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アピールポイント:トカゲに見えますが、実はドラゴンの生き残りで、人間にもなれます。  作者: 四馬㋟


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第七話

 

 

 思いがけない提案に私はポカンとしていました。


 ヨルンに必要なのは人間の友達で、巨大な爬虫類ではありません。

 爬虫類――ペットを友達扱いするのなら、すでにたくさんいます。


「だが君はただのドラゴンではない。不思議なことに、君の思考や言動は明らかに人間よりじゃ。何か秘密があるのだろう?」



 やはり見透かされていたようです。

 ドラゴンの友人がいると言っていたので、そのせいもあるのでしょう。


 隠すようなことでもないので、私は正直に前世の記憶――かつては別世界の人間だったことを彼に打ち明けました。

 信じてくれるかはまた別の話ですが、


「にわかには信じられんが、面白い話じゃ。これで諸々の説明がつく」


 結果は半信半疑といったところでしょうか。

 

「仮に君の話が事実なら、君はドラゴンの肉体を持って生まれた人間ということになる」


 なんだか話がややこしくなりそうで、不安になってきました。

 

「難しく考える必要はない。ただ君以上に、ヨルンの友人にふさわしい者はいないと言いたいだけじゃよ」


 心は人間でも、身体はドラゴンです。

 いくらヨルンがドラゴン語をマスターしたとしても、友達になるのは難しいでしょう。


「では、人間の姿になってみるかね?」

「ギャっ? (できるんですか?)」

「わしを誰だと思っている? 魔術師協会の会長にして、この国一番の魔術師ワイス・アイン・ロックウェルとはわしのことじゃ」


 高名な人物だとは聞いていましたが、まさかそんな有名人がヨルンの家庭教師――この場合は師匠と呼ぶべきでしょうか――だったなんて。今さらながら、ヨルン父の財力と人脈には頭が下がります。



「で、どうする?」



 また人間の姿に戻れると思うと、正直ワクワクしました。


 空を飛んだり、四足歩行で動き回るのも嫌いではありませんが、人間になれば、二足歩行で飛んだり跳ねたりできるし、また塩気の強い人間食を味わうことができます。ハンバーガーにピザ、ホットドッグにナポリタン――そういえば、この世界にはどれも存在していませんでした。がっかり。


 ヨルンの友達云々はさておき、とりあえず試してみたいと言うと、ワイスさんは快く承諾してくれました。

 慣れた仕草で杖を取り出し、先のとがった方を私に向けます。



「では早速……」



 何やら小難しい呪文をブツブツと唱え始めました。どうやら難しい魔法らしく、長くなりそうです。

 と思いきや、ワイスさんは途中で呪文を唱えるのをやめてしまいました。


 なぜなら、

 

「イオっ、そんなところにいたのか。部屋にいないからあちこち捜したんだよ」


 ヨルンが駆け寄ってきて、私とワイスさんのあいだに割り込んできたからです。

 成長するにつれて感情をあまり表に出さなくなったヨルンですが、今は珍しく怒っていました。


「これはどういうことですか、先生」

「落ち着きなさい、ヨルン。ただ単にイオくんと立ち話していただけじゃよ」


 いつの間にか、ワイスさんの手にあった杖が消えています。

 ヨルンに気づかれる前に隠したのでしょう。


「イオは僕のドラゴンです。勝手に話しかけないでください」

「そのものの言い方は心外じゃな。わしに相談を持ちかけてきたのはイオくんのほうだよ」


 えっ、とショックを受けたようにヨルンが私のほうを見ました。


「相談って……」

「それは教えられんよ。わしとイオくん、二人だけの秘密じゃからの」


 確かに本人を前にして、友達云々の話はできません。


 ヨルンの表情が徐々に暗くなってきました。

 私はどうしていいのか分からず、オロオロと二人の顔を交互に見ます。


「気になるのならイオくんに訊きなさい。課外授業として、わしがこの場で通訳してやってもかまわんが……」

「いいえ、結構です」

 

 ヨルンは悔しそうにワイスさんを見ると、きっぱりと言いました。

 

「僕は僕の言葉でイオと会話します。通訳だと細かいニュアンスまでは分からないので」

「ほっほっほ、一体何年かかることやら……」


 ワイスさんが立ち去ると、ヨルンは私の顔をガシッと掴んで言いました。


「いいかい、イオ。簡単に人を信じてはダメだ。ワイス先生は魔術界において権威ある人物だし、魔術師としても教師としても評判は高い、ただ、ドラゴンに目がないんだよ。噂じゃ、自宅にドラゴンのはく製を飾っているそうだ」


 はく製と聞いて怯える私に、ヨルンは続けます。


「本当は君のこと、先生には隠しておきたかったんだけど、父上が話してしまったんだ。父上は先生のことを信頼しておいでだから……けれど僕は、なるべく君を先生に近づけたくない――君を先生にとられそうで怖いんだよ」


 なるほど、それでワイスさんは私の名前を知っていたのですね。


「僕がドラゴン語をマスターするまで先生を解雇することはできないけど、先生が来ているあいだ、君には隠れていて欲しい。できるよね?」


 ペットであれば、飼い主の言うことを素直にきくべきなのでしょう。

 ですが私には、ワイスさんがドラゴンを捕らえてはく製にするような人間には見えませんでした。


「イオ、君の悩みは僕が必ず解決する。約束するから、先生には二度と近づかないで」


 それはできない相談です。

 なぜなら私の悩みは、ヨルンには解決することができないと分かっているからです。


 数日後、私はヨルンの目を盗んで、再び屋敷を訪れたワイスさんに会いに行きました。

 

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