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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第二章 マクタン島 カジノ神殿ラピス・レクイエム編

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御使いガールズ撮影NG祭~推しが責任になった日~

御使いガールズとカメラマン翔の、

少し騒がしくて、少し甘い撮影日の一幕です。

「はい、紗弥香さん、恵さん、

そのまま頬をくっつけてください。


手はこう、絡ませて、頭の上に――はい、いいです」


翔はファインダー越しに三人を見つめ、

満足そうにシャッターを切った。


「御使いガール感、ちゃんと出てます。

 この一枚、かなりいいですよ」


「……ちょっと待って。

 私、センターなんだけど?」


 夏樹がむくれた声を上げ、

 頬を膨らませながら翼をぴくりと震わせた。


「いや、すいません。

 必要不可欠なメンバーなのは間違いないんですけど」


「けど?」


「俺の推し枠とは違うんで」


「はっきり言ったな!」


「でも宣材写真は、

 バランスが命ですから」


 翔は悪びれた様子もなく、

 次のカットの指示を出す。


 その横顔を見ながら、

 彼は心のどこかで思っていた。


 ――軽い気持ちで引き受けた仕事だったはずなのに。

 ――いつの間にか、失敗できない気がしている。


「じゃあ、いきますよ。

 3、2――」


「待って、恵。

 髪が口に入って……もがっ、ごほっ」


「ご、ごめん!風で飛んだ!」


──撮影中断。


 スタッフが慌ててティッシュを差し出し、

 恵が咳き込みながら何度も頭を下げる。


「紗弥香さん、ちょっと表情かたいです」


「笑顔、笑顔……って、

 夏樹が変な顔してるー!」


「してないっ!」


──撮影中断。


 夏樹が鏡を覗き込み、

 舌を出して真剣にチェックする。


「もう一度、

 頬を寄せてもらえますか」


「……鼻が当たってくすぐったい……ぷふっ」


「こら、動かないで。

 笑いがうつるってば!」


 ──撮影中断。

 カメラマン本人も笑ってNG。


 三人が揃って肩を震わせ、

 翔は無言でリセットボタンを連打した。


「はい、次はジャンプカットです。

 タイミング合わせて――せーのっ!」


「……ぬ、抜けない!」


「スカート引っかかってるよ!」


 ──ジャンプ失敗。

 衣装スタッフが慌てて駆け寄る。


 スカートを押さえる夏樹と、

 とっさにポーズを決める恵。


「翔くん、

 これ……何に使うつもりなの?」


「特典ブックレットの裏ページです」


「即答しないでぇー!」


 紗弥香が指鉄砲でカメラを狙い、

 翔は笑いながら身をかわした。


 撮影の合間。

控室の長テーブルで、夏樹がぽつりと尋ねる。


「……本当に、

 御使いガールズってバズってるの?」


 翔は資料をめくり、

 一度だけ深く息を吐いた。


「はい。

 もう、世間では定着してます」


「今さら変えたら、

 公式が迷走してるって言われます」


「でもさ……

 もっとカッコいい名前とか、ない?」


「聖光フロントラインとか」


「ダサ……

 いえ、すいません。今のは忘れてください」


「あーあ、やる気なくなっちゃうなぁ」


 翔は一息ついて立ち上がり、

 ホワイトボードに一行を書いた。


 御使いガール──世界に、光が舞い戻る。


 ペンの音が控室に響き、

 粒子のような光が文字に反射する。


「……これが、

 キャッチコピーです」


 一瞬の沈黙。


 最初に拍手したのは、恵だった。


「なんか……いいね。

 希望って感じがする」


「語感もいいし」


 紗弥香も、柔らかく微笑んだ。


「そっか。

 じゃあ、御使いガールズで」


「私たちの名前だね」


 夏樹が少し照れたように言い、

 翼を軽く広げて光を浴びる。


(機嫌なおったぜ)

 翔は小さくガッツポーズをしてから、

 再びカメラを構えた。


「じゃあ、

 次のカット、いきましょう」


 レンズが光の粒子を捉え、

 三人の笑顔をフレームに収める。


 ──夕陽が控室に差し込み、

 翔の影を長く伸ばした。


「テーマパークで襲ってきた時と、

 ずいぶん変わったわね、


 その話し方、慣れてないんじゃない?」


 紗弥香が、少しだけ茶化す。


「……あの時は、どうかしてました」


「一発もらって、目が覚めましたから」


「まだ、恵が好きなの?」


 不意の問いに、翔は言葉を失う。


 目を泳がせ、それでも――

 正直に答えた。


「……いえ。

 今は、紗弥香さんの方がって、

 俺、何言って……!」


 夕陽が沈みきる、その直前。


 翔は、シャッターを切ることを忘れていた。


 紗弥香が一歩近づき、

 静かに息を吸う。


「……さっきの撮影、

 ちゃんと向き合ってくれてたから」


 それだけを残し、

 彼女は少し距離を取った。


 胸の奥に残ったのは、

 触れたかどうかも分からない余韻だけだった。


 翔は深く頭を下げる。


「期待されるって、

 こういうことなんですね」


 光の中で笑う彼女を見て、

 彼はようやく理解した。


 これは、

 軽い憧れでは済まされない仕事なのだと。

本作はフィクションです。

「推す側」と「支える側」の距離感を、

少しだけ真面目に描いてみました。

御使いガールズは、今日も元気です。

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