってた商会の次男で…年は12才くらいか?

まだ学院に通っておらず探索者協会に所属しているならその線が強いだろう。

距離が縮まる。


「おいっ!そこの女が新しく探索者になった神官か?何故、治療院の仕事を断った!」


おいおい…いきなりだなぁ…完全に上から目線。

シホはいきなり怒鳴られて俺の後ろに隠れてしまった。

これは俺が対処だな。


「断るもなにも治療院の依頼は元から受けてないぞ?神官が必ず治療院の依頼を受けなきゃいけないとも聞いてないしな。」


「お前には聞いてないっ!後ろの女に聞いてるんだっ!」


「いや…彼女は俺のパートナーだ。それに俺にも関わってくる事だからな。彼女は俺と一緒に街外の依頼に出かける。治療院の依頼を受けることは無い。これが答えだ。」


「ふざけたことを…おい、お前達こいつに言うことを聞くようにわからせてやれっ!」


取り巻きの3人が俺とシホを取り囲みナイフを抜いた。

そしてリーダー格の男も剣を抜き切先を俺に向けてきた。街中…それもこんな大通り、しかも衛兵の詰め所も近いのに刃物を躊躇いなく抜いたよ…

あ、周りの何人かが詰め所のほうに走っていくな…

何とかなりそうだけど…うん、今後周りにも舐められた態度を取られないように、こいつはわからせよう。


「シホ、祈りを発動させて身を守って。俺はちょっとコイツをわからせておく…」


シホが祈りを発動したのを確認し、俺は魔力操作で高まった身体能力に任せて剣を使えなくなるように相手の肘辺りを目掛けて棍棒を振りおろす。

棍棒に最大まで循環させた魔力がいけなかったのか…棍棒が当たった肘の辺りが爆ぜた。


「ぎゃぁぁぁぁァァァッ!!」


うん、やっちまいました…自分でも予想外の威力でした…剣には右手首から先が残って地面に転がり、肘から先は爆散し周りには血肉が飛び散っている…完全にスプラッタ状態。

そこにガチャガチャと金属が擦れあう音が響く。


「双方、動くなっ!負傷者は治療を。刃物を持ったヤツは拘束しろっ!あとは周りに状況確認だっ!」


あ、衛兵さんか…骨を折るぐらいの感覚だったんだけど…この有り様だしなぁ。

ん?探索者協会からもリーナさんと…お偉いさんっぽい人が出てきて衛兵に話しかけた。


「衛兵長、すみません。今回は協会内トラブルの案件です。後ほど詰め所に報告させていただきますので、全員の身柄を一旦、協会に預けてもらえませんか?」


「む…そうか…報告はしっかりと頼むぞ?特に周りを囲んだ4人は街中で武器を抜いたらしいからな。」


「もちろんです。こちらでも確認が取れ次第すぐに伺います。」


話しをしたのはリーナさんの上司かな?

そして、リーナさんはこちらを向きにこやかに手招きする。

俺もシホもにこやかなリーナさんを見て顔を引き攣らせる。だって…口元は笑ってるのに目が座ってるんだもの、リーナさん。

すでに4人の姿は見えず、周りにいた探索者によってどこかへと運ばれたらしい。

上司らしい人は受付の前で別れ、リーナさんに何か伝えて奥のほうに行ってしまった。

俺達は、リーナさんの後を着いて階段を協会の3階までのぼっていく。廊下の突き当たりまで進み重厚な扉の前に。

リーナさんは扉をノックしながら


「協会長、リーナです。お2人をお連れしました。」


「…入室を許可する。」


部屋は重厚な執務机に書類の詰め込まれた本棚が壁際にならび中央にはテーブルと3人掛けと思われる長めのソファが向かい合わせに並んでいる。奥のソファには協会長らしき男性が座っていた。


「失礼します。…2人共まずは席に座って。」


リーナさんは席を俺達に勧め、協会長の後ろに控えた。

俺達はソファに座り、目の前の男性…ガッシリとした身体に精悍な顔つきに口髭、強者のオーラを放っている…を見た。


「まずは、初めましてだな。私は協会長のオーリック・アルトールだ。」


「初めまして…ユキトです…」

「シホです…初めまして…」


「うむ…まずは、君達の情報を勝手に流すことになった協会の不手際を謝罪しよう。申し訳なかった。」


どうやら新人の受付は先程の商会、ゴドリック商会の次男に神官の情報を流すことによって金銭を受け取っていたらしい。すでに解雇されたとの事だ。


「しかし…相手が恫喝してきたうえに武器まで抜いたとはいえ…やりすぎたなぁ…まぁ当人は以前から素行に問題があったから今行っている聞き取りにもよるが…一応、ユキトとシホの状況説明を聞いておこうか。」


俺は協会を出た時点から相手が一方的にシホを恫喝し、武器を抜いて周りを囲んだ時点で危険を感じ武器を叩き落とす感覚で攻撃したことを伝えた。


「うむ、周りの野次馬から確認した状況と齟齬はないな…リーナ、彼等は昨日登録して武器も買ったばかりで間違いないな?」


「はい。間違いありません。しかも魔纒まてんは武器を購入した昨日に初めて知ったようです。」


「昨日の今日で魔纒からのアーツの纒爆てんばくか…恐ろしい才能だな。ユキト、意識してた訳ではないのだよな?」


「は、はい。その…魔纒とやらも纒爆ってアーツ?も初めて聞きましたたし、昨日聞いたのも武器…棍棒に魔力を循環させれば鋼並みに硬くなるって事だけです…」


「なら今回の事は…相手側が武器を抜き、命の危険を回避するために相手の武力を無効化しようとした正当な防衛って事を主張だな。リーナ、彼等を一旦休憩させて、詰め所に案内し、彼等の正当性を説明してあげてくれ。」


「わかりました。ユキトくん、シホちゃん。お茶でも用意するわ。個室に移りましょう。」


協会長に会釈し、席を立ちリーナさんについて探索者の説明を受けた個室へと移動する。

リーナさんにお茶を差し出され、溜息をつきつつ…


「ユキトくん…こちらの不手際でトラブルに巻き込んだのは申し訳なかったけど…ちょっとやり過ぎたわねぇ…意識してなかったとはいえ街中でアーツを使ってしまった事は、もしかしたら罰則があるかもしれないわ。ちゃんと私からは衛兵長に説明して出来るだけ罰則が無いように、お願いはするけど…」


「リーナさん…ユキトは私が今後、絡まれないように力を見せただけなんですっ!」


「シホちゃん、わかってるわ。探索者は舐められたらずっと後を引くからね。ただ、無意識とはいえアーツを使ったのが問題なのよ。町中のアーツの使用は武器を抜いた事と同義になってしまうの。こればかりは衛兵長の匙加減ね…」


沈黙が落ちる。

どうやら今詰め所では4人の聴き取りが行われているみたいだ。俺達はその後に訊かれるらしい。

リーナさんは一旦席を外し宿舎のほうに説明しに行ってくれた。



お茶を啜りつつ視線を天井に向ける。

シホも疲れた顔をしている。

詰め所に向かう時に声を掛けてくれるらしい…せっかく初依頼を無事に終わらせたというのに、とんだケチがついたもんだ。


おもいっきり大きな溜息が漏れる。








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