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ストック切れました
「皆様、もういらっしゃたのですね。もう少し遅くなると思っていたのですが・・・」
私が王子様達の方に皮肉を言うとキラキラジャガ芋君の眉がピクッと動いた気がした。
これぐらいの事で表情を出すだなんてまだまだだね。それじゃあ社会には通用しないよ。王様になってもきっと使い捨てのようにされるんだろうな~。あ~あ、可哀想な人。まあ、今殺すから関係ないか。
「まあ、早く要件を伺いましょうか。貴方がたは何を言いにここにいらっしゃるのですか?何か言うことがあるのでしょう?」
「・・・こ度は、誠に申し訳ないと思っておる。そなた等を知らずとはいえ侮辱の言葉を言って傷付けたこと、本当に申し訳ない」
・・・・・・・・・うん?あれま?思っていたより素直に頭下げたなおい!私としては頭をなかなか下げないキラキラジャガ芋のイターイ過去とかを掘り出して恥ずかしい思いをさせてやっと謝ってくれたよ!!的な展開を望んでたんだけどな~。
「出来ることならば、今回の件我の命だけで穏便に済ませていただきたい。」
うん?何か物騒な言葉が聞こえたんだけど・・・。
「我の命だけで足りぬのなら何か好きなものをそなた等に渡そう。だからどうか民の命は取らないで欲しい」
「・・・ッアッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
なに!!このキラキラジャガ芋もといギル君!!めっちゃ面白い!!今までこんな事言う人なんて見たことない!!民のために自分の命を投げ出すだなんて!!ほら後ろ王様たちもすっごいビックリしてたじゃん!!口ポカーンと開けてさ!!ヤバイ!!ツボに入った!!
笑いながらも周りを見てみると龍騎と火蓮もポカーンとした顔でこちらを見ていた。まあ、家族の前ではこんなに大爆笑したことなんて無かったから当たり前だろう。私も自分がこんなに大爆笑したのは高校生以来なのだからとてもビックリした。
目の前のギル君も急に私が大声で笑い出したからとてもビックリしていた。あと何故笑われているのか分からないようで不愉快そうだった。
「ッハ~。思いっきり笑ってしまいましたね。失礼。そんなに愉快なことを言う人が本当に居るだなんて思いもしなかったので・・・ップ。だって自分を犠牲にしてとか・・・ップ」
また私は肩を振るわれて笑ってしまった。
「笑っていないで殺るならば早く殺ってください」
ギル君が痺れを切らしたように早くしろと言ってきた。
うん、もうちょい待って。もうすぐ落ち着くから。
「ええ、では始めま・・・」
「ちょっと待ってください!!兄様を殺すのではなく殺すのでしたら私を殺してください!!」
「兄様待ってください!!兄様達が殺されるぐらいなら私が死にますわ!!」
「お前ら・・・」
えっと・・・。ちょっと待って。なにギル君涙ぐんでんの!?何こっち無視して兄弟の絆刻んじゃてんの!?こう云うときは美しき兄弟愛とでも言うのだろうけどね。はっきり言おう、邪魔だ!!
「残念ですがそれは出来かねます。今回の件に関しまして釣り合いが取れると思われるのは現国王のアレクサンド様か、時代国王となられるであろう第一子のギルベルト殿の命しかございません。ですので一つの命となりますと貴方がたでは役不足なのですよ」
突き放すようにこういったら凄く二人に睨まれた。まあ、当然でしょうね。
「では、一瞬で終わらせてあげましょう」
シュッ暫く経っても何も起こらなかった。いや、正確には起こったのだが・・・。
「はい、終わりましたよ。ではこれにてお開きにしましょうか」
「待て!!俺は死んでないではないか!!どうゆうことだ!!」
「いいえ、貴方は一度死にました。これがその証拠です」
私は彼の伸ばしていたはずの長い髪を手に握り締めていた。え?どうやって切ったかって?そりゃあ糸でちょちょいとね。
それを見た瞬間彼は一瞬驚きそして何故?といった表情になった。
だから私は説明してやった。私が選んだ事の答えを。
「この髪は今までの貴方です。ギルベルト殿。今までの貴方は死にました。貴方は今一度生まれ変わりました。今回の件は貴方だけが悪いというわけではありませんしね。それに今の答えを聞いて貴方に少し賭けてみたい気になったのですよ。ですから、今までの帝国にしがみついて我侭を言っている貴方を殺してこれからの貴方を生かしてみようと思ったのです。単なる私の気まぐれですがね」
「貴方は・・・いいえ、雪殿は初めからこのようにするつもりだったのですか?」
「いいえ。先程も言ったとおりこれは私の気まぐれです。ギルベルト殿の言葉を聞きとても驚きましたからね。人のために自分を犠牲にする人など中々おりません。だからこそ今回の事は私も驚いているんです。貴方がそのような人には見えなかったものですから」
「そうですか。では、今回の件はこれで帳消しということでよろしいのでしょうか?」
「ええ、そういうことになりますね」
その言葉を聞いた瞬間帝国の人達が安堵の表情をしていた。
そうでしょうね。なんせ、私の気まぐれがなかったら一国の時代国王が殺されていたかもしれないからね。
龍騎と火蓮が心配そうに近ずいて聞いてきた。
「良かったのか雪?」
「そうよ。雪ちゃんが良いなら私達は別に構わないけど・・・」
「はい、良いですよ。面白ものが見れましたし」
そう言った私はそれじゃあ行きましょうかと言って龍騎と火蓮と一緒に玄関ホールから立ち去ろうとした。するとギル君が「待ってくれ!!」と叫んだ。
「どちらに行かれるのですか!?今回の件は帳消しじゃ・・・」
「ええ、だから魔物や魔獣を倒しに行くのですよ?元々その依頼でここには来ていたのですから」
それを聞いて納得したのか「呼び止めてすまなかった」と言って見送ってくれるようだった。
見送りなんて要らないんだけどな~。ああ!!忘れるとこだった!!髪を切っちゃったんだからフォローしとかないとね。
くるっと振り向いて「あと髪切っちゃいましたけど、長い髪より短い髪の方が個人的には好きですよ」と微笑みながら言ったところ、なにやらギル君の顔が赤くなり「・・・すっす」とか聞こえた。
嘘だとか思われているのだろうか。本当の事を言っただけなのに・・・。それになにやら龍騎は面白くなさそうな顔をしており、火蓮はニヤニヤしていた。一体どうしたのだろう。
玄関ホールから出ていった雪を見てその場にいた帝国の人々は皆『・・・カッコイイ!!』と思ったのは言うまでもなく。そのあと雪が任務から帰ってきた時にはファンクラブが出来ていたのはまた別の話。
主人公がどんどん変人になっていく~。
ギル君も変人に~。
もうここまで来たら皆変人で良くない?
雪は凄いカリスマ性の持ち主です。
あと思ったのですが、中身と外見の口調が全然違うっていう。
ファンクラブはちょっとしたら出てきます。
ギル君もこれにて逆ハーレム要因の一員ですね。