Attache case
半裸のまま、髪も乾かさず、冷蔵庫にあるポカリを手に取り、自分の部屋に戻ろうとした。
若干身体がふらついているため、手すりをしっかり掴みながら、階段を登った。
窓を見ると先程まで快晴だったのが嘘のように薄暗くなっている。
(あれっ? 今日ずっと晴れじゃなかったっけ。)
違和感を感じながらも、何とか部屋に到着した。ドアの隙間から光が漏れている。
(さっき電気消したはずなのになぁ。おかしいな。)
ドアを開けると部屋の中心に見覚えのないアタッシュケースがあった。
(なんだこれ。お母さんが置いて行ったのか??)
その不気味な物体を見て、あり得るはずのない疑念を抱き、必死に自分を納得させようと努めていた。
そのアタッシュケースは、この世の物とは思えないほどの漆黒で、手に触れると飲み込まれてしまいそうな不安を感じた。
(いや、そんなはずない。こんなのおれの家にはなかったはずだ。)
それから暫く、自分とアタッシュケースと膠着状態が続いた。
身動き一つしなかった。
(お母さんが帰ってくるまで、まっとくか。)
もういい年をこいた大の男が、こんな発想を抱くなんて、自分に嫌気が差した。
(いや、そんなのだめだろ。ここは日本だし、爆弾や毒ガスが入ってるなんて、滅多な事はないだろ。)
男は決意した。
(よし開けよう。)
後にこの決断が大きな意味を持つことになるとは思いもしなかった。
右手に持つポカリの蓋を開け、ゴクリと大きめの一口を飲み、そっと地面に置き、
そのアタッシュケースに手をかけた。
(!???????? )
そのケースからは眩い光が溢れ出した。少し開けただけにも関わらず、そのケースは意思を持つように、自ら開き、青色のオーラを解き放ち、渦を巻くように友哉を包んでいった。
(うわっ、なにこれ。俺しぬのか。いやっ、毒ガスにしてはきれいすぎる。)
それは一瞬の出来事だった。
程なくして、その光は萎んでいき、ケースの中に消えていった。
予想外の方が、目前で起きたが、全く取り乱した様子はなかった。
そして消えた光の先には、大きめの紙が1つと、この国では法律で禁止されているはずの黒い物体があった。
(えっと、これやばくないか?笑笑)
先程の冷静さはどこへやら、心臓がドクドクと激しく脈打ち始めた。