35.
数ある小説の中から閲覧していただき、ありがとうございます。
夜中にも投稿してます。これは2投稿目です。
西の街道は森もなく平原が広がっている。
ここにはブラックホーンブルが群れをつくって徘徊している。ランクE以上の探索者達が受けれる常設依頼にブラックホーンブルの納品がある。
ブラックホーンブル…牛なんだが見た目は水牛?大きさは地球の牛から見たらかなり小さく子牛ぐらいの大きさで成牛だ。重さは300キロあるかないか…一応、俺達の持っている6頭載の荷車でも補強すれば運べる。ブラックホーンブルは内臓も過食部位が多いので血抜きだけして解体場に持ち込むのが常識になっている。
特にブラックホーンブル自体は草食で温厚。特に害のある魔物ではないが狩られる理由は主に肉である。
温厚ではあるが群れを刺激し、怒らせると集団暴走に轢かれる事となる。なので狩りは群れからブラックホーンブルが1頭だけ逸れるのを根気強く待ち、仕留めることとなる。たまに間違って群れを刺激し、群れの暴走に巻き込まれる間抜けもいるとか、いないとか…
正直、協会の常設依頼は報酬に見合わない時間のかかる依頼だ。
なので、商人協会が専属の探索者を雇って定期的に狩っているのが現状となる。
そんな説明文が魔物大全にあったなぁ…なんて事を考えながら遠くに見えるブラックホーンブルの群れを眺める。
「う〜ん…天気は曇りで微妙だけど長閑だねぇ…ユキト、野営場所までは後2時間くらい?」
「それくらいかな。馬の世話と警備、警戒はランクCチームのキリュウさん達がやってくれるらしいから…俺達はテントの組み立てと火おこしだね。」
「荷物少なめだから…携帯食が晩ご飯かぁ。《夜食はサンドイッチにしようか…オニギリにするか》ボソッ」
「まぁスープは作るよ。干し肉と乾燥野菜にウサギブイヨンは買ってきたからね。」
シホと野営場所についてからの予定を話していると。
「おぅ、お前等。俺にもそのスープ寄越せよ?同じ試験を受ける仲間だろ?」
「え?無理っ!仲間でもないから、あげるわけないし。欲しいなら対価が必要だよ、おじさん。スープ一杯にいくらだすの?」
「なっ!おじさんじゃねぇしっ!そこは助け合いだろっ!金取る気かっ!!」
「…助け合い?私は助けてもらってないし、助けも必要ないかな。おじさんの行動はただの集り。傲慢で無能を晒してるだけの…馬鹿?」
「……このガキがぁ」
男が腰を浮かせた時点で、前の御者席からキリュウさんの低く怒気の籠った声が放たれる。
「…おい。いい加減にしろ。そっちの嬢ちゃんが正しい。チームを組んでないなら、たとえ同じ協会の探索者だろうと、受験者だろうと…馬車の同乗者ってだけの関係にすぎん。頼むなら依頼と言う形を取るのが筋だ。」
「くっ…ならチームを組めば…」
「チームも組まないよ?組む必要性を微塵も感じないし。足手まといはいらない。それに、すでにこっちは5人チームだし、おじさん達はお呼びでない?」
おぉ…シホ煽るなぁ。確かにさっきから不躾な視線をリンネとノーレムに向けていたから…お冠なんだろうな。
あ、索敵の表示がこの人だけ赤になった。
「おい。嬢ちゃんも…あんまり煽るな。だがすでに5人チームか…ちゃんと顔合わせの時のヒントの正解を出していたみたいだな。」
「はぁい、ごめんなさい。…わざわざ顔合わせしたんだからあそこで仲間…チームを探すの普通でしょ?あれだけヒント貰って気付かないほうがおかしいよ。だから、気付かなかったこの人は…足手まといだね。」
おぅ…燃料再投下。
「と、言う事だ。チームでなければ不干渉。無理矢理干渉するような行動にでるなら…俺達護衛が干渉されたほうを守るからな。」
男は顔を真っ赤にして何か言いたそうにしていたが…押し黙ったまま顔を逸らした。
リンネ、そこ親指を立てなくていいからっ!リュカもキラキラした目でシホを見つめないのっ!シホっ、ドヤってる場合じゃないぞっ!あ、ノーレムさんは呆れている…えぇ俺も同じ気持ちですとも。
これは…トラブル回避の為に出来るだけテントはランクCチームの近くにたてたほうがいいな。
馬車はそのまま重苦しい沈黙の中、順調に進む。
野営場所には16時過ぎに到着。一緒に野営場所に着いた他の馬車はそれぞれ散らばっていく。今日は曇り空なので急いでテントを張らないと暗くなってしまう。
テントは2人用。ええ…まだ俺達3人身体が小さいから余裕あるんですよ。俺1人でも組み立てられる。
シホとリュカは石を組み直して竈門を…竈門組み直したら水を取りに行くって言ってたな。リンネとノーレムはウチらのテントの横に自分達のテントの組み立て。
その近くには馬車が停めてあり、キリュウさん達がテントを張っている、…おぉ6人用か?デカイな。
ん?馬車からかなり離れて男3人は固まってるな。けど…1人用のテントが1つ?
