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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第一章 御使いガールズの誕生

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天使たちのテーマパーク大暴走 ~塵の金色パーティー~

世界が崩れても、天使たちは笑う。

テーマパークで繰り広げられる、塵まみれの青春と暴走。

これは、終末の中の“金色のパーティー”。

「もう、いいじゃん。自由にやれってことでしょ」

紗耶香がぼそりと言った。


ガウの指示が途切れ、彼女たちは半ば地上に放棄されたのだ。


「でも、世界が大変なことになるって言ってたし……」

恵はドリンクのストローをいじりながら、不安げに呟く。


――頭上では、黒い塵がパラパラと降り注いでいた。


「全部あの男が勝手にやったことじゃん。私たちも被害者だよ」


「でも……」


「じゃあ、志津香と合流するまでさ、私たちもフリーで動こうよ」


紗耶香が笑えば、恵もつられて肩をすくめる。


「コンビニでお菓子買って、カラオケ行こう!」


「私、テーマパーク行きたい!」


夏樹が目を輝かせ、

買ったばかりのねずみ耳カチューシャをピョコンと揺らした。


「あ、それいい」「行こ行こ」


街中だと、光輪や翼が見える人が出る。

だがテーマパークなら――“演出”で押し通せるかもしれない。


「天使の翼、アトラクションのエフェクトみたいに見えるかも!」

恵が笑いながら言った。


その日の空気は、“平和”というより“忘却の風”のようにぬるかった。


冷たいドリンクを片手に歩く三人は、人類の未来よりも、

次のプリクラ機の空きを気にするような気楽さだった。


* * *


「ちょっと! なんでビッグサンダーもスプラッシュも止まってんの!」


紗耶香がしびれを切らすと、

恵がスマホをちらっと見て肩をすくめる。


「塵のせいで安全点検できないって。まぁ、そりゃそうだよね」


「でも屋内施設まで全部停止はやりすぎじゃない?」


「全部じゃないよ。ダンスとかはやってるみたい」


「ほら、あれ」


恵が指差した先では、パレード用の広場でパフォーマーたちが踊っていた。

降りしきる塵をものともせず笑うその姿は、美しく、どこか痛々しい。


――空がかすかに明滅し、黒い塵に金色の粒子が混じり始めていた。


「あれ……希望の欠片? ただの光の反射?」


夏樹が小声で呟く。


「今さ、こうやって普通っぽくしてる方が安心なんだよ。たぶん」

紗耶香がストローを噛みながら言う。


「パフォーマー見てよ。

『塵なんか関係ねー!』って感じでカッコいいじゃん」


「私たちも、行けるうちに楽しも」

「明日どうなるかもわかんないしね」


恵は塵の隙間から青い空を見上げた。

金色の粒子が、かすかにきらめく。


巨大な砂時計は、いまも淡々と砂を落としている。


「ほんと……どうでもよくなるよね、いろいろ」


「でもさ」

夏樹がふわっと笑う。


「こうやってお菓子食べて歩いてると、やっぱ楽しいじゃん」


三人は顔を見合わせ、くだらない理由で笑い合った。

天使の翼が陽光に透けて虹色に光る。


夏樹は大きなねずみの耳のカチューシャを付け、

恵は赤いリボンのついたサングラスをかけている。


紗耶香は人魚のロゴが入ったつば付きの帽子をかぶり、

ねずみの肩掛けバッグにぬいぐるみを沢山詰め込んでいた。


「私、ここに来たの始めて!」

夏樹が笑いながら耳を揺らす。


「あっ、そこテレビ局来てるよ」


「暇だねー。他にやることいっぱいあるでしょ」



テレビ中継に気を取られていると、

正面から歩いてきた男に恵が胸を鷲掴みにされた。


「いって」


恵が手を振り払って睨みつける。

サングラスがずり落ち、鋭い視線が男を射抜く。


「このっ!」


紗耶香が即座に回し蹴り。

男は派手に吹き飛ばされた。


地面に転がり、塵を巻き上げて咳き込む。


「いいじゃねぇか。どうせもうお終いなんだ。

最後にちょっとくらいいい思いさせてくれよ」


男は顔を腫らしながらも呟いた。


「何であなたの『いい思い』に私が付き合わなくちゃいけないのよ」

恵が吐き捨てるように。


その瞬間、紗耶香の顔つきが変わる。

どこか、戦場で悪魔を捻じ伏せる時の顔だった。


「ああ、そうだ」


唇の端を吊り上げて、紗耶香は悪い顔をした。

瞳に悪戯の炎が灯る。


「私達も『いい思い』したいから、あなたのお財布ちょうだいよ」


「ふざけんな」


紗耶香は男の胸倉を掴んだ。


「私達は優しいからそれで許してやろうって言ってんの」


ぎりぎりと締め上げると、男のポケットから財布がでてきた。


周囲の人々は見て見ぬふりをする者もいれば、

スマートフォンでこそこそ撮る者も――たくさんいた。


「なんか、すごいなぁ(憧れはしない)」

夏樹は微笑ましく眺めていた。


「夏樹は変なとこ真面目だよね。普段ぶっ飛んでるくせに」


「ねぇ、スマホにもお金入れてるんじゃん?」


「鬼だな」

「天使だよ」


「ほら、ID送りな」


「こんな可愛い娘とID交換できるなんて、ラッキーじゃん」


「あとで家も教えてね」


「もうお終いだったら私達が有効利用してあげるから」


「私こういうお金貢いでくれる優しい男、好きなンだわ」


「無駄に行動力だけある男は使いやすい」


「言いたい放題だな!」

男が首元を押さえてせき込みながら、思わず突っ込む。


その瞬間、テーマパークのスピーカーから

再び明るい音楽が流れだした。


どこか空虚なそれは、まるで既にいない

客のために鳴らしているような響きだった。


先程のテレビ局が騒ぎを聞きつけ、

カメラを回しながらこちらに向かってくる。


「ヤバ、カメラ来た」

恵が苦笑いしてサングラスをかけ直す。


その隙をついて、男は紗耶香の肩を突き飛ばし、

よろめいた隙に身を翻して駆け出した。


――財布を握りしめ、塵の渦を掻き分けて逃げる影。


「あっ、逃げた」


「一旦放し飼いだね」


「……ま、いいや」


紗耶香は笑って帽子を深くかぶる。

金色の粒子が、彼女の肩に優しく舞い落ちる


――まるで、今日の小さな勝利を祝福するように。


天使たちの“どうでもよさ”と“楽しさ”が、

新たな物語を生み出していきます。


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