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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第二章 マクタン島 カジノ神殿ラピス・レクイエム編

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楽園は牙を隠して笑う  終末世界のカジノ神殿

深海から現れた“異変”と、

地上に築かれた“楽園”。

そのどちらも、まだ序章に過ぎません。


帰路も亀に乗り込んで、

マリアナ海溝付近を通過中だった。


帰りは紗耶香、恵を加え、全部で五人だ。


深海の闇は、いつも通り静かで、

この世界が終わりかけていることさえ忘れさせるほど穏やか――

の、はずだった。


その“異変”に最初に気づいたのは、ラウルだった。


「……おい」


亀型潜航艇の進行方向。

深海の奥から、白い影が複数、こちらへ向かってくる。


「ちょ、白熊って北極とかにいるやつじゃん」


紗耶香が思わず声を上げる。


「ひい、ふう、みい……七匹だぁね」


恵がのんびり数えたが、その声色は少しだけ硬い。


あり得ない。


《深淵白熊アビスグリズ》終末世界の怪物だ。


真っ白な毛皮だが、圧力で潰れたように歪んだ骨格が

異形さを物語る。


目は赤黒く光り、体表に深海生物の発光器官が

不気味に明滅する。


水圧。水温。生息域。

そのすべてを無視して、泳いでくる。


しかも――速い。


「行きは出なかったんですから」


背後から、心底どうでもよさそうな声がした。


「貴方達が、責任持って下さいね」


振り返ると、

ヴィトンのダミエ柄ワンピースに身を包んだユキが、

トートバッグ、ハンドバッグ、クロスボディバッグを抱え、

座席に深く腰掛けていた。


ユキはご満悦の表情だが、

リズは眉を寄せてカード残高を確認している。


「……一撃与えれば、この亀のスピードで振り切れると思うぜ」


ラウルは後ろを振り向きもせず、淡々と言う。


「わかったわよ。私がやる」


紗耶香は、迫り来る白熊たちを正面から見据えた。


深海の闇の中で、

白い毛並みだけが異様に浮かび上がる。


《螺旋演霧・無幻》


紗耶香の瞳が、金色に輝いた。


次の瞬間――

先頭の白熊が突如、狂ったように暴れ出す。


自らの爪で頭を掻きむしり、

意味のない咆哮を上げたかと思うと、

深海の水圧に耐えきれず、内部から粉砕された。


「……え」


紗耶香が目を瞬く。


「嘘。ちょっと強めの幻覚を掛けただけなのに……」


「本当に天使なのか?お前」


いつの間にか隣に移動していたラウルが、

露骨な警戒の眼差しを向けていた。


「ちょっと、実戦から遠ざかってたから」


「オーケー、そこまでだ」


リズが両手を上げて割って入る。


「奴らはまだ誕生したてだから、一直線に向かってきた。

 空間魔術を使っている亀に爪痕が残っている。


 早めに追い払えれば言うことない」


「ただの白熊さんではなかったのね」

 恵は残りの白熊を警戒しながら紗耶香に寄り添ってくる。


「そういうことだ。お互い、詮索なしで行こう」


「きっと“あれ”の影響よ」


恵が、小さく囁いた。


「すぐに慣れるって」


残った白熊たちは、

仲間の消滅に怯えたのか、深海の闇へと散っていった。


◆    ◆


マクタン島。


金色の粒子に護られた、

“唯一の地上楽園”。


世界が崩壊へ向かう中、

この島だけは、異様なほどに明るかった。


巨大クルーズ船。

外資系開発企業。

SNS配信のインフルエンサーたち。


「ここだけが現実逃避の場」

「死なないための街」


そんな言葉が、

冗談でも比喩でもなく、使われている場所。


ビーチでは、

「#桃源郷マクタン」のタグを付けて

インフルエンサーたちが自撮りを続けていた。


塵の外から来た客たちは、

「これで生き延びられる!」と歓声を上げている。


「……すごーい」


ホテルで翔と連絡を取り、カジノのことはラウルに任せきりだった

紗耶香の顔が、素直に輝いた。


「私好みだわ」


「お金の匂いしかしない」


恵の鼻息も、自然と荒くなる。


「おいおい」


ドリップが呆れたように叫ぶ。


「お前達のものじゃないからな」


眼前には、

「桃源郷・エルドラド」と名付けられた

巨大ホテルとショッピングモール。


屋内プール。

ステージ付き複合エリア。


そして、その裏手――

観光客の視線から外れた場所に、

魂のカジノ神殿

《ラピス・レクイエム》が建設中だった。


「このリゾートホテルが完成したら、みんなでパーティーやりましょう」


「フォロワー、爆上がりよ」


紗耶香と恵は、はしゃぎながら宙へ舞い上がり、

上空から建設風景をぐるぐると眺め始める。


「馬鹿野郎!」


ドリップが怒鳴った。


「目立ち過ぎだ!」


一瞬、島の喧騒が遠のいた。


「……いや」


低く、ラウルが続ける。


「俺たちの――

目くらましに丁度いいさ」


その言葉を裏付けるように、

マクタン島の奥で、

金色の粒子が、わずかに歪んだ。


楽園は、

いつだって――

牙を隠して笑っている。


《ラピス・レクイエム》がただのカジノではないことは

誰の目にも明らかだった。

マクタン島は安全地帯――

そう信じたい人々が殺到してきます。

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