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気付くとそこは黒と白の風景しかない場所にいた。ふと冷静になり周りを見渡すと、よく顔の見知たクラスメート達が困惑した表情を浮かべながら、口を開けてアホ面をしていた。
・・・・そして突然
「諸君!!よく来てれた!!」
と男か女かよくわからない声が響いた。
その時俺は自分の日常が非日常に変わっていくことを悟った
◇◇◇◇◇
「なあ琉生・・・タバコいいですか??って言われた時の断り方って分かるか?」
と、憂鬱な朝一にアホな事を聞いてくる神崎省吾。
こいつは俺こと八幡琉生が入学した藤岬高校で唯一といっていい友達である。文字通りただ一人だけの友達だ。
俺は身長が160cmしかなくとてつもなく女顔なのだ。そのせいで馬鹿にされ、いじめられ、時には男に告白されるという矛盾した中学、高校生活を送っている。
「んなこと知らねーよ。」
と言いつつも真剣に考えてみたら確かに断る言葉が見つからない。
「なんだよ冷たいな。今日はやけに不機嫌じゃないか。もしかしてまた“あれ”か??」
そう言われ更に不機嫌になる琉生。
“あれ”とは、この藤岬高校で恒例行事となりつつある男女混合による八幡琉生捕獲作戦である。原因は省吾が女の子からの告白を断りまくっている事だ。
省吾はとにかくモテる。身長は180cmを越え、顔のパーツは整っており優男とくれば放っておく女は少ない。高校一年生の時に、藤岬高校の“美を司る女神”とも言われている嶺岸桜花からの告白を断った事により「女に興味がないのでは??」と、馬鹿なファンクラブ共が馬鹿な疑問を抱き始めた。
そして省吾のファンクラブによる省吾の身辺調査が進められ、一人の容疑者が浮かび上がった。そう、この俺八幡琉生だ。そして俺にもストーカーまがいの身辺調査が決行され、ある時何か確信を持ったように「省吾君とはどういう関係??」と、聞かれ「幼なじみ」というやり取りを50回ぐらい繰り返した結果、「やっぱりコイツが原因か!!!」と、意味不明にも確信と殺意を込めた目で睨まれた。
確かにそこらへんの女より女らしい琉生が省吾の幼なじみという位置を獲得しているのだ。もはや半狂乱に陥っているファンクラブ達の残念な思考回路では、疑う余地はなかったのだろう。
それから1対多数の鬼ごっこが始まった。だがここで思わぬ第三勢力が参戦してきた。腐女子筆頭の“琉生×省吾 を見守ろうの会”という腐れファンクラブ(通称“ゾンビ会”倒しても倒してもゾンビのように復活してくるという最強の会として恐れられている)によって激しさを増し、最近では鞭や三角木馬などを持ちながら・・・・「グゥゥオォォラアァァ!!!まちやがれぇぇぇぇ!!!」「大人しく捕まってケツ貸しやがれやぁぁぁぁ!!!」「待ってぇぇぇ!!お願いこの服着て省吾君に迫ってぇぇぇぇ!!!」「ウホ!!ウホォォォ!!!ウホウホ!!ウホォォォ!!!!!」
と、ゴスロリ服や拷問器具などを持ち出す奴、更には人語すら喋れない変態が増え、手に負えない状態なのだ。
これが毎週1回必ず行われる。腐れファンクラブ(ゾンビ会)と省吾ファンクラブによる条約かは分からないが、今日を乗り切った事で今週は安全が確保されている。
◇◇◇◇◇
「あいつ等週1だけなら追いかけてくんなよな」
と、不機嫌な口調で愚痴をこぼしながら愛読書を取り出す琉生。
「・・・お前も大変だな、俺なら既に地球からおさらばしてるわ。」
他人事のように返答してくる省吾を睨み付け愛読書に意識を傾ける。
「お前毎日その本読んでるよな?飽きないのか??」
「別にこの本だけしか呼んでる訳じゃねーよ。他にも“この本と出会えた確率”“確率厨と確率厨による確率厨のための本”“確率大百科”とか、後・・・」
「もういいから!わかったから!!これ以上頭の痛くなる単語ださないでください。」
そう、この会話を聞いて分かるとおり俺は確率をこよなく愛している。ちなみに今読んでいる本は“この確率が分からなければサル以下”という本だ。言うまでもなく省吾はこの本に、人間失格どころかサルにすらなれていないことを言い渡されている。省吾曰わく「少なくともこの学校の人間はおまえ以外全員サル以下だよ。」らしい。
さて、あんな確率の素晴らしさが分からないサル以下の奴なんてどうでもいい。(おい)
世の中には“100%”なんて有り得ない。などと言っている奴がいるが俺はそうは思わない。(あれ?無視ですか??)
この世の全てを知る事が出来れば、“100%”“絶対”と言う言葉が使えるはずだ。(うわぁぁ~ん琉生ちゃんが無視する~)
だから俺は貪欲に強欲に知識を求る。この世の中は分からない事だらけだ。だからこそおもしろ───「る~~いぃ~~~」
「さっきからうるせーんだよ!!このサル以下の人間もどきが!!!」
「相変わらず顔に似合わず口悪すぎない!?省吾ママはそんな子に育てた覚えはないわよ!!」
などとギャアギャア騒いでいたら一時間目が始まるチャイムが鳴った。すると、いつもならばチャイムが鳴った直後でもガヤガヤとうるさかった校舎が水を打ったように静かになった。
琉生が違和感を感じた瞬間に、周りの風景が変わり、眩暈をおぼえた。
ふと気付くと、そこは見覚えのある教室ではなく黒と白しか見当たらなかった。
あんまり確率が関係なくなってタイトル詐欺になるかもしれないのでタイトルを変更する恐れがあります。
あと、所々無理やり確率という言葉を入れるかもしれません。