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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第一章 御使いガールズの誕生

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神の賭け ~塵の青、残る希望~

神と人の境界で揺れる、ひとつの選択。

佐和子は、塵に覆われゆく星に希望を託す。

「この惑星をどうされるおつもりですか?


佐和子は、ガウの沈黙が一瞬ほどけた隙を逃さず、声を発した。

その言葉は、虚空に浮かぶふたりの間に、静かな緊張を走らせた。


本当はもっと時間を置きたかったが、

致命的に事態が動いてしまう可能性があったのだ。


――ガウの腕に抱かれたまま、彼女は眼下の地球を見つめた。

青い大気が、ゆっくりと灰色の塵に飲み込まれていく。

まるで息絶える惑星の最期の吐息のように。


「私を信仰する人々は救済する。

その為に看護師天使を育てた」


ガウは佐和子を抱えたまま地球外まで突破した。

青い大気が少しずつ塵におおわれていく様が観察できる。

星の輪郭がぼやけ、静かな悲鳴を上げるように揺らめく。


「砂時計は放っておいてもドリップの配下が

 何とか主を助けようとするだろう。


それに――」

ガウは佐和子の視線にぴたりと合わせてつぶやいた。


「私に対する信仰がもっとあれば、

ドリップなど宇宙に追放出来た」


冷酷でも激情でもない。

ただ“計算”として紡がれる言葉。


「つまり、この惑星に対する選択は、もう終わっている」


その言葉は、静かに、しかし確実に佐和子の胸を貫いた。

彼女の指先が、無意識にガウの腕を掴む


――その冷たい感触が、星の運命を思い起こさせる。


大気圏の外――ゆらぎながら地表を覆っていく塵を眼下に見下ろしながら、

ガウの表情に迷いはなかった。

だが、迷いがなかったこと自体が最も深い哀しみだった。


佐和子はわずかに眉をひそめた。


「それは……この星が、

あなたの信仰を勝ち取れなかったという意味ですか」


その問いには怒りも咎めもなかった。

ただ、“確認”と呼ばざるを得ない静かな問い。


ガウはふと目を閉じ、重力のない宙に揺らぎながら答えた。


「この星の民が“私に祈らなかった自由”を選んだのなら」


「……残酷ですね」

佐和子の声が、わずかに震える。


「だが、“慈悲”と呼ばれる曖昧さよりは正確だろう」


佐和子は口を閉ざした。

だが、彼女の瞳はまだ、塵に染まりきらない青を見ていた。

――それは、失われゆく故郷の、かすかな抵抗のように。


「彼女たちの手に負えなければどうします?」


「それならば私に報告が来るだろう」


あの三人がそんな真面目に任務に就くとは思えない。

佐和子の想像に小さな苦笑が浮かび、すぐ霧散する。


ただ、胸の奥にひとつの棘が残る。


塵に覆われつつある青い星。

その色はもう間もなく見えなくなるだろう。


ガウの腕の中に抱かれたまま、佐和子は静かに息を吐いた。


「……でも、私はまだ、あの子たちに賭けます」

――その言葉に、彼女の瞳がわずかに輝く。


そう呟くと、ガウは応えず、目を伏せた。

だが、その睫毛の影が一瞬揺れたのを佐和子は見逃さない。


「あなたにとっては、それも計算の内でしょうけど」


その言葉に、ガウはふと微笑んだ。

それは人のものとは異なる、

絶対者の余裕と冷ややかさが滲む微笑みだった。


「計算は常にする。それが神の役目だ」

ガウの声は冷静だった。


祈りとは、感情ではなく選択の集積。

彼にとって信仰とは、確率と意志の交差点。


淡々と告げるその声に、佐和子は再び口を閉ざした。

だが、瞳の奥ではまだ、完全に塵に染まりきらない青を探している。


そしてガウは、ふと目を細める。


掌の中の佐和子の体温と、

その瞳に宿る僅かな希望の揺らぎを感じ取ると、

ほんのわずかに息を吐いた。


――彼の指が、佐和子の背に優しく触れる。

神の肌に、初めての温もりが染み込む瞬間。


「……だが、そういう賭けが、この世界には必要かもしれんな」


その小さな呟きは、塵の満ちた虚空に吸い込まれて消えた。


けれど佐和子には、はっきりとそれが届いていた。


計算の外に、生まれつつある揺らぎ。

それは、神が初めて触れた「願いの領域」だった。


佐和子は、ひとり空を仰ぐ。

地上には、まだ戻るべき声が残っていると信じて。


――青の欠片が、星の彼方で再び灯る日を、祈りながら。

それは、神の計算を越えて届く、ひとつの“人の願い”だった。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

“計算の内に芽生える想定外の揺らぎ”

を感じていただけたなら嬉しいです。


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