学園 担任 バイト
というわけで第二話。
恵介たちの通う藤見ヶ崎学園は、本土から船で一時間ほどの場所に浮かぶ藤見ヶ崎島と呼ばれる島をまるまる一つ敷地にした巨大校だ。
生徒総数は約二万。そのほぼすべてが、島内の自治寮に住んでいるから驚きだ。
島内には生徒の他、学園職員らが住まう区画もあるのだが、この島の経済活動やその他運営等は、全て学園の生徒自治会によって行われている。
ここが他とは違う特異な学園だということを示すのがこの一点。
そしてもう一点。授業は単位制。一応学年別にクラス分けがされてはいるが、履修する授業はすべて生徒が決めることが出来る。空いた時間は部活動や委員会活動、さらには島内でのアルバイト等に宛がう事ができる。広く生徒の自主性を育てようという学園の精神が、この二点によって示されているわけだ。
教員たちもそういった、生徒の自主性を重んじる自由な気風を持った人物が多い。恵介の担任である黒宮響もその一人だ。
「神崎さーん。どーしてわたしの化学取ってくれなかったんですかぁ?」
ホームルーム後。現国の授業が行われる教室に向かおうとしていた恵介は、響の間延びした声に呼び止められた。
「響ちゃんの授業、ほとんど午後からだろうが。俺、午後はバイトしたいんだよ」
「えー。神崎さんバイトなんかするんですかー? コンビニですか? コンビニならライムライムにしてくださいねー? わたしのご贔屓なんでー」
「まだ決まってないけどな」
「決まってないなら十六棟の課外斡旋室でバイトの紹介してくれるから行ってみるといいですよー。まぁバイトは程々にしといてちゃんと勉強はしましょうねー」
ひらひらと手を振って見送る響をよそに、恵介は教室を後にする。入学してから二週間弱、顔を見ない日は休日ぐらいなものだが、なんともあののんびりした雰囲気に毒気を抜かれる。
とは言うものの、さっきみたいに的確なアドバイスをちょくちょくくれるので、生徒からの信頼は厚いようだった。事実、他学年の生徒からも呼び止めれることも多いし、同じクラスの生徒達も、彼女のことを好意的な目で見ているのが分かる。かくいう恵介もその一人だ。
「斡旋室か……」
授業終わりに覗いてみるかと考えながら、足早に授業に向かう恵介だった。