残りの2人は…外套にくるまるだけか?雨季で明け方も寒いのに…雨も降ったら更に冷え込むのに大丈夫か?
まぁ自己責任だし俺には関係ないか。…良し、テントも張り終わったし、スープ作るか。
「ユキトだったか?今大丈夫だろうか。」
竈門の方に移動しようとすると、キリュウさんが話しかけてきた。
「はい、大丈夫です。どうしました?」
「手間賃とスープの具材を多めに提供するから、俺達5人の分も作ってくれないか?それと竈門も食事後に使わせてもらいたい。護衛するのに少しでも手間を減らしたいんだ。後…ウチのチームは料理が壊滅的でな…昼見てたんだが…ユキトは料理が得意なほうなんだろ?」
「あぁ…壊滅的なのは辛いですね。手間はそれほど変わらないので構いませんよ。お口に俺の料理が合えばいいんですが。あ、あと手間賃までは悪いです。」
「助かる。あと遠慮せず手間賃も受け取れ。チーム以外に頼まれ事を受けるのは依頼と一緒だ。お前のチームの嬢ちゃんも言っていただろう?対価って。特に物が限られている場所、今回みたいな野営場所とかなら…それなりの金額を提示したり、自分達に余裕がなかったり、折り合いがつかなければ断わってもおかしくないんだぞ?」
「そう言うものなんですね。勉強になります。」
「で、だ。こちらからはツノウサギの肉と乾燥野菜を提供させてもらう。手間賃は大銅貨5枚だな。手間賃は人数×大銅貨が相場だ。材料提供が無い場合、手間賃に購入費用の3倍の金額を追加ってところだな。受けてくれるか?」
「おぉ…ツノウサギの肉!もう、スープってよりポトフに近いですよっ!その提供で喜んで作らせてもらいます。」
「頼むな。…ユキト達はしっかりテントなんかも準備して雨季の対策は万全だな。それに比べて…あの3人は。雨季の野営経験は無さそうだし、周りに聞かなかったのか?」
「あれは酷いですよね。俺達はリンネとノーレムにアドバイスもらいましたから。外套だけとか、雨や明け方は気温が下がりますし…体調を一気に崩しそうです。」
「あぁ。1人はテントがあるから…まだ保つかな…2人は試験すら受けれないかもな…」
そう言ってキリュウさんは馬車のほうの警備に戻っていく。
3人の男達は火もおこさず、携帯食料だろうか?モソモソと食べている。しかも馬車からかなり遠い。明らかに護衛してもらう範囲から離れてすぎている。確執あるのはわかるが…如何なものか…
竈門を組み立て終わって、まったりしているシホとリュカに追加で水を持ってきてもらうように頼む。
「シホ、リュカ。すまないが水を追加で頼むよ。依頼でキリュウさん達のチーム5人のスープも頼まれたんだ。材料提供にツノウサギと乾燥野菜。そして手間賃で大銅貨5枚を報酬に貰っている。」
「おぉ!キリュウさん、ツノウサギとは太っ腹!手間賃まで!やっぱり高ランクな優良探索者は交渉をわかってるねぇ。アイツとは雲泥の差!」
「だね。野営場所なんかで頼まれる時の手間賃や材料費の相場も教えて貰った。断ることも視野に入れて交渉することもね。キリュウさんは、物腰も柔らかいし頼りになる先輩たよ。」
「なら、こっちも情報に対して奮発しなきゃだね。乾飯を今日のスープに追加して…後、お茶もサービス!」
俺はツノウサギを一口大にカットし、串に刺して塩を振る。焚き火の強火で表面をこんがり焼き上げていく。スープに入れるから中まで火が通ってるかは気にしない。
沸いたお湯にツノウサギとウサギブイヨンを放り込む。灰汁を取り除き、塩を入れ、胡椒も少ないが奮発。味を整えたら乾燥野菜と乾飯を加えて…火を弱め、野菜と乾飯がスープを吸い柔らかくなるまで放置。良し具沢山な洋風雑炊の完成!
