第1話 勇者選定の儀
最近毎晩夢を見る。
この世のモノとは思えない綺麗な女性が必死に助けを乞うのだ。
『どうかこの世界を救ってください』と
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近頃この世の中は物騒らしい。
都市崩壊だの疫病だの、悪い噂が聞こえてこない日はない。
だが、こんな片田舎の村にはあまり関係のない話かもしれなかった。
だからこそ、王都の偉い神官様が突然押しかけて来た事に村人たちは気が動転した。
聖教会の司祭様がお告げを賜ったらしい。
『この村から勇者が現れる』と
魔王が200年の眠りから目覚めて世界を崩壊させる。
それを唯一防ぐことができるのが勇者であると
お告げに従い10~15歳の子供たちが教会に集められる。
木こりのユシアもその一人だった。
「ああ、精霊様が降臨されるのを感じる」
神妙な雰囲気の中
神官のお爺さんだけの声が響く、なんでも聖域の精霊と甲信しているそうだ。
「確かにこの中に勇者の証を持つ者が存在する!!」
おお~
周りがどよめく
勇者になれば、それはもう大出世だ。
先代の勇者は王宮の姫と結婚したらしいし
飢えることなく、毎日おいしいモノを食べられるに違いない。
「さぁ!勇者の証を持つ者よ!名乗り出よ!!」
・・
・・・
沈黙
誰も名乗り出ない。
ユシアは最近見る夢のことを思い出す。
もしかして・・・そう期待に胸を膨らませて・・・自分の体を見る。
先代は『腕の甲』にあったらしいそれ
ユシアも自分の上半身を見回してみたが勇者の証は・・・なかった。
(いや、全然期待してなかったけど!)
なおも続く沈黙
ああ、なんか・・・気まずい
「お・・・俺だ・・・勇者の証が出たのは・・・俺だ!」
沈黙を破ったのは村で一番大きい少年だった。
名前はザーコ、村の領主の息子で、時々ユシアをイジメてくる嫌な奴だ。
神官は腕の甲に記されたソレをじっくりと確認する。
「おお、確かに!このモノこそ真の勇者であるぞ!」
おお・・・
おおおお!!!
湧きたつ村人達
その夜、村人たちは勇者の顕現を祝い大いに飲み明かしたのだった。
ユシアは村の外の山小屋でその様子を眺めていた。
色々あって、村からは村八分にされている。
ため息をひとつついて用を足して寝る事にした。
なんだ自分の『股間』が明るい光を放っている気がする。
?
それはどう見ても
神官たちがしきりに探していた『勇者の証』にしか見えなかった。