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里を出る少し前、私達は父上に帝国の主な人物を覚えておくように資料を渡された。
資料には国王や宰相などといった役割と名前、顔写真が載っていて、どのような性格なのかも書かれていた。
それを移動中に覚えた私達はすぐにその資料を処分した。
昼ごろ、帝国に到着した。
到着したはいいが・・・何故か騎士と思われる人々がそこから城に向かって道を作っていた。
どうなっているのだろうと兄や姉と戸惑っていると、ようこそいらっしゃいましたと強そうな騎士がこちらに向かって歩いてきて礼をした。
「今回は魔物退治に協力してくださるということでお越しいただき有難うございます。どうぞこちらにいらしてください」
そう言った彼は確か騎士団長のアレックス・フォークスだ。
彼は平民でありながらその剣の腕を認められ様々な戦いで勝ってきた騎士なのだそうだ。
ちなみに父も彼と会ったことがあるらしい。当時彼は新人だったらしく父は初めて会ったとき彼をここで殺すのは勿体ないと思ったらしい。将来が有望そうだから殺さなかったが殺さなくて正解だと言っていた。全く性格が悪いと私は思ったのだが・・・、なるほど父の言うとおりになっていたというわけだ。
彼が出てきた時点できっと私達は3人とも微妙な表情をしていたことだろう。兄も姉も彼に同情していた。
彼に案内されるとおりに移動するとなにやら周りからやけに視線を感じる。
やはりここでは黒目黒髪が珍しいのだろうか。
騎士の一人一人を見てみると金髪や栗毛が圧倒的に多くその次に赤毛といった髪に瞳は青や緑、赤、紫といった色鮮やかな人ばかりだ。
この国にとって私達は異分子なのだとそう思った。
そして城の門に着いた
「開門!!」
その掛け声が出た瞬間、門から淡い光が出てきて門が開いた。
私は一体何事だとビックリしたが兄や姉は初めてではないらしい。
「そういえば雪は見るのは初めてだったな。あれは魔法だよ」
そうなんともなさげに龍騎はそう言った。
え・・・?今なんて・・・?
だって12年間魔法なんて見たことも聞いたこともないんだよ。それが何で今更?
「俺達の一族は魔法が使えないし効かないんだよ。それでも恐ろしいぐらいに強い俺たちを恐れているから彼らは俺達に手出しできないんだ」
龍騎は付け足しのようにそう言ってのけた。
でもそれなら逆に思うことがある。
それなら自分たちで魔法使って倒せばいいじゃん!!
「魔物や魔獣は彼らからしてみればすごく強いからね。3・4才で何匹か倒せる僕たちとは次元が違うんだ。だから頼ってきたんだろうよ。それに魔法使いは貴重らしいからね」
私の心を読んでいたように彼からそんな言葉を言われた。
私達の言葉は凄く小さく喋っているので周りには聞こえない。
門を抜けて城の大広間と思わしき所になにやら偉い人たちが勢ぞろいしていた。
一体どうなっているのだろう。私達は国とは認められていないためこのような偉い人たちに迎えられる訳がないのだが・・・。
「ようこそ帝国にいらっしゃいました。私は宰相を務めさせておりますケイト・セントリーンと申します。この度、黒国よりお越しいただきまして有難うございます」
!?これは本当にどういうことだというのだろうか黒国とは表向きの私達の国の名称のようなものだ。それを帝国は前は黒の一族とそのまんまなことを言っていたのにこの宰相が言う言葉は国と認めたと肯定するも同然の言葉だった。
しかも彼らは皆、私達が王族の立場であるのを分かっているというような態度だった。
どうりであのような迎え方だったのだと思わされた。
「国王が貴方様方に挨拶をしたいと仰っております。こちらにご案内させていただきます」
拒否権はないのだろうと諦めて宰相について行った。
立派な部屋の前に着いたとき宰相はどうぞと言って扉を開けて私達が部屋に入ったと見てそのまま出ていった。
部屋の中には王様と思わしき美形で金髪碧眼のおじさまと、王妃、王子が2人、王女が1人といったまさに帝国の王族大集合といったものだった。
「・・・早速ですまないのだが、今まで黒国を国として扱わなかったこと申し訳ないと思っている」
私達が部屋に入って少しの時間が経ったとき王様がいきなり謝ってきた。
私達は何がなんだか分からずお互いに顔を見合わせた。
するとこちらの戸惑いに気づいたのか国王は少々困りながら私達に聞いてきた。
「源殿から聞いていませんかな?今回はそのために貴方達に来ていただいたのですが・・・」
なるほど、今回のすべての根源はうちの父上らしい。
その言葉を聞いた瞬間私達は相当呆れた顔をしていたのだろう。
王様は少し、いやかなり同様していた。
そして私達は3人ともこう思ったはずである。
あのクソオヤジ!!
父さんは相当性格曲がってます。
親ばかなんだけど子供で遊んでるっていう。
自分の出したものに子供がどう乗り越えるのか楽しみなんでしょうね。
そしてその結果をいろんな人に自慢するっていう。
迷惑極まりない。