ま、わかりやすいようにスープで徹すけども。
「お待たせ。スープができたよ、食事にしよう。…リュカ、キリュウさんに食事が出来たって伝えてきてもらえるかい?」
「はい、ユキト兄様。行ってきます。」
リュカはキリュウさんのいる馬車のほうへトテトテと走っていく。
食事は俺達5人とキリュウさんのチームのノルドさんとガリアムさん。警備を交代しつつ食事に来るみたい。
「あぁ…まともな食事だぁ…」
「ウチらじゃスープも不味いっスからね…」
どれだけ料理が下手なんだろう…いや、下手ってより基本を知らない?
かき込むようにスープを食べて…
「いやぁ野営で久しぶりに美味いもの食えた。ありがとうな。」
「いえ、お口にあったのなら幸いです。」
ノルドさんとガリアムさんは交代する為に戻っていく。最初の警備はこの2人みたいだ。
交代でやってきた残りのメンバーは、キリュウさんにシリュウさん、ボンズさん。シリュウさんはキリュウさんの弟らしい。
「シリュウ、ボンズは飯食ったら仮眠しておけ。俺も適当なタイミングで仮眠に入るから。」
シリュウさんとボンズさんは頬張りながら頷いている。
食べ終わったシホ、リュカ、リンネ、ノーレムはすでにテントの中だ。ちなみに稲荷弁当をテントに1つずつ渡してある。
「いやぁ、美味いな。俺も含めてウチのメンバーは料理がからっきしでな。うん、このマイスが入っているのも良い、腹持ちも良さそうだ。なぁ…ユキト。ウチのチームの料理番としてメンバーにならないか?高待遇で迎えるぞ?」
「え"っ?う、嬉しいお誘いですが…ご遠慮できたら…」
「あははっ!冗談だよ、冗談。ユキトを引き抜いたら嬢ちゃん達に刺されそうだしなっ!」
「ビックリさせないでくださいよ。冗談でも移籍するって言ったら…確実にキリュウさんより先に俺が刺されます。もちろんキリュウさんも俺の後に。」
「お、おぅ…嬢ちゃん達、怖ぇな。」
「あ、話しは変わりますが夜間の護衛ってこの規模だと2人なんですか?」
「あぁ、ここは野営場所で他の馬車や行商人、それに伴う護衛もいる。だから本来なら1人でもいいんだが…1人…さっきの馬車での態度をみて、2人に増やした。下手なことはしないと思うが念のためな。だけど、アイツら3人…護衛してもらう気あるのかねぇ…馬車から離れ過ぎないのが普通なんだが。それも知らないのか?」
「やっぱりあれ離れ過ぎなんですね。まぁ…馬車でのことは逆恨みされてそうですよねぇ…シホも無駄に煽ってたし。」
「まぁ、確かに煽り過ぎだと思ったが、嬢ちゃんの言い分は正当な主張だ。あそこで折れたら舐められるしな。あとはリーダーであるお前が守ってやれ。」
「はい。そうします。あ、ここにあるお茶は皆さんでどうぞ。俺はテントに戻りますね。」
「ありがたくいただくよ。慣れない馬車移動で疲れてるだろ?ゆっくり休めよ。」
テントに戻るとリュカはすでに夢の中。隣のテントも静かだし、リンネさんとノーレムさんも寝てるのかもな。
「ユキト、やっと戻って来た…トイレは平気?守りかけた後に外にでたら…テントに戻って来れなくなるけど大丈夫?」
「あぁ、待たせてごめん。守りを頼むよ。…ちょっとキリュウさんとの話が盛り上がってしまったんだ。」
シホは俺が戻ってきて気が抜けたのか瞼が落ちていく。
「大丈夫…けど眠いから…守りかける…よ…おやすみ…」
「おやすみ。待っててくれてありがとうな。」
シホは守りを掛けながら眠りに落ち、ポテンと横に倒れる。
シホの姿勢を直して毛布をかけてやる。
眠いの我慢して待っていてくれたんだな。申し訳ない。
その夜はキリュウさんたちの睨みもあってか何事もなく夜が明ける。
外は小雨。冷え込む朝だった。
お読みいただきありがとうございました。
読んでみて、面白かったと思ってくれて評価してくださると嬉しいです。
不定期になるとは思いますができる限り書き続けていきますので、よろしくお願いします。




