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頼み事 幼馴染み 傍若無人

はじめまして。マイペースに書いていけたらと思います。

 それは、よく晴れた春のとある日のことだった。


「副会長? 俺が?」


 突然の来客による突然の要請に、神埼恵介は素っ頓狂な声を上げて驚いた。

 彼が暮らす藤見ヶ崎学園自治寮の一つ、「冷泉寮」。その六畳一間の狭い一室には、恵介の他、二人の女子生徒が顔を揃えていた。


「ええ。どうせ暇でしょ?」


 ちゃぶ台を挟んで恵介の正面にきちんと正座していた小柄な少女は、出された緑茶をすすって一言。まるで小学生のように見えるほど幼い容姿の彼女だが、恵介よりも一つ歳上だった。

 方城小姫。藤見ヶ崎学園生徒自治会執行部長を務める彼女は、恵介の数少ない幼少期からの友人の一人だった。


「姫ちゃん、こっちはお願いに来てるんだからそんな言い方駄目だよぅ……」

「いいのよ鈴。ホントのことなんだから」


 その小姫の右隣に控えていた黒髪の女子生徒の窘める言葉にも小姫はどこ吹く風。慌てたように女子生徒は恵介に頭を下げる。


「ごめんなさいごめんなさい! 姫ちゃん久し振りに幼馴染みに会うからって昨日の晩からはしゃいでて、多分恥ずかしがってるだけだと思うんです!」

「ちょ、変な事言うのやめなさいよ!?」

「だって姫ちゃんが失礼なことばっかり言うからでしょ!?」

「とりあえず騒ぐな近所迷惑だ。あと昔からこんなだから気にしなくていいよ……えーと」

「あ……すみません。後藤寺です。後藤寺鈴香」

 

 恵介は初対面だが、学内ではそれなりに有名人ではあるこの彼女は、方城小姫の最側近とも呼ばれていた。見るかぎり、それなりに親しい間柄であるのは間違いないようだった。

 男臭いこの狭い部屋に有名人が二人も入っていくのを見ていた他の寮生から恵介が質問攻めに合うのは、彼女たちが立ち去って五秒後のことだが、それはまた別の話。


「……要件は分かったがなんで俺なのか理由が分からんから簡潔に述べよ。はい」

「人選面倒。あと、あんたがこっち来てたことを一昨日知ったから。来るなら来るで連絡よこしなさいよこの馬鹿」

「オーケーオーケー。ちょっとは大人な考え方になったかとも思ったが全く変わってないみたいだなお前は」


 傍若無人という言葉がこれほどまでに似合う女を、恵介は他に知らない。

 が、ここに来て小姫はふっと表情を緩めた。それは恵介が今まで見たこともない柔らかさで。

 

「……正直な所、気心知れた相手が側にいてくれるのは助かると思ってる。鈴にしてもそうだけど、あたしが間違った時のブレーキを頼めるのは、あんたぐらいしか思い浮かばなかった」

「……ふむ」

「答えは急がないからゆっくり考えて。知ってると思うけど、うちの執行部ともなれば相当忙しくなるから、強制するつもりもない。これ、連絡先」


 差し出してきたのは一枚のカード。藤見ヶ崎学園特有のもので、授業の出欠確認などに使うパーソナルピースと呼ばれるその紙片には、電話番号と住所が書かれていた。


「じゃ、私達帰るから。邪魔したわね」

「……おう」

「今回の件は別にして、今度ゆっくり出てきなさい。ご飯ぐらい食べさせてあげるから」


 ひらひらと手を振った小姫はさっさと部屋の外に。慌てた鈴香がぺこぺこと頭を下げながらその後を追いかけていった。


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