エンドレスワールド
神に選ばれし者のみが立ち入ることを許された地、エンドレスワールド。
その世界にいる神に気に入られれば如何なる願いでも叶うという伝説があった。
だが、行ってみれば何の変哲もない世界。
当たり前のように人間が闊歩しているが、科学が発展していない国々。
魔法があるわけでも近未来というわけでもなかった。
ただ一つ違うことがあるとすれば生物において多様である、ということぐらいである。
そんな他の世界と差程対して変わらないこの世界には、表から見ただけでは知る術がないあるものがあった。
それは秩器と呼ばれるもの。
秩器とは秩序の力を有する神の武器であり、世界中に武器とは知られずひっそりと散らばっていた。
だが、ある時秩器とは知らず、骨董品として手に取った者が突然人が変わったかの如く豹変し、周りの者達を秩器の力を使って殺しまわったという事件が起こった。
その事件により、秩器という存在が一部に明るみとなり恐怖を呼んだのだ。因みにその時豹変した人物は行方を眩ましており、人間達の間では伝説として語り継がれている。
勿論、この事件の後、秩器と思われる物を国は壊そうとしたそうだが、どんな手を使っても傷一つつかなかったそう。
そのため、秩器は見つけ次第、歴史的価値のある骨董品の保護という名目でエンドレスワールドでは国々が回収して保管していた。
だが、どれだけ国がかき集めても限界がある。
人間には秩器と何かの区別がつかないことが多く、大丈夫だろうと譲った相手が豹変してしまい手遅れというケースも少なくない。
また悪意を持つ人間が悪用しようとすることも珍しくはなかった。
普通の人間にとって秩器など、使い道がなく壊れない装飾品としての認識だが、特定の人物にとっては力を与えてくれる武器と成り果てる。
そんな危険な物を何度も代替わりしながら人間達は回収していき、最初の事件から数百年後、そんな事件も起こらなくなった。
そして代々語り継がれてきた伝説すらも作り話として認識され人々の頭から薄れてきた頃、国々の王族や貴族、平民が次々と殺される事件が相次ぐ。
その事件達に関連性はなく、手口もバラバラ。だが、どれも一貫して犯人の手がかりが掴めない事件ばかり。
遺体に外傷があろうがなかろうが凶器は分からず、死因が分かることはない。
そんな行き詰まったその様を無感情に見下ろしている者達がいた。
これは人間を脅かす側の話。
この世界は少しずつ確実に死体は積み上がってゆく掃き溜めのような世界だった。
そしてそれこそがエンドレスワールドに定められた運命であり、存在意義でもあった。
「先生!」
「はい、何ですか?」
「ここを教えて欲しいのですがお時間よろしいでしょうか?」
とある昼下がり、白衣を着て資料を抱えている男を生徒と思われる青年は呼び止める。青年の後ろには二人の若い娘もいた。呼ばれた男はゆっくりと振り返りそれに応じる。
「えぇ、大丈夫ですよ」
優しげに微笑んで男は承諾した。
彼の名前はリーベ・フォン・ケイナー。
彼は貴族であり医師をしながら学舎にて医学や生物学を教えている男として知られている。
そして、世界一様々な事件に関与している男としても有名であった。
そんな彼こそがこの世界の軸。
彼を中心に世界は回っていく。
これから語るはその全容。
終わることのない語り合い、いつかは終わる語り合い。
今日もまた選ばれた者はこの地を踏んで行くのでしょう。
願いをその胸に秘めて。




