スタート2
続きです。
翌年の試験に向け、賢は早い時期から勉強に取り掛かった。
それまでの年内の勉強といえば、何の計画性もなくだらだらと惰性的なものであった。
結果、無駄な時間を費やし、年明けからようやく本腰を入れていた。
その様な感じでは間に合うわけもなく、毎年のように中途半端な状態で本試験に望んでいた。
「今年は過去問、条文を完璧にするぞ」
教材を絞ったぶん、やる気が出ると同時に心に余裕もうまれ、順調なペースで取り組むことができた。
翌年8度目の挑戦もダメだった。合格点に4点届かなかった。
自己採点で合格を確信していただけにショックも大きかった。
賢はスーパーでアルバイトを始めた。
これまで単発のバイトしかしてこなかった賢にとって、初の継続的なバイトであった。
担当は鮮魚。朝7時に始まり午後1時までのものであった。
働き出したのは不合格がわかった直後の11月。秋から冬になりかけの頃である。
早朝のスーパー内は寒いうえに鮮魚コーナーはきつい。
作業は水がつきまとう。数日であかぎれになり、魚の鱗のせいもあって両手は数日でボロボロになった。
しかも何十種類もの魚を覚えなければならない。
「魚の名前なんか覚えるんだったら条文暗記した方がいいに決まってる」
はじめの頃は必死で魚名を覚えたがだんだんとアホらしく思えてきてしまった。
休憩中、鏡に映った白長靴姿の自分を見て情けなくなった。
「あと4点、あと4点とれてたら俺は今こんなところにいなかった」
物事の考え方としてはさておき、その時の賢は追い込まれていた。
鮮魚のバイトは数ヵ月で辞めた。
職場の人間関係が悪く、精神的にストレスを感じたためだ。
翌年の試験もダメだった。9点足らなかった。
近いうち、また投稿します。




