1.下町の輩
突然、夜の校舎内に轟く叫び声がした。
まるで王道バトルマンガの主人公が、全力を放出する時の雄叫びの様に。
一斉に各クラスの扉が勢いよく、ガラガラッダンという音と共に開き、何事が起きたのかと生徒たちは発生源を探す。
職員室から先生が走りだし、状況を生徒たちに問いただしていく。
俺は、この状況をニヤニヤしながら、何食わぬ顔でスタスタと教室に戻った。
それを見ていた仲間たちが笑いだした。
「マジありえねぇ、全力すぎるでしょ、先生まで来てたじゃん」
「なんかさぁ体中が、疼きで一杯になんだよ」
それを全力で雄叫び
「ウォーァァァァアアーーー」で、ぶっ放すんだ。
苛立ちでもないし、ストレスでもない。
体の中に疼きという名の有り余る力がどうしようもなく溜まっていく。
どこにぶつけて良いかわからない力を、悪戯に叫びで消化していた。
それに陰キャ達が「何事だ?」ってビビった顔がたまらない。
だから俺は限界まで疼きが溜まったら全力解放をするのが癖になっていた。
スクールカーストの頂点に君臨していたが、誰かをイジメるということはなく、逆に陰キャに興味があった。
積極的に関わり、陰キャ達を何とかして変えてみようと思ったこともあった。
定時制高校に通う俺は、好奇心旺盛で気まぐれ、自分が何者で何がしたいのかも分からず、ただ「若さという行き場のない疼き」だけが体の中を蠢いていた。
東京の下町で育ち
身長180cm体重100kg
よく日焼けをした肌に、髪型はボウズ、
白のタンクトップと白デニムの短パンに、雪駄を履いていた。
どこからどう見ても「輩臭」が漂う若者だった。
生い立ちは、私立中学に通い柔道に励むが、中学3年の時に柔道部の監督に理不尽な理由で怒られたことに反発し、部活を辞めて地元のワルとつるむようになり、グレていく。
柔道だけは強く、大会では優勝、準優勝を飾る成績で、千葉県の学校に引き抜かれ高校に進学するが、そこでも先輩の陰湿な嫌がらせに反発し1年で中退した。
我慢が出来ない性格で我が儘だった。
上からの圧力が嫌いで、押さえつけられようとすると先生だろうが先輩だろうが反発した。
道を外れて落ちこぼれていく。
家族にも呆れられて、誰も何も言ってこない。
必要のない人間
薄々はわかっていたが認めたくはなかった。
こんなダメな人間だったが、人は成長するにあたって変わっていけた。
辛いことも、楽しい事も、自分では想像もしていなかった道を一歩ずつ歩いていくことになるのだ。
事実は小説よりも奇なり
始まりは少しだけ遡り高校を中退した後の17歳から物語は進んで行く。
事実を元にしながらも読んだ後に
「まあまあ、おもしろかったな~」
と思われるようなお話に仕上げることを目標にしたいと思います。
よろしくお願いいたします。