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暗転した視界が戻ってきた…志穂を抱きとめたまま木に寄りかかっているようだ。
時刻は昼頃だろうか太陽?がほぼ真上にある。
周りを見渡せば自分のいる場所は森の外れだろうか?
近くには街道らしき土が剥き出しになった道があり、遠く左手には壁らしきものが薄らと見える。
抱きとめていた志穂が身じろぎして周りを見渡してから見上げてきた。
「志穂?大丈夫か?」
「幸人…うん、大丈夫。ここはもう遊戯盤の領域なのかな?」
「そうみたいだ。さっきの神って奴が夢で無ければ周りの景色からして間違い無いと思う。…まずは足下のバッグやスキル、これからどう動いていくか…お互いに確認してから左手にある壁に向かおう。」
「そうだね…何もかもがいきなり過ぎて不安しかないよ…」
「俺も正直不安だ。だけど志穂の事は何があっても守る…とにかく確認して動こう。」
まず自分達の格好を確認してみるとお互いが白いシャツに濃紺のフードのついたポンチョらしき上着、志穂はベージュのスカート、俺は黒のズボンにくるぶしが隠れる程の革靴。着ている衣類は麻っぽい素材で丈夫そうだ。
足下のバッグを手に取って中を確認していく…中身は
・タオルらしき布と下着の替えがそれぞれ2枚づつ
・黒っぽいパン2つに水筒らしき皮袋
・銅貨5枚、大銅貨3枚、銀貨2枚の入った小さな皮袋
が入っており志穂のほうは同じ持ち物プラス30センチ程の短仗がついていた。
「ねぇ…幸人。タブレットでスキルは確認した?私は変わってなかったけど守護者は確か遊戯盤に降りて来ないとスキルはわからないんだよね?」
「そういや…そんなこと言ってたな。確認してみる。」
タブレットを意識してみると左手のひらにタブレットが現れた。
ユキト
男性 10才
状態 健康
職業 守護者
スキル 棒術 魔力操作 タブレットBOX【lv.1】
加護 番からの寵愛
*タップする事で項目ごとに隠蔽の有無を決められ
る。隠蔽する事で鑑定されなくなる
「なんか恥ずかしい加護と…チートっぽいのが…」
「幸人、恥ずかしいから加護の項目は隠蔽決定!…それと魔法の表記が無いのに魔力操作?タブレットBOXはアイテムBOXかな?」
「たぶん…タップで隠蔽の有無と説明が見れるな。魔力操作は、体内の魔力を自在に操って身体能力をあげたり武器に無属性の魔力を纏わせたりできるみたいだ。タブレットBOXの内容は…触れている物をタブレットに保管5枠に同じ物を5個づつ生物は不可、使えば使うほどレベルが上がって枠も個数も増えるみたいだ。これも隠蔽だな。バレたら利用される未来が見える…そうだ、志穂はスキルに小癒や祈りがあったよな?魔力って感じるか?」
「うん。ここに来てから胸の奥に温かい…なんかホワッとしたのを感じてる。あと詠唱?が頭の中に浮かんでいるかな。」
「胸の奥………あっこれか!確かに今まで感じたことない感覚だ。意識したら動かせそうだな。あとは自分たちの設定の確認だな。まず、苗字は使わずにユキト、シホで行こう。さすがに神にこの世界に降ろされたなんて言えないし。」
「そうだね。まず私たちは幼馴染で婚約者?東にある名も無き村から職探し…探索者だっけ?そして、学園に行くための資金稼ぎにやって来たってところかな?」
「うん。それで問題無いと思う。まずはあの壁に向かおう。たぶんあれは外壁で道なりに行けば門もあるだろうし。身分証とか無いから門を通るのに色々不安はあるけど10才って見た目でそれほど警戒はされないと思う。」
俺とシホはお互いに立ち上がって左手にある壁に向かって街道を歩き始める。
街道に出ると前からゆっくりと荷馬車がやってくる…近づいてくる馬車を端に移動し避けると御者のおじさんと目が合い話しかけてきた。
「やぁ、こんにちは。いい天気だ。君たちのその年齢ぐらいでアルトの町に向かうって事は職探しかい?探索者かな?頑張れよっ!」
おじさんの髪色は明るい茶色。目は翡翠色。顔はヨーロッパ系。やはり日本ではないのだな…と痛感し返事だけ返しておいた。
町はアルトって言うのか…まずは町にはいる事だな。
不安や懸念は沢山あるが考えても仕方ない。
さて、目の前に門と行列が見えてきた。
やはり検問的なものがあるのだろう。
心を落ちつけシホと頷きあって行列に並ぶ。
何事もなく町に入れます様に…