First misson
(今回の目的は、自分以外の生存者の確認だ。例え何が起こっても寄り道はせず、目的達成のみを目指すぞ。)
友哉は自分に戒めの言葉を投げかけながら、家のドアを開けた。
玄関で靴を履いている時に気付いていたが、外は薄暗くなんだかとても不気味だ。
おれの家からかおりの家までの距離はだいたい500m 徒歩5分ぐらいの距離だ。
いくら近いといっても、こういう事態なので周りを見回しながら、注意深く、歩みを進めた。
マスクは密閉性が高く、歩いているだけだが、とても息苦しくなってくる。
しばらくすると、昔かおりとよく遊んでいた公園があった。ここにはドーナツ型のUFOみたいな子供が入れる土管があり、雨が降った日にはよく近くの駄菓子屋でお菓子を買い込んで、一緒にゲームをした。
「あーっ、なつかしいなー。」
友哉は、昔の思い出に浸ってその遊具を眺めている。すると、
「キャーッ。ハッハッ。ハハハッハッ。」
その遊具からは、子供の笑い声のような音が響いてきた。
「おっ、なんだ。子供はいるんじゃん。」
友哉は、自分以外の生命反応を初めて確認できて、なんだかとても安心した。
(かおりんちまで、あとちょっとだけど。ここで、他のやつに会えたらもう充分だしな。ちょっと声掛けてくるか。)
奥の方に見えるUFOの遊具に向かっていった。
だがこの判断は決して正しいものではなかった。
「おーい。なにしてんだー。」
不審がられないように、青年ぶったさわやかな声で、呼び掛けた。
しかし、返事は返ってこない。
「おー、いるのは知ってんだぞ。ちょっと話そうぜ。」
もう一度先程よりは、抑えめの声で呼び掛けた。
やはり、返事は返ってこない。
痺れを切らした友哉は、遊具に近付き、首を突っ込んで、中を確認した。
右側を見ても誰もいなかった。そして、左側をみても誰もいなかった。でもなんだか、鼻をつくような獣のような匂いがする。
(だれもいないのか......。次は幻聴かよ。)
そして、もう一度右側を見た。
すると、暗闇の奥の方で、目をギラギラと輝かせ、口元を赤く染めた緑色の小人がそこにいた。
(ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ。)
友哉はこんなに大きな声を出したのはいつぶりかと言うぐらいの叫び声を放った。
ゴブリンは、あまりの大声に、面を食らい、真顔のまま3秒程フリーズしていた。
体中のありとあらゆる汗腺から冷汗が流れ出て、心臓の鼓動は明らかに過剰なペースでリズムを刻んでいた。
あまりの出来事に、友哉は全く動くことができなかったが、次のゴブリンの行動によって、止む無く動くことになった。
(ウキャーーーーーーッ!!!)
ゴブリンは猿のような声をあげながら、友哉に飛びかかってきた。その手には何かの肉片が付いた赤く染まった小刀を持っていた。
(アッ!)
友哉はゴブリンのその行動にとても驚き、今度は叫ぶ事もできなかった。
もう、身体は硬直して、ゴブリンの小刀が、友哉の喉元に届くのを黙って見ているしかなかった。
「ブゥーーーーン。」
小刀が喉元に届くまであと、コンマ5秒というところ、友哉の身体は青いオーラに包まれた。
(なんだか、とてもあったかい。身体がとても軽くなったように感じる。)
とてつもない勢いで、両手で床を突き、遊具に溜まった砂ぼこりを舞いあげながら、遊具から体半身を引っ込めた。
友哉は、自分の身に何が起こったのかは大抵予想をつけていたが、そんな事考えている暇もなく、遊具を背に向け、全速力でその場をあとにした。