表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/40

3.定時制高校

18歳になって、都立江戸ノ川高校「定時制」に入学した。


その頃の定時制に、入学する人間は、真面目に中学に行かなかった悪ガキタイプか、学校でイジメを経験したことがありそうな隠キャタイプばかりだった。


私が定時制に通っていた時の女の子たちは安室ちゃんに憧れた「黒ギャル」が流行っていて、男は「チーマー」か「暴走族」風だった。



定時制高校は高校中退や中学も真面目に行けなかった輩が集まるので、夏休みが開けると不登校になり、一年生の夏休み明けには、クラスの人数が半分になるのが当たり前のような状況だった。


定時制に通う悪ガキタイプの多くは、昼のバイトや仕事をして、夜の学校に来る生活を送っていた。

夕方、5時半から授業開始だが、6時までに入れば遅刻にはならないので、ほとんどの生徒が1限目はギリギリに来る。


6時15分からは給食が出た。

給食だけ食べて「お腹がいっぱいになったから遊んでくる」と言い授業に出ないヤツもいたし、誰かの友達なのか学生じゃない家出をしてきたような知らない子がいたり、学校を辞めたのに給食だけ食べにくる輩もいたので、給食当番で見回りに来ている先生に追い出されている風景もしばしばあった。



緩くできている定時制高校はサボる生徒も多い。

最低限の出席日数さえ出ていれば、進級できる仕組みになっていたし、出席日数が足りなくなりそうだと、担任の先生が教えてくれるのだ。

今思えば、至れり尽くせりだと思う。


そして先生もまた緩い。


口うるさく言う先生も中にはいたが、ほとんどの先生は悪戯や、タバコを吸っている生徒を見つけても注意はするが高圧的な態度は取らないし、上から物申す先生はいなかった。


この時代の全日制学校の先生は、生徒に舐められまいと怒鳴り散らしているのが普通の時代だったが、定時制ではそれが通用しない。


過度に刺激すると悪ガキどもに通勤で使っている車のガラスを割られるような仕返しがあるからだ。


実際に、ちょっと強めに注意してしまったことで、体育教師が乗っている車の窓ガラスが、すべて割られている事があった。


成人している生徒もいれば、学校近郊の悪ガキが集まっている定時制高校で下手に恨みを買えば、どんな仕返しが待っているかわからないのである。


高校時代の思い出エピソードを書きたいと思う。

学生時代の私は「年下の同級生」一穂と順の3人で、つるんでいることが多かった。


給食終わりの廊下を歩きながら

「今日、暇じゃね。」

「なんか楽しいことないかなぁ。」


すると仲間の一人、順が

「俺さぁ〜、今日、花火持ってるよ!」

「ロケット花火とスモーク。」


そして一穂が賛同してくる。

「マジか!いいじゃん!で、どうする。」


そして3人は一気にテンションが上がり作戦を立て始める。


「そりゃー、職員室に打ち込むしかないでしょ」

「マジで!さすがにヤバくない?」

「見つからなければ大丈夫だよ」

「だよね、やっちゃうか!」


「角度が付かないとロケット花火を職員室に上手く打ち込めないから、何か台にして飛ばしたい、順!角度つきそうな物さがしてきて!」

「オッケー、なんか取ってくる」


「二人ともいいか!まず、ロケット花火を打ち込んで、怯んだところにスモークを投げ込むぞ」


「順!職員室の扉が閉まっているから、お前、先生に用事があるふりして、扉を開けっ放しで職員室に入ってきてくれない?」


「それと、順!打ち込むことを知ってるからって職員室で笑い転げるなよ!」


そして、俺と一穂は、素早く廊下にロケット花火を並べる。

それを見ていた、順が扉を開けたまま、職員室に入っていった。


「やるぞ」


並べたロケット花火にライターで着火していく。

一斉に飛び出したロケット花火は目標を数発外れたが、残りは狙い通り職員室に勢いよく飛び込んだ。

「パンッ」「パンッ」「パパンッ」

破裂したロケット花火に慌てている先生が遠目に見える。

すかさず、追い打ちをかけるようにスモーク花火に着火して、職員室に投げ込んだ。

スモーク花火が投げ込まれた時点で順が職員室を出てきた。


私たち3人はバレないように、階段の踊り場まで走り、2階の職員室が見える場所で、3人でゲラゲラ笑っていた。


「見せたかったよ、数学の二ノ宮、めっちゃ驚いてたぜ。」

「いきなり撃ち込まれたら、さすがにビビるよな」

「まだスモークが充満してる、バレなかったかなぁ?」

「大丈夫でしょ。でもまあ、先生たちだって、大体誰がやったかわかってるって」

「だよね。でも、めっちゃ楽しかった」


暇さえあれば、私たち3人は悪戯を考え、学校を楽しんでいた。

輩だった私は、意味もなく全力で叫ぶことをルーティンとしていて、人を脅かしてニヤニヤしたり、廊下ではスケボーでタイムアタックをし、バイクで校舎の階段を駆け上がって、どこまで無茶ができるか競い合っていた。



定時制高校は無法地帯そのものとなっていた。


高校は午後9時に終わり、放課後になると近所のファミレスや、ファーストフード店に夜中まで屯するのが日課だ。


次の日、仕事があるので午前0時には解散するのだが、突如「カラオケ行こうぜ」と、つるんでいた2人と女の子を連れてカラオケに行っては、朝日が昇る時間まで騒いでいることもあった。そんな日々が楽しかった記憶として残り、かけがえのない思い出だったりする。



夜中まで遊んでいることが多かったので、工場で仕事中に危険な作業をしているにも関わらず、どうしても瞼が勝手に下がってくることがあった。


眠気と戦いながら危うい作業をしているとサンダーという金属を研磨する電動工具で足を削ってしまった。

幸い、転んだ程度の擦過傷で終わったが、深く入っていたことを考えるとゾッとする。


仕事中に居眠りが多くなり怒られていた事と、学校と遊びが夜型になっていったので、3K工場の仕事を辞めて、深夜のコンビニバイトをした。


学校と、バイトと、遊びをこなしながら教習所にも通い始め、車の免許を取得すると、どうしても車に乗る仕事に付きたくてコンビニバイトも辞めて、配送員募集の広告をみて面接に行った。


江戸川区にある印刷会社で、私が長く関わる印刷業界の原点になった会社だ。

事務用の印刷物をメインに製作している会社で、伝票や封筒などの印刷物が多く、その他に文房具などの扱いもあり、町の印刷屋さんというイメージの会社だった。


「今日も元気に行ってきまーす。」


「ちわーっす!納品でーす。」


取得したばかりの免許で、商用の1tバンを運転できることが楽しくて下町を荒い運転で爆走し、出来上がった封筒や伝票などを鼻歌交じりでお客の会社に届けていた。



22歳の年になり、

四年制の定時制高校を卒業すると同時に、配送員として入った印刷会社に就職し、内勤営業の職に就くことになった。

青春していたな~

普通の高校生とは違い、悪戯ばっかりしていたけど(笑)


工場で働いていたからお小遣いはたくさんあった。

お金を持っていない奴らを連れてカラオケで騒ぐのは本当に楽しかった。

大学を目指さない定時制の高校生って本当に楽だし毎日が充実していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