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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第二章 マクタン島 カジノ神殿ラピス・レクイエム編

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16/24

天使カジノ同盟結成

新宿の片隅に残る喫茶店から始まるのは、

救済でも破滅でもない、

少し胡散臭くて賑やかな再出発の物語。

──新宿。


路地裏にひっそり佇む、

古びた喫茶店アポロ。


看板のネオンは今にも消えそうに瞬き、

入り口の鈴が、かすかに鳴った。


「よう、武雄。俺のクレカ、まだ預かってるか?」


リズがカウンターに肘をつく。


「その姿で突然現れて、言うことはそれだけか?」


「俺もお前も、まだ地上に存在している。

それで十分だ」


「まぁな、あんたには頭が上がらない」


奥から、老店主が無言でカードを差し出す。


「よっしゃ、これで買い物再開だな」


そこへ、見覚えのある白衣姿の二人組が入ってきた。

紗耶香と恵だ。


「あれ、武雄さん!珍しくお客さんですか?」


「ああ、とびっきりの珍客だ」


「ラウル!ユキもいる!!」


「嫌な奴らに会っちまった」


「はっ?こっちの台詞よ」


「地上で派手に活動しているようだが、

天界に帰らなくていいのか?」


「訳ありなのよ、言わせないで。


マクタン島の桃源郷の噂ってあなた達でしょ。

リゾートホテルにカジノまで出来るって本当?」


恵が目を輝かせ、即食いつく。


「え、カジノ!?どこに!?いつオープン!?

私、ディーラーの制服似合うと思うんだよね!」


紗耶香が恵の肩を叩き、

二人で想像のポーズを取る。


「お前ら変わってないな……」


 ラウルは溜息をつく。


「フォロワー急上昇の御使いガールズで

訳の分からない動画まで上げて、何考えてんだ?」


「そんなこと言って、しっかりチェックしてんじゃん。

 私達のこと大好きでしょ」


「その内、会いに行こうって話はしてたんだよ」

 ユキが間に入った。


「だが、日本で活動しても、たかが知れてるぜ。

マクタン島で、ちょっと本気でやってみるか?」


ラウルがスマホを睨みつけながら提案した。


「行く行く。

日本は規制が厳しくて、どうにもならなかったの!」


「え、マジで?

俺の適当な思いつきに乗っかるなよ」


ラウルが苦笑する。


「違うのよ。ほら、今マゼラン航路経由で

避難民向けのクルーズ便が再開してるし


御使いガールズが

看護師天使で隕石落としたって拡散され始めてるわ。


ギリギリでやってんのに、

登録者だけは四百万超えちゃって」


「私達の主催でいいなら、

 ぜひお願いしたいわね」


 ユキがスマホ画面を皆に見せる。

 金粒子が反射して、きらめいた。


「悪いわねぇ、ユキちゃん。

 あたし達、利用されるのは嫌いなのよ」


 ひょい、と声がして振り返ると、

 カウンターに夏樹が拳を握りしめていた。

 後ろに志津香と翔が追いついてくる。


「お前らまで……早ぇよ、来るの」

 ラウルが額を押さえる。


「噂になれば、誰か食いついてくるって思ってたのよ

 てことで、合流~」


 夏樹が翼を小さく広げ、ニッと笑う。


――翼の光が喫茶店の薄暗い店内を金色に染め、

 皆の顔を優しく照らした。


「もちろんリゾートホテルに泊まらせてくれるんでしょ

 クルーズ船も楽しみ!」


 恵はすっかり観光気分だ。


「あいにく、移動手段はカメだ。

 カジノと神殿も、これから建設だ」


 ラウルが肩をすくめると、

 リズがぱん、と手を打った。


「正式に決まりだ!


 マクタン島カジノ神殿は――

 《天穹桃源・エルドラド》!


 天使も悪魔も民間人も、

 金と信仰と命を賭けて遊べる聖域にしようぜ!」


「名前長いしクドい」


 夏樹が小声で呟く。


「それじゃ、まずはお披露目ショーだね」


 紗耶香がすっとリズに歩み寄る。


 金粒子が舞う中、

片目の金色の光を揺らして笑った。


「大丈夫。みんなでやれば楽しいわ。

どうせ世界は壊れてるんだし」


――その言葉に金粒子が皆を包み、

壊れた世界の隙間に、かすかな希望の光を灯す。


誰も、異を唱えなかった。


こうして終末の世界において――

看護師天使たちとリゾート都市の、

奇妙な同盟が結ばれることとなる。


――喫茶店の鈴が再び鳴り、

外の路地に金色の粒子が静かに降り注いだ。


志津香が東京に戻ると、

紗耶香と恵は、すでに旅支度を整えていた。


「これからマクタン島に行く」


「ドリップ達が

カジノ神殿作ってるんだって!」


「私は行けません」


「日本で受けた依頼が、

まだ十八件残ってます」


「俺が受けたんだ」


翔が割り込んでくる。


「登録四百万突破して、

焦っちまった」


「日本の依頼が片付いたら、

二人で行くよ」


「えーっ」


紗耶香が不満の声を上げる。


「南の島で

グラビア撮影じゃなかったの」


「そんなご褒美、

こっちからお願いしたいけど……

ちょっと待ってくれ」


「私はクレタ島に行く」


夏樹は思い詰めたように言い、

肩のボタンを外した。


胸元の角笛が、

淡く光を放つ。


(テレノア様の声……)


この胸騒ぎだけは、

世界が変わっても外れたことがない。


「じゃあ、

マクタン島で集合しましょう」


「了解」


◇    ◇


単独でクレタ島に着いた夏樹は、

空飛ぶエイの新種に襲われていた。


「なんで海洋生物って、

みんな外皮が

ヌメヌメしてるのよっ!」


ハンマーが滑り、

毒を持つ尻尾が

頬をかすめる。


別のエイが現れ、

雷撃が肩を貫いた。


「……久しぶりに、

やってやる」


「神器武装!」


夏樹の身体が神具に覆われ、

ハンマーに

小さな翼が回り始める。


「ハンマードライブっ!」


回転したハンマーが、

エイを粉砕した。


「テレノア様は……

神殿よね」


角笛が、

まばゆく輝いた。

混沌の時代に生まれたのは、正義でも秩序でもなく

「面白そうだからやる」という同盟でした。

軽口と金粒子に包まれながら、世界は少しずつ形を変えていきます。

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