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SSR看護師天使、地上に放置された結果——世界最強の闇落ちアイドルができました  作者: ふりっぷ
第一章 御使いガールズの誕生

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10/24

魔核パクリ ~人間の温もり、プールサイドで~

今回は、心の弱さと温もりが

ほんの少しだけ未来を照らす話です。

志津香はハッとする。

さっき黙っていたのは、そういうことだったのだ。


「そう。私自身、みんなの助けがないと何も出来なかったから。

だからまずは味方。あと絶対安全な拠点。


なければ作る。大きければ大きいほどいい。

最低でも大型シェルター。

もし安全な国が残ってるなら、そこが最優先」


その言葉に、志津香も納得し、深く頷いた。

だが、夏樹が冷静でいられたのはそこまでだった。


「私がもっとしっかりしていれば――

佐和子さんも……いなくならなかったのかなぁ?」


夏樹は唇を震わせながら呟いたかと思うと、

堪えきれずに――


「びえええええぇぇん!」


涙がぽたぽたと志津香の服に落ち、

部屋に響く嗚咽が埃を震わせる。


志津香の胸に顔をうずめ、

ぎゅっと抱きついて泣き出した。


志津香は驚いたように目を見開いたが、

抵抗もせず、そっと手を添える。


 

――その手が、初めての「人間の温もり」を確かめるように、

夏樹の背を優しく撫でる。


「……あれ、しづちゃん、温かい……」


夏樹はしゃくり上げながら、抱きついたまま、

彼女の胸元から脇の下までまるで


猫のように鼻をくんくんと鳴らしていく。


「それに……匂いも、なんか……」


「や、やめてください!

テレビを見て急いで駆けつけたので、

汗をかいたかもしれませんっ」


志津香の頰がわずかに赤らみ、ツンとした声に照れが混じる。

窓からの光が埃を照らし、ふたりの影をひとつに重ねる。


「いや、しづちゃん

 ……もしかして、人間になったの?」


「はい。精霊の力を借りて……

今は、定期的に食事を取らないと

生きていけない身体になりました」


志津香の声が少し震え、

窓から差し込む光が彼女の肌を優しく照らす。


「……それに、翼も半分色が変わって……」


「はい。武雄さんの姿を見て……取り乱してしまって、

そのときに……」


漆黒の翼の片鱗が、服の隙間からちらりと覗く。

夏樹は涙で濡れた頰をぬぐいながら微笑んだ。


「しづちゃんも、いろいろあったんだね……

私ばっかり、ごめんね」


志津香は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに真顔で答える。


「……いえ。本当に……離してください。

また汗をかいてしまいますから」


――その言葉に、珍しく照れた笑みが漏れる。


「また成長できるってことだ……良かったねえ」


夏樹が涙を拭いながら微笑むと、

志津香も少しだけ柔らかい表情を見せた。


「はい。武雄さんも……

九院流・発気を使えば、老化を遅らせることができます」


「へぇ、そうなんだ。

あの人、ドリップさんの残した

喫茶店を再開するとか言ってたし……」


夏樹は目を細めて笑った。

「まだまだ、頑張ってもらわないとね」


ふと、視線を落として、呟くように続ける。


「……そしたら、無理に私たちと一緒にいなくても、いいのかも」


志津香はその言葉に、はっとしたように夏樹を見つめた。

そして、ゆっくりと首を振る。


「いえ……私だけが幸せになるわけにはいきません」


その瞳は静かで、けれど確かな決意が宿っていた。

――翼の黒い部分が、かすかに光を吸い込むように震える。


* * *


恵と紗耶香は、ナイトプールにぷかぷか浮かんでいた。


「さっきの話、どう思う?」


「あー、ぶっちゃけネットに

 あれだけ情報上がってる時点でヤバいでしょ」


「だよねー」


水面に浮かぶネオンの光が、ふたりの顔を青とピンクに染める。


――塵に濁った空の下、プールの水面が夜風にゆらぎ、

まるで終末のオアシスのようだった。


「まとめサイトであれだったら、もっとヤバい事案もありそうだし、

これからもどんどん増えるっしょ」


「確かにー」


恵は、内容がなんであっても紗耶香の話を聞くのが好きだった。


頭の良さやリーダーシップとは違う、

“物事を一番うまく処理できるのは紗耶香だ”と信じていた。


――その信頼が、水面に映る二人の影を、優しく繋ぐ。


「しづちゃんは偉いと思うよ。

分析して、一つずつ潰していこうとする姿勢も真面目でいい。

でも、私には無理だー」


「このまま様子見ですかぁ」


「噂話を集めようよ。私、そういうの好きだから。

それで安全そうな場所があったら、

一緒に移動すればいいじゃん」


恵は小さく頷いた。

「楽しみは見つけていかないとね」


「そうそう」


紗耶香は胸元のポケットから魔核を取り出した。


黒く脈動するそれは、淡く瘴気のような靄をまとい、

近くの水面を微かに揺らす。


――ネオンの光を吸い込み、血管のような紋が赤黒くうねる。


「後は、これをどうするかだにゃ」


手が触れただけで、指先が黒く染まり、小さな咆哮が響く。


「ひぁあ!」


――水泡が弾け、波紋が闇に滲む。


恵は思わず肩をすくめる。

「それヤバいってば。マジで」


しかし、紗耶香は悪戯っぽく笑うと、

パクリと魔核を口に放り込んだ。


「ぐるじぃ〜〜〜」


「ばかっ! 夏樹でもそんなことやらないよ!

ぺーしてぺって!」


「端っこいこう」


紗耶香は口を抑えながらプールの縁へ泳いでいく。

――魔核が喉でごろごろ転がる音が、

コミカルに響き、水しぶきを上げる。


傍から見れば、美少女二人が

ふざけて水遊びしているようにしか見えない。


――だが、水面下で瘴気が微かに広がり、

ネオンを黒く染め始める。


 

弱さも強さも抱えながら、

彼女たちは今日も前に進みます。

読んでくださって、ありがとう。

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