Gun & Skil
真っ先に目に飛び込んできたのは、黒いハンドガンだった。
FPSで遊んだことはなく、特にミリタリー関係について知識はないが、なぜかその銃を見て興奮をした。
そのハンドガンは、銃口に筒状の付属品がついていた。
(たしかこれサイレンサーとかいうやつだっけ?)
大変物騒な出来事に対面しているのにも関わらず、とてつもない高揚感で満たされていた。
この状況から見て、この銃は本物ではないと考えるのが妥当だが、なぜか本物であると確信していた。
そして、横にある紙に目を遣った。
そこにはパソコンでタイプされたようなゴシック体を用いて、衝撃的な文が連なっていた。
〜若者たちへ〜
もうこの世界には、20代の若者しか残っていない。
そして、君達も30才を迎えた日には、この世界から消える。
誰が何の為にこんなことをしたのか突き止めようとする者もいるだろう。
それとも自らが生み出した妄想のために、自殺を考えるものもいるかもしれない。
全てのエゴが解き放たれたこの世界で、思うように生きたまえ。
(よく分からん。20代の若者しかいないってなんだよ。しかも、思うように生きろって。偉ぶってるけど、単なる責任放棄じゃねえか。)
いきなり意味不明な事を押し付けられ、全く手紙の内容を信じていないようだが、心の奥底では、黙示録的な展開を密かに期待していた。
そして、その手紙にもう一度目を通した後に、
ふと、手紙の裏側をみると、大きな文字である言葉が書かれていた。
「 身体能力向上(大)」
その文字は青く輝き、紙から剥がれ、宙に浮かび、友哉の身体に吸い込まれていった。
(またこれかよ。身体能力が上がったってわけか? そんな訳ないだろ)
もう色んな事が起こり、思考回路はショート寸前であった。
もう何もないか、最後にアタッシュケースの中をくまなく確認した。
(こういう抜け目ないところは母親似なんだよなぁ。)
すると、アタッシュケースの底の隅が、少しめくれあがっていることに気付いた。
切ったばかりの爪で、何とか底をめくると、そこには家の間取りが描かれた地図と、小さな鍵があった。
(おう。なんだこれ。宝探しか?いいもん見つけたぜ。)
もう何もない事を確認し、お疲れ様とアタッシュケースを閉めるとアタッシュケースは見る見るうちに透明になり、消えていった。
(あー、幻覚もここまでくると、危ないかもなー。)
ここまで、ものの20分程の間で、いろんな特殊な体験をした友哉は、とうとう脳から分泌されるアドレナリンも底をつき、猛烈な眠気に襲われた。
「バタンッ!!!!!」