7.雷通って電力会社じゃないの?
入社して少し経った頃、営業の先輩で黒田さんという人に同行して仕事をするようになった。
黒田さんから「今日は雷通に行くから」と言われて「はぁ」と生返事で返すと「もしかして雷通、知らないの?」と聞き返されたが、私は雷通を全く知らずに言葉のイメージから「電線を通す会社なのか?」もしくは「電力会社なのかな?」と考えていた。
「すごく有名だよ!名前くらいは聞いたことがあるでしょ」と言われても、全く身に覚えが無かった。
「哲也は本当に何も知らないな~」と呆れられつつ、私は黒田さんに連れられるままに同行した。
黒田さんは、高そうなジャケットをいつも着ている。
ちょい悪オヤジなオーラをまとって、営業車はボルボでカッコイイ。
自分の車を営業で使う代わりに整備やガソリン代を会社が支給していた。
助手席に乗り込み、佃大橋を渡り、雷通の関連会社が集まった地域に向かった。
雷通が、まだセイントルーカスレジデンスに入っていた頃、私は初めてテレビで見るようなオフィスに足を踏み入れた。
パーテーションで分かれた整然としたオフィスを目の当たりにした時、あまりの広さに驚きと緊張ばかりが増し、場違いなところに来てしまったと居心地の悪さを感じた。
雷通は誰もが知る大手広告代理店だった。
電線を通す会社などと思っていた自分が恥ずかしく、そして無知すぎた。
営業の黒田さんは、雷通の子会社「雷通テック」に出向社員としてデスクを置いていたので、雷通や、その関連会社に行くことが多く、今まで経験したことがない大会社に足を踏み入れることが多くなっていった。
それにしても黒田さんのデスクの隣に座っている「橋本静香さん」可愛すぎる!
入社3年目と言っていたから25歳くらい?
ちょっと年上だ。
やっぱり良い大学に行って真面目に生きてきたんだろうな~
雷通志望だったけど雷通テックに回されたと言っていた。
黒田さん、デスクにいると静香さんといつもおしゃべりしている。
ずるいぞ~!黒田さん
私は意を決して静香さんにこっそりとメールを書いてみた。
「お仕事のお礼で今度、お暇な時にご飯にでも行きませんか?」的な文章をできるだけ、さり気なさを入れつつ「別に好きとかではないんですけど仕事の関係で」を強調しつつ、微妙なギリギリな線を突いたつもりだった。
これが「なろう」に掲載されている妄想小説ならば「え!実は私も哲也さんとご飯行きたかったんです!」となるんだろうが
これは自叙伝だ。
「完全にスルーされた、、、」
「忙しいので」とか「プライベートは」など、なんでもいいから断ってくれれば、まだ精神が保てるのに、その後一切、その話題は出なかった。
普通に考えればわかること。
大手広告代理店エリート営業と下町の印刷会社営業で学歴無しなDQN
無理に決まってるよな~
それでもアタックしてしまう私は
「ある意味、俺つぇぇぇ~!」
鉄のハートを持つ勘違い野郎である。
学歴や格差というものをこの時
学ばせていただきました。
社会って意外と冷たい(涙)