50.
数ある小説の中から閲覧していただき、ありがとうございます。
時間はかかりましたが50話目となります。
降りた11層も石畳の続く通路の広さも変わらない迷宮型ダンジョン。
とりあえずすでに17時過ぎ、今日は時間的には魔物の確認だけして帰る予定だ。
「ユキト、索敵はどう?ここまでの階層と違ってかなり探索者は減っていると思うけど。」
「そうだね、リンネ…索敵範囲の黄色い点はかなり減っているよ。こちらに向かう点も多いな…時間が時間だから帰る感じかな?」
「うん、日帰り組だと思う。少し本道から外れようか。ボク達も一回接敵したら帰る予定だしね。近くに魔物はいるかな?」
「えっ…と。こっちなら黄色い点も近くに無くて近いかな?数は3、ゆっくり離れて行く感じだから追いかけて討伐だな。」
俺達は11層から12層まで最短距離で繋がる本道を避け脇道に入り赤点を追う。
薄明かりの中、できるだけ音をたてずに通路を進む…次の角を曲がって10mところに赤点の反応。
ハンドサインで停止の合図を送り角から赤点の魔物を伺う。
うん、茶色に緑を混ぜたような皮膚の色に腰蓑、棍棒を片手に持っており額には小さな突起が2つ…身長は低く130cm程だが手足にはそれなりの筋肉、少し下腹が出ているか?予想していたゴブリンと言うより小鬼って感じだ。
「ユキト、あれがゴブリン。見ての通り人型なんだけど探索者の中には人型を倒すのに忌避感を持つ人も多いんだ。何故だかわからないけど…特に女性に。」
「女性が優先的に襲われるとか?」
「優先的ってのはないかな?普通に男女問わず襲ってくるし。」
「と、なると…潜在的に人型だから人と混同してしまう?」
「それはあるかもしれないけど…女性比率が高いってのは不思議だよねぇ…」
「とりあえず…シホ、リュカは大丈夫そう?」
「う〜ん…ユキト。なんか据えた臭いがする…これ苦手かも。」
「ユキト兄様。リュカも苦手です…」
「臭い?俺は感じ無いけどな…リンネとノーレムは?」
「ボクは慣れたねぇ」
「私も基本近づかないので、この距離なら平気です。」
ん?女性だけに忌避感…苦手と感じる臭いを発しているって事か。
「なるほど…人型と臭いに対する忌避感で女性が躓く魔物になってるんだな。シホこの臭いは守りで遮断できるか?」
「大丈夫だよぉ。じゃあ女性陣には守りをかけておくね。」
どうやら忌避感の正体は臭いと人型。後から聞いたがダンジョンの魔物は生殖能力は全く無く、薄い本のように女性に襲いかかる展開は残念ながら無いとの事だ。殺すか殺されるか…だけがダンジョンと言う事だな。
しかもダンジョンの魔物は人型、それ以外もダンジョンだけしか存在せずにダンジョンから出ると一定の時間で魔力が霧散し魔核にもならず消滅する。ダンジョン外に存在する魔物は基本、動物、植物、昆虫の体内に魔力が蓄積され魔核が出来て魔物化したものとなる。魔物同士での繁殖も可能だ。ちなみに人も魔物化する…魔人と呼ばれる存在だ。人には魔力に対する抵抗力があるのでほとんど無いが魔力の濃い場所で魔力を使わず長期間過ごした場合だ。
さて、シホの守りで臭い対策も大丈夫…あとは人型への忌避感だけだが…
「シホ、リュカ。1人1匹を目標にまずはクロスボウで左右のゴブリンに先制。俺は真ん中に接近して仕留める。」
「りょーかい!リュカちゃん右をよろしく…いくよっ!」
シホとリュカが角から出て左右のゴブリンへとボルトを射出…2人ともクロスボウを使いこなし見事にゴブリンの胴体へと命中させる。
俺はいつものようにゴブリンの前に飛び出して纒突でゴブリンの頭を貫く。
うん、見事に奇襲が決まってゴブリンが靄へと還る。シホとリュカの放ったボルトもゴブリンの急所に当たったのだろう、こちらも靄になり魔核へと変化していた。魔核以外はドロップ無し、まぁドロップ率はそれほど高く無いみたいだからこんなもんだろう。
「シホ、リュカ。気分はどうだ?」
「人型だけど大丈夫かな?最後は靄になっちゃうし…」
「リュカも平気です。最初の臭いは苦手でしたけど…シホ姉様の守りで臭いも無くなりましたから。」
2人とも顔色も大丈夫だし平気かな?俺?俺はすでに人と対峙してるし覚悟も決まってるから忌避感も動揺も無い。
「よし、それなら帰ろうか。そろそろいい時間だ。」
「よし、戻ろう!いやぁ奇襲が決まったとはいえ瞬殺だったねぇ…顔色も大丈夫そうだし動揺もしてないから明日からはもっと先に行けるね。」
「リンネ、日帰りだとどのくらいまで潜れる?」
「う〜ん…普通なら行けて16層かなぁ。探索者の数も減っていくから接敵も増えるしね。ただ…ユキトの索敵を使ったら20層のボスも行ける可能性も…」
「地図を買って本道を進むなら…行けなくは無い?」
「だね。ノーレム、シホ、リュカの先制で数を減らして…ボクとユキトが近接で斬り伏せる。このスタイルで20層までは問題無くいけると思うんだよね。」
「なら護衛依頼次第だけど…王都滞在中に20層を目標にしようか。明日はまず13層からの魔物の数が増える事への対応と5人での連携の確認かな?」
「うん、それでいいと思うよ。さ、0層への転移陣に着いたし帰ろうか。魔核の換金は明日の朝、護衛依頼の確認がてらにしよう。」
転移陣で0層へと戻りダンジョンの外へ出ると空は茜色に染まっていた。
初ダンジョンは無事に何事も無く終わった。
探索者が多すぎて接敵しないとか、思った以上に魔物が弱く感じたのはクレモアダンジョンが初心者用のEランクダンジョンだったからだろう。
まずは毎日の護衛依頼確認とダンジョン探索でギリギリまで王都を満喫しよう…あ、お土産も忘れないようにしないと。
落ちて行く夕日を見ながら宿への帰路へつく。
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