愚かなる宣告と因果応報
とある王国。魔法学園の卒業パーティー。シャンデリアが煌びやかに輝く中、王太子ノクタスが叫ぶ。
「セレスティーヌ! リーシャへの数々の嫌がらせ、もはや看過できん! 貴様との婚約を破棄する!」
隣に寄り添う平民の特待生であるリーシャに対し、セレスティーヌは扇を広げて優雅に、かつ冷酷に言い放つ。
「お黙りなさい、この婚約は王家と我が公爵家の血を混ぜ、強固な魔力を次代に遺すための国家プロジェクト。貴方の意志など塵ほどの価値もありません。ましてや、どこの馬の骨とも知れぬ平民の血を混ぜるなど……おぞましい、生理的に受け付けませんわ」
高貴な血は、すなわち高い魔力。王族と公爵家、国内トップ2の家同士が交わり、優秀な遺伝子を遺す事は理に叶っていた。
「それから、私はその娘を虐めてなどいません。なぜなら、公爵家にとって平民など道端の石。消そうと思えば魔法で存在ごと消せますもの。わざわざ嫌がらせをする手間が惜しいだけですわ」
傲慢。しかし、純然たる事実をセレスティーヌは言い放つ。貴族が消そうと思えば、平民等は存在ごと消せる。いつの世も変わらない、当たり前の事なのである。
昔からのおとぎ話、平民の少年や少女が活躍する物語は時代の流れと共に廃れて行った。
平民はただの働きアリでしかないのだから。
主役になどなれないのだ。だからそんなものは必要ない。
勝ち誇るセレスティーヌに、リーシャがポツリと一言。
「…···少しは餅付け。 必死すぎて虐めましたって言ってるようなモンだぞ」
「なんですって!? 貴様のような下賤な存在に発言を許可しておりませんわ!」
セレスティーヌは毅然と声をあげる。虫ケラの平民風情が貴族に話しかけて良いはずが無いのだ。
「お前に許可して貰う必要が無い」
「平民が口を開くなぁ!」
「ええい! 先程からの聞くに耐えん言葉! 恥を知れい! この女を捕らえよ!」
ノクタスはリーシャへの侮辱を止めないセレスティーヌに怒り、彼女を捕らえるように兵達に命を下す。
「そこまでだ!」
響く轟音。観衆を掻き分け割って入ったのは、魔法学園に留学している大帝国の皇子アルワデーラであった。
「汚れなきセレスティーヌを、こんな野蛮な国には置いておけない。私が君を妻として迎えよう。······受け入れてくれるね?セレスティーヌ?」
「はい······勿論ですわ······!」
まさかの大逆プロポーズに会場からは割れんばかりの祝福の拍手と歓声が巻き起こる。
最近、流行している令嬢が平民の女に婚約者を奪われたものの、格上のスパダリに見初められる小説と同じ展開が見られるとは、誰も予想だにしていなかったであろう。
「さて、セレスティーヌを傷つけた報いは受けて貰うぞ。貴様のような男が王になるなど私は断じて認めんし、諸国も同じだろう」
ノクタスは事実上の廃嫡を言い渡される。帝国の影響力は絶大だ。賢明な国王なら、帝国に目を付けられた愚か者を後継ぎにはしないだろう。
「そこの平民の女もただで済むと思うなよ? セレスティーヌの苦しみ······倍にして味わわせてやる」
アルワデーラはリーシャも見逃すつもりは無い。帝国の平民への不敬に対する罰は王国よりも遥かに過激だ。
「待ってくれ! 悪いのは僕だ!僕の命は差し出すから、リーシャだけは助けてくれ!」
しかしアルワデーラは鼻で笑う。
「ふんっ! 聞く耳持たんな! 行こう、愛しき人よ」
セレスティーヌは満足げに微笑む。
「さようなら、ノクタス殿下とリーシャさん? 地獄でどうぞ、お幸せに───」
砂時計はもう元には戻らないのだ。
ざまぁ·······完遂·····!!
あれ?




