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三通目

美味しい肉じゃが。

 こんな悪戯に付き合うほど俺には時間があった。そう悲しいほどに。

‘手足は母親を人体錬成するときに失った’

 俺はメールの相手を玩具としか思っていない。またこの相手も俺を人としては見ていないだろう。

 少し時間が流れた、俺はフローリングに寝ころびながら、金がないことを強く自覚した。贅沢はあまりしない生活、それでも金がない。バイトをしていた時期もあったがとっくの昔にやめた。後悔はあるが今更戻りたいとは思わない。

‘私は嘘は嫌いです。国家錬金術師さん’

 返信が来た、文面を見て相手の正体を絞れたことに俺は少し感動を覚えた。こいつが嘘が嫌いなどなんの情報にもならない、だが後者は違う。俺は学生の頃流行っていた漫画の設定を送った。あいつはそれを理解し乗ってきた。

 二十代から三十代、俺は大まかに予想した。

‘嘘は嫌いか、だったらあんたが誰なのか教えてくれないか?’


 それから何時間も経っていた。さすがに相手にするのが億劫になったのだろう、俺は買い置きしていたカップ麺にお湯を注ぎ、しばし考えた。このメールのやりとりを何処かで楽しんでいる自分がいる、返事が来ずにそわそわしている自分がいる。

 麺を啜る、まずくはないそれだけ、腹に入ればそれでいい。汁まで飲み干す、時折こういったスープは身体に悪いから飲まない方がいいなどと聞くが、腹を満たすには仕方ない。それで死んだとしても俺は受け入れるだろう。

‘知りたいですか?’

 俺は‘知りたい’と送り、カーテンの隙間から見える外の景色を見た。もう外は日が完全に落ちていた。


 朝はどうも苦手だ、いつ寝ても朝起きると俺の身体は言うことを聞かない。昨日はずっと音楽を聴きながらスマホでゲームをしていた。大して楽しくなどはない、俺にとっては金のかからない遊びそんな捉え方だった。あれから今まで返事は帰ってこない、返事を催促するメールを送ることが一度脳裏をよぎった。もし、そんなものを送ったのなら、俺はあいつに白旗を揚げたことになる、そんなこと俺のプライドが許さなかった。よってその意見はもう二度と浮かぶことは無かった。と俺はパソコンに新着のメールが来ていることに気が付いた。

‘東山駅の改札口辺りで明日どうでしょう?’

 悪寒が全身に走り抜けた。

たぶん続きます。

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