ドッチ部活動日誌4月8日 百済 斎 (くだら いつき)1
俺はこれから通うことになる学校の入学式に出るため、通学路を歩いていた。
この道は受験前日の下見と受験当日にも来た道だが、何も無いところだともう。
一番近い町からバス20分徒歩10分。進めば進むほど学校の校舎と山しか無い。
全寮制で今日から寮に入るのだから、もうしばらくはこの道は歩かないだろうが、坂道ということもあって、楽なものではなかった。
私立天ノ岬学園高等部は2年前に御子神財団という名家が建てた新設校で、進学校ながらも部活に力を入れ、
スポーツ推薦も多くとる文武両道の学校として最近注目を浴びている。
場所も北海道だというのに本州からの入学希望者が絶えないのは、校風と設備の良さだろう。
この学園は、校舎が大きく4つにわかれており、これまでの成績や経歴で総合、特進、体育、文化に振り分けられ、寮等生活スペースも学科によりバラバラだ。
そんな学校に今日から入学することになった俺、百済斎は、総合学科にて世話になることになった。
まあ、千葉に住んでいた俺が何故この学校を選んだかは、ただ単に『野球部が無いから』なんだが。
この学校は生徒の自尊心と自立の促進のため、多くの場で生徒に自由が与えられている。
部活動もその一つで基本部活は生徒が自由に集まり、顧問と規定人数がいれば創ることができる。(部により規定人数は違う)
そして、偶然にも野球部はできなかった、勿論野球の推薦で入った者もいるが、そういった者は大抵学校が用意したチーム、施設でプロとなるための教育を受けている。
この学園では、部活はあくまでも学園生活を謳歌するためのシステムにすぎない。
だからか、多くの者は息抜きや自分の趣味として部活をしている。
野球を趣味のために態々部活を創る気にもなれなかったんだろうが、一番の理由は今、多くの若者の心を掴んでいるのは野球ではないある球技だからだろう。
そう、ドッチボールである。
たしか、この学校は新設校ながらその球技において、初出場で全国へ行ったとか行かないとか。
噂では聞いたが俺はあまり興味は無いというか、俺にとっては野球部が無いこと自体には関心は無かったのである。
「流石に北海道だと4月じゃ桜は咲かないか..」
俺は桜であろう木を見つめながらそう言った。
そんな丸裸の木ばかりが立ち並ぶ並木道を超えれば、学校は目の前で多くの人で賑わっていた。
皆自分のクラスを確認してるようだった。
「私、文化学科だから...Gクラスだ!」
何やら、新入生らしき女子の声が聞こえた。
(ああそうか...)
たしかAクラスが特進、B〜Dクラスまでが総合、E,Fクラスが体育、G,Hクラスが文化というクラス振り分けになっていた。滅多なことではクラス替えもしないらしい。
俺も自分のクラスを確認すると、総合Bと書かれた枠に名前があった。総合のBクラスということだろう。
名前の隣にB−005と書かれていた。寮番号のことだろう。
とりあえず、俺は1-Bへと向かうことにした。
このクラス分けが俺の学園生活最大の出会いの一歩になる事になる。