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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第二章 マクタン島 カジノ神殿ラピス・レクイエム編

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紗耶香の堕天独白と異形楽園の誕生

奇跡の直後、物語は静かな分岐点へ踏み込みます。

救われた世界の裏側で、紗耶香が選んだ拒絶と新たな願い。

天界の砂時計が砕け散った瞬間、

それは衝撃としてではなく


――呼吸のように地上へ届いた。


風でも雷でもない。

解放された祈りが、

世界そのものを一度、深く吸い込ませたのだ。


ホール全体がわずかに震え、

観客の肌を、優しい波が撫でていく。

ざわめきは起こらず、

代わりに息をのむような静寂が広がった。


「……やりやがったな」


バルナバーシュが低く息を吐く。

琥珀酒の残り香が、スクリーンの光に溶ける。


天界を映していた映像は、白い光に満たされ、


やがて何も映さなくなった。


「観測データが消失……!」

「霊脈、全域で反転……世界律が――」


アバとケイトの声が重なる。


ミリアムは無言でスクリーンに近づき、

塵の残滓を見つめた。


祈りの余波が、瞳に映り込み、

安堵の吐息を漏らす。


だが――


最初の拒絶〈断罪の翼〉


崩れかけた神殿跡。

神力と魔力が溶け合い、

空がひび割れかけた空間に、紗耶香は浮かんでいた。


背には、白と黒の光翼。

そのどちらも、かつての純白ではない。


頬には、まだ涙の跡が残っている。


「紗耶香っ、戻ってきて!」


恵の声が届いた瞬間、

紗耶香の表情が、わずかに揺れた。


「見てわかるでしょ

 ……恵ちゃんは、優しすぎるの」


声は震え、けれど拒む意志ははっきりしている。


「だから……来ないで」


反射的に解き放たれた魔力が、空間を裂いた。

白と黒の衝撃波がうねり、恵を飲み込む。


岩壁に叩きつけられ、恵の身体が崩れ落ちる。

夏樹が駆け出そうとするが、結界が発動し、弾いた。


結界越しに、紗耶香の涙が一滴、

地に落ち――蒸発する。


攻撃は、恵を狙ったものではない。

ただ、神聖に触れられなかった。


その想いだけが、空間に残響した。


光と闇の翼を背負ったまま、

紗耶香は神殿跡の中央に静止する。


血を吐く恵を、夏樹がかばうように立つ。

翔の叫びも、届かない。


「力ずくで連れていくわよ」

夏樹はハンマーを構えた。翼が回転を始め、

辺りの魔素を中和し始める。


紗耶香も夏樹を見据え、魔弓を構えた。


「無理よ、夏樹」


声は冷静で、どこか優しい。


「魔王アイムの魔核を取り込んだ私には

 ……あなたじゃ勝てない」


紫黒の稲妻が弓に灯り――放たれる。


「《シールド・バッシュ》」

夏樹が盾をかざすが、

魔矢はまったく別の角度から夏樹を貫いた。


「《螺旋演霧・無幻(らせんえんぶ・むげん)

 あなたの触れた魔矢は実体を無くし、幻想の矢は

 あなたを貫く」


 黒い雷撃に呑まれ、夏樹が倒れた。


(……後は、頼んだわよ。リーダー)


その囁きは、夏樹の胸だけに届く。


テレノアは神力を使い果たしながら、

恵と夏樹を抱き寄せ、翼を広げた。


「今は……退く。必ず、取り戻す」


燃え尽きかけた翼で、彼は空を裂く。


「負けるな、紗耶香ぁっ……!」


恵の叫びが背に飛ぶ。


だが、紗耶香は振り返らない。

黒い光に包まれ、静かに姿を消した。


異変


その直後、空間に歪みが走った。


淡く、禍々しい紫の霧が地を這い、

人型でも獣でもない影を連れてくる。


観客席に悲鳴と、熱狂にも似たざわめきが起こる。


「……来やがったか」


バルナバーシュがモニターを睨む。


「新世界の“眷属”どもか」


即座に指示が飛ぶ。


「中継は切れ。観客音声のみ拾え。

これはショーじゃねぇ――信仰操作戦争だ」


異形の楽園、胎動


天と地の境界が曖昧になる空間。


その中心に、少女が立っていた。


煤けた黄金の翼。

背から伸びる触手めいた神光。


紗耶香は、微笑んでいる。


苦しみも、後悔もない。

ただ、静かな覚悟だけが宿っていた。


異形たちが集う。

四つ足の巨影、無数の眼を持つ存在、


終末世界の怪物に破れ、神格を剥奪された

かつてのSR看護師天使たち。


彼らは主の前に跪く。


いつの間にか、百を超える眷属が円を成した。


低い祈りが重なり、大地がわずかに震える。

紋章の線が、地面に刻まれ始める。


「……魔核を飲み込めば、魔王になる。

 そういうことか」


紗耶香は鏡を見る。


金の瞳。角。ねじれた指先。

自分の変化を、静かに受け入れる。


「ここに、新世界をつくる」


声は穏やかだ。


「終末の魔物も、魔族も、生きていける場所を。

私が……みんなの出来なかったことを、やる」


わずかに唇が緩む。


「今なら、祈りに寄り添える気がするから」


眷属たちが一斉に祈りを捧げた。


その瞬間、

魔核、神力、信仰が交わり、

新たな理が芽吹く。


紋章が脈動し、星辰が回転を始める。


紗耶香の瞳に、

優しい闇に包まれた楽園の影が映っていた。


異形の眷属たちが、紗耶香の消えた方向へ、

ぬらり、ぬらりと進んでいく。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

プロット構成の為、一度更新停止させていただきます。


次章では、異形の楽園が動き出します。

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