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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第一章 御使いガールズの誕生

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塵の再生 ~失われた温もり~

塵に覆われた世界で、

志津香は“癒しの翼”を持つ人として再び歩き出す。

絆と再生の光に包まれた、静かな希望。

塵が降り注ぐ中、志津香はフードを深く被り、

かつての家族の温もりを探して街道を歩いていた。


”神力”を使えば塵を弾くこともできたが、

そんなことをすれば目立ちすぎる。


肺に砂が染み込み、息苦しさが募る中、

彼女の心はただ一つの名を繰り返していた――


武雄。


街道の両脇には、かつての戦の名残が

瓦礫の山となって積まれ、


風が吹くたびに塵の帳が空へ舞い上がる。


この世界は、まだ終わってなどいない。

ただ、静かに、深く痛んでいるのだと

──嫌でも分かる。


「武雄……無事でいるといいけど」


志津香はその名を、心の中で何度も呼び続けた。

――あの屋敷に着けば、きっと笑顔で迎えてくれるはずだ。


平島家の屋敷に目立った変化はなかった。

けれど、あまりにも静かすぎた。


鳥のさえずりさえ、

まるでこの家に遠慮しているかのように感じられる。


「どうして……こんなことに……」


すでに五十を超えている武雄の姿を目にした瞬間、

志津香は膝から崩れ落ちた。


土間に響く膝の音が、静寂を切り裂く。


肩に積もった塵が、霞のように舞い上がった。


彼女の前で土下座していたクイナがようやく姿勢を直し、

武雄の背をそっと支えた。


「天国の階段を登った……どうしても、会いたくて」


その声は震えていた。

だが、そこに後悔はなかった。


あの日、自ら選び取った選択の、

消えることのない痕跡だった。


「年に一回しか顔合わせしてなかったのに……」


志津香は口元を押さえる。


込み上げてくるそれは、怒りか、悲しみか、

あるいは言葉にできない混濁か


──頭の中がぐちゃぐちゃだった。


皺は増えたが、武雄はなおも拳を握りしめる。


「なぁに、歳は食ったが……まだまだやれるわ」


決して強がりではないその高笑いが、

広い座敷に響いた。


けれど、それがかえって胸を締めつける。


「現に、お前は帰ってきたじゃないか」


その一言に、

志津香はこれまで抱いたことのない感情を持て余した。


それは──ガウに対する、途方もない怒りだった。


天界の秩序も、勝利も、そんなものはもうどうでもいい。

あの神が奪った時間、家族の絆

――すべてを呪いたくなる。


志津香の背の翼、その半分が漆黒に染まり始める。

空気が重く歪み、周囲の塵が渦を巻き出す。


「だめっ!」


志津香の背後から、うさぎの精霊が慌てて飛び出してきた。


ふわふわの耳をピクピクさせ、必死の瞳で彼女を睨む。


「ガウに怒りを持つのはいい。

でも……看護師天使であることを、やめちゃだめだよ。


この世界の傷を癒すのが、君の翼の役割なんだから。」


志津香は唇を噛み、俯いたまま、

武雄の手をぎゅっと握りしめた。


塵が、また二人の肩へと静かに降り積もっていく。

だが、その手の温もりは、どんな砂の帳よりも確かなものだった。


クイナは、志津香の肉体をそっと差し出した。


「ぼくの“犠牲”の力を使えば……

取り返しのつかない事象を、一度だけ復元できる」


「じゃあ……じゃあ、武雄を元に戻してよぅ……!」


志津香は、涙を堪える余裕もなく、しゃくりあげた。


「……それは、ぼくの力の範囲を超える。

完全には戻せないし……武雄も、それを望んでいない」


「でも、肉体に戻れば……君は再び成長できる。

家族だって作れる。」


「わたしはっ……!」


志津香は顔を覆い、ついに声をあげて泣き出した。


――天使の翼が震え、座敷全体に淡い光が広がる。


「ぼくが今まで姿を現せなかったのは、

“力”を使うと消滅するからだ」


うさぎの精霊は静かに言った。


「あの大天使がいる間は、

決して姿を見せるわけにはいかなかったんだ。

でも、今なら……君に託せる。」


精霊とうなずき合った武雄が、静かに言う。


「さあ、志津香。君の人生を取り戻すんだ。

そして、この塵の世界を、ぼくたちの分まで癒してくれ。」


精霊の体が淡い光となって崩れ落ち、

志津香の肉体が静かに光を帯びてゆく。


(すべてが、上手くいくことを──最後まで願っているよ)


志津香は、肉体を持つ天使として新たな生を受けた。


その手には、もう一度人生を選び直すための光が宿っていた。


――それは、砂の下に眠る無数の命を呼び覚ます、最初の灯火だった。

志津香の物語にお付き合いくださり、ありがとうございました。

次回は、塵の世界に灯る小さな希望をさらに追いかけます。


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