東の都へ、追跡の旅
須弥山での修行と悟りの試練を終えたシャク、アレス、カーミラの三人は、ロアとの最終決戦に備え、山を下りた。毘沙門天から授かった聖なる宝玉を手に、彼らの心は決意に満ちていた。須弥山で得た新たな力と、固く結ばれた絆は、三人を揺るぎないものへと変えていた。
「必ず、ロアを討ち果たし、カーミラを呪縛から解放する」
シャクは、宝玉を握りしめながら、静かに、しかし確固たる声で誓った。その眼差しに、以前のような迷いや戸惑いはなく、ただひたすらに、前に進む意志だけが宿っている。
「ええ! 今度こそ、ロアの好きにはさせないわ!」
カーミラもまた、以前の弱気な姿は消え、強い意志を瞳に宿していた。ロアに囚われ、絶望の淵に立たされた過去は、彼女を弱くするのではなく、むしろ強く、たくましく育て上げた。
「待っていろ、ロア! 今度こそ、お前の悪行に終止符を打ってやる!」
アレスも、骨だけの体から、燃え盛るような闘志を放つ。ホークとの再会と別れを経て、過去のしがらみを乗り越えたアレスの力は、以前とは比べ物にならないほどに強大になっていた。
三人がロアの隠れ家に向かうと、そこはすでに蛻の殻となっていた。荒れ果てた貴族屋敷は、風に吹きさらされ、不気味な静寂に包まれている。
「くそっ、逃げられたか……!」
アレスが、悔しそうに骨の拳を壁に叩きつける。
シャクは、ロアが残したわずかな痕跡をたどる。魔力に残された残留思念は、シャクの心に、ロアの焦燥と憎悪を伝えてきた。
「……東の、方角だ……」
シャクの言葉に、二人は顔を見合わせる。
「まさか、東の都に……?」
カーミラが驚きを隠せない。東の都は、朗印が住む都であり、多くの高僧や僧侶たちが修行を積む、神聖な場所だ。ロアは、その神聖な力から逃れるために、最も遠い場所を選んだのだろうか。
「東の都か……」
シャクは、朗印との修行を思い出す。朗印ならば、きっと、ロアを討ち果たすための知恵を授けてくれるだろう。
三人は、再び旅に出ることを決意する。ロアを追い、東の都を目指す。
「待っていろ、ロア! どこまでも、追いかけてやる!」
カーミラが、力強く叫ぶ。その声には、ロアに対する恐怖よりも、自分自身を乗り越えようとする強い意志が込められていた。
「今度こそ、ロアの呪縛を解き、君を完全に解放する」
シャクが、カーミラに優しく語りかける。その瞳は、いつになく真剣だ。
「ああ。ロアを倒し、俺たちの旅を、終わらせよう」
アレスも、二人の言葉に頷く。三人の心は、ロアを追うという一つの目的のもと、再び一つになった