6.
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さらに街道を歩き少し道から離れるが左右が森に囲まれ始めた。
ここらあたりから貰った資料によると薬草が採取できるらしい。
採取対象は主に体力回復と補血作用のあるヨモギ。他には解毒作用のあるレンゲ、鎮痛消炎のオトギリとミツバってところだ。名前や薬効はまんま日本と同じなんだな魔力が作用して効果や大きさは桁違いだけど…
「シホ、そろそろ薬草の採取できるポイントだ。森の入り口付近、陽の当たる木の根本付近に生えてるっぽい。森のほうに向かおうか。」
「はぁい。…あそこらへんのモサモサしたあたり?頑張って袋いっぱいにしようね!」
シホと一緒にモサモサしてる場所に近づく、葉の形、裏返して葉脈が白い事を見てヨモギと確認。採取対象サイズの10㎝程の葉っぱを茎に近い場所から毟り取っていく。大量に集まりそうだが、資料によると低品質ポーションの材料として大量に使うらしい。常に品不足との事だ。
そのまま順調に魔物が出ることもなく、ヨモギも見渡す限り大量、お昼を迎える。
「シホ、そろそろお昼だ。ご飯にしよ?一応周りを警戒しながらだから気は抜けないけど…」
「んっ…ここのヨモギ取り終わるまで待って。もう少しだから…」
「お待たせ。守りの祈りを少し大きめのドーム状にかけておくね。この方が安心でしょ?」
お昼のサンドイッチを渡しながら、
「あぁ…シホが中心になるけど安全地帯も作れるのか!すごいな。そうだ、お昼食べ終わったら少し先まで行ってみよう。ここらへんのヨモギはあらかた取り終わったし。」
「うん、わかった。でもヨモギ以外の薬草って全く見ないね?もっと森の奥のほうに生えてるのかな?」
「ん、と…資料によるとレンゲとオトギリは少し森に入って開けたところ、ミツバは河原沿いに群生してるっぽいな。今日は初日だし無理せずヨモギだけ集めよう。あと、魔物に遭遇してから戦ってみて問題なければ森に入る事も今後の為に検討だね。」
「そか、全く見なかったから魔物の存在忘れてた…」
「仕方ないよ。実際見てないから俺自身も実感湧かないし…でも、できれば早めに戦っておきたいな。今後の金策にもなるし。」
お昼も食べ終え、新たな採取場所に行く為に森沿いに移動を始める。
採取場所がもう少しといったところで、前方にある茂みから不意にガサガサッと音が……俺はシホの前に出て棍棒を構える…
茂みからはやはり魔物、中型犬ほどの茶色い毛玉に鈍色の突起…ツノウサギが顔を覗かせた。
前歯を剥き出しにしてコチラを睨みつける赤い瞳。うん、可愛さのカケラも無いな。
ジリジリとコチラに近づいて、3m程の距離で動きを止める…俺は近づいてくる間に魔力操作で棍棒に魔力を循環させる。シホは後ろで守りを発動させたみたいだ。
ツノウサギは後ろ脚に力を溜め、コチラに向かって一気に力を解放。ツノを突き刺さんと跳躍してきた。
俺は棍棒をカウンター気味に下から掬いあげツノウサギの胸のあたりにヒットさせる。
たぶん…肋骨か胸骨あたりだろう骨を砕く鈍い感触が手に伝わる。ツノウサギは空中で弧を描き地面に落下し少し痙攣したあと動かなくなった。
「ユキト…?今のがツノウサギ?」
「うん、特徴も聞いてた通りだったし、そうだと思う。一旦タブレットBOXにしまって確認してみる。」
俺は残心を解き倒れたツノウサギに近寄りタブレットBOXを触れさせる。
すると、ツノウサギは光の粒子となりタブレットBOXに吸い込まれていく。画面からインベントリを確認する。
「ツノウサギだね。えっと…インベントリのツノウサギのアイコンに!マークがついてるな…なんだろ?」
!マークをタップすると血抜き、内臓廃棄、皮剥ぎ、解体の項目が現れた。
「シホ…タブレットBOX…インベントリに入れたら血抜きから解体までできるみたいだ…すっごい助かるし嬉しいんだけど存在がバレたら本当にヤバい!!」
「うわぁ…便利だけどまずいねそれ…とりあえず血抜きだけしとく?」
「血抜きと…内臓廃棄までかなぁ…ここまでなら村で手伝って覚えたって言えるけど、皮剥ぎや解体は新人がいきなりやって持っていくと綺麗にできすぎて疑われそうだし…」
「そだね…ツノウサギはそれで良しとして…とりあえず薬草採取の続きしよ?」
ツノウサギは内臓廃棄までにとどめ、タブレットBOXをしまう。うん、切り替えて袋いっぱいに薬草採取だ。
その後は魔物には遭遇すること無く、移動した採取場所で袋いっぱいに薬草…ヨモギを集めて帰路に着く。
森に囲まれた街道を抜けたところでツノウサギをタブレットBOXから取り出す。
血抜きと内臓が無いおかげで重くは無いのだが…入れる袋が無い…仕方ない、耳の付け根を掴み背中に担ぐ。薬草の袋はシホに抱えてもらった。
空も赤く染まり始めた頃、門に到着。探索者証の提示ですんなりと通過。目の前の協会へと歩を進める。
リーナさんを受付に見つけたので…今日の採取報告をしに行こう。
「リーナさん!ただいま!無事採取と一匹だけですがツノウサギも狩れました!」
「あら、おかえりなさい。無事に戻ってこれたみたいで良かったわ。薬草なんかはそっちのカウンターの解体場で査定してくれるから…持って行ってね。」
「「はい。」」
俺達は薬草とツノウサギを抱えたまま右奥にある解体場に向かう。
「お?見ない顔だな。新人か?俺は解体責任者のゴルツだ。」
「はい。昨日登録してお世話になってます。俺はユキト、彼女がシホです。ゴルツさん、よろしくお願いします。」
「シホです。よろしくお願いします。」
「おぅ、よろしくな。その袋とツノウサギの査定でいいか?」
「はい。それでお願いします。」
カウンターの上に俺とシホの薬草2袋とツノウサギを乗せる。
ゴルツさんは袋の中身を脇にあった籠に移しツノウサギと共に調べ始める。
「薬草は全てヨモギだな。葉の大きさも鮮度も申し分無い。ツノウサギは…血と内臓は抜いてあるのか。丁寧に処理してあるな。これならヨモギが麻袋2つで銀貨1枚と大銅貨4枚、ツノウサギが角、魔核、皮、肉で銀貨1枚と大銅貨5枚だが…全て買い取りでいいか?」
「はい、買い取りでお願いします。」
「じゃこれが査定証だ。受付に持って行けばその金額を受け取れるからな。」
査定証を受け取り、リーナさんのところへ戻る。
「リーナさん、査定証貰ってきました。お願いします。」
「はい、…初日から薬草も2袋いっぱいにツノウサギの最低限の処理まで…薬草もツノウサギも高評価査定じゃない。凄いわね!じゃあ購買部からの天引きしたお金を準備するわね…」
「ありがとうございます。あっと…そうだリーナさん。朝の治療院のことって大丈夫でした?」
「……はい、大銅貨2枚を天引きして銀貨2枚と大銅貨7枚ね。治療院のことなんだけど…ごめんなさい…少しややこしい事になりそうなの。治療院責任者の司祭様は普通に受け入れて問題無いって言ってくれたんだけど…補助に付いてる一部の人がね…神官で小癒が使えるなら治療院で働くのが義務だって騒いでいるの…」
「え…と…治療院の補助ってあくまでも依頼だから、コチラで選べるんですよね?」
「えぇ、依頼を受ける、受けないはシホちゃんが決めることだから問題ないわ。ただその騒いでる一部が協会の卸し先の大手商会の次男坊とその取り巻きなのよ。ワガママで自分本意な性格だから直接的にシホちゃんに接触する可能性があるの…騒いでるだけだから協会も注意勧告ぐらいしか手が打てないし…」
「うわぁ…ユキト、これ思いっきり面倒なヤツだよぉ」
「やっかいだな…リーナさん、接触してきて理不尽な形になったら…それなりの対処をしていいんですかね?」
「できれば、穏便に済ませて欲しいけど…状況次第ね。本当に、ごめんなさい。」
「いえ…リーナさんのせいじゃないですし、新人の受付?が情報を勝手に流したのが原因ですから…とりあえず気をつけておきます。」
申し訳なさそうにしているリーナさんに別れを告げ、宿舎に帰ろうと協会を出る。
協会を出て宿舎のほうを見ると少し周りより身綺麗な俺より少し年上らしい男と3人の取り巻きらしき同年代の男達が見えた。
あ、これ完全にトラブルに巻き込まれるパターンだ…
けど、逃げてもややこしい事になるだろうなぁ…
シホを見ると顔を引き攣らせて苦笑い。
うん、さっさと解決しちゃおう。
シホにすぐ守りの祈りを使えるように小声で伝え、俺もいざという時のために魔力を循環し始めてる。
さぁ、どうなるか…俺達は宿舎に向かって歩き始めた。
作中に出てくる薬草のヨモギ、レンゲ、オトギリ、ミツバの薬効は現実に基づいてるものですが魔力が存在する世界となりますのでファンタジー成分も加えてあります。
多少の齟齬があったりもしますが「そんな世界観なんだね。」で受け入れてくれると助かります。