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隠里の姫  作者: 柊 つばさ
帝国編
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11

ギルネストside


「皆様、もういらっしゃたのですね。もう少し遅くなると思っていたのですが・・・」



彼女、風間 雪はこちらを見据えてそのようなことを言った。


思わず怒りそうになったが顔には出さなかった。



「まあ、早く要件を伺いましょうか。貴方がたは何を言いにここにいらっしゃるのですか?何か言うことがあるのでしょう?」



「・・・こ度は、誠に申し訳ないと思っておる。そなた等を知らずとはいえ侮辱の言葉を言って傷付けたこと、本当に申し訳ない」



提案をした時は失礼だとは微塵にも思わなかった。


だが、そのあとに父に理由を聞いたとたん、自分の言ったことがどれだけ彼等に対する侮辱になったのかを知った。



「出来ることならば、今回の件我の命だけで穏便に済ませていただきたい。」



だからこそ一人の命で済むなら俺の命だけにして欲しかった。幸いにも私には弟がいる。俺がいなくなっても国を継ぐ人材は無くならない。


「我の命だけで足りぬのなら何か好きなものをそなた等に渡そう。だからどうか民の命は取らないで欲しい」



「・・・ッアッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」



そう言った途端、目の前にいる彼女が突然笑い出した。


何がなんだか分からない。何故そんなに笑われるのかが全くわからない。



「ッハ~。思いっきり笑ってしまいましたね。失礼。そんなに愉快なことを言う人が本当に居るだなんて思いもしなかったので・・・ップ。だって自分を犠牲にしてとか・・・ップ」



彼女は肩を振るわせながら言った。


俺が言ったことはおかしなことなのだろうか?


そんなことを考えていると、段々腹が立ってきた。


「笑っていないで殺るならば早く殺ってください」



「ええ、では始めま・・・」



「ちょっと待ってください!!兄様を殺すのではなく殺すのでしたら私を殺してください!!」



「兄様待ってください!!兄様達が殺されるぐらいならわたくしが死にますわ!!」



「お前ら・・・」



いきなり会話に参加してきたアルベルトとシェリーが言った。


俺は耳を疑った。だって、今まではあまり兄弟と言っても王位継承権を争う間柄だから恨まれていると思っていたし、あまり干渉しなかったのに自ら命を投げ出してまで俺を救ってくれるとは思わなかったから・・・。


俺は思わず涙ぐんでいたと思う。でもそれも束の間、


「残念ですがそれは出来かねます。今回の件に関しまして釣り合いが取れると思われるのは現国王のアレクサンド様か、時代国王となられるであろう第一子のギルベルト殿の命しかございません。ですので一つの命となりますと貴方がたでは役不足なのですよ」


その彼女の一言で二人が地獄に落とされたような感覚になっていた。傍から見てもよく分かるような落胆ぶりだった。


「では、一瞬で終わらせてあげましょう」


彼女がそう言って俺は身構えた。


これで終わりだとそう思っていたから。


シュッっと音が鳴っていたが何も起こっていなかった。



「はい、終わりましたよ。ではこれにてお開きにしましょうか」



「待て!!俺は死んでないではないか!!どうゆうことだ!!」



「いいえ、貴方は一度死にました。これがその証拠です」


彼女の手には俺がさっきまで一つに結んでいた。髪の束が握られていた。


だが、何故それで死んだことになるのだろう?それに彼女はどうやって俺の髪を切った?


「この髪は今までの貴方です。ギルベルト殿。今までの貴方は死にました。貴方は今一度生まれ変わりました。今回の件は貴方だけが悪いというわけではありませんしね。それに今の答えを聞いて貴方に少し賭けてみたい気になったのですよ。ですから、今までの帝国にしがみついて我侭を言っている貴方を殺してこれからの貴方を生かしてみようと思ったのです。単なる私の気まぐれですがね」



「貴方は・・・いいえ、雪殿は初めからこのようにするつもりだったのですか?」



「いいえ。先程も言ったとおりこれは私の気まぐれです。ギルベルト殿の言葉を聞きとても驚きましたからね。人のために自分を犠牲にする人など中々おりません。だからこそ今回の事は私も驚いているんです。貴方がそのような人には見えなかったものですから」



「そうですか。では、今回の件はこれで帳消しということでよろしいのでしょうか?」



「ええ、そういうことになりますね」


彼女は俺が分からなかったことを教えてくれた。


そして、俺は彼女にとても感謝した。正直死ぬのはとても怖かった。今でも恐怖で体が震えてるぐらいだ。



玄関ホールがザワザワし出して彼女達が居たところを見るともう出ていくところだった。


思わず俺は叫んでしまった。


「待ってくれ!!」



「どちらに行かれるのですか!?今回の件は帳消しじゃ・・・」



「ええ、だから魔物や魔獣を倒しに行くのですよ?元々その依頼でここには来ていたのですから」



その言葉を聞いてまた安心した。だって、黒国に報告しに行くのかと思ってしまったから。


彼女の言葉を信頼していないわけではないがそれ程に不安だったのだ。


「呼び止めてすまなかった」


俺はすぐにそう言って詫びた。


しばらく歩いて彼女はあぁ、そうそうといったようにこちらを振り向いて「あと髪切っちゃいましたけど、長い髪より短い髪の方が個人的には好きですよ」と言ってきた。



・・・っな!?っすっ好きだって!?



何を言っているんだアイツは!?軽々しく男に好きだなどと!あぁ、待て待て、あいつが好きと言ったのはこの髪型ということじゃないのか!?ああ!!そうだった。勘違いするな自分!!


冷静になったところで周りを見てみると皆惚けたように彼等の去っていく様子を見ていた。特にシェリーは凄く熱を帯びたような憧れの視線を発していた。


あぁ、冷静になって思い出したが、途中第一人称が普段使っているものに変わってしまったな。時期国王だから偉そうに見せなければと思って無理をしてきたが・・・、まあ・・・、バレているだろうな・・・。


では、ここで待つとしよう。彼等の帰還を願って。

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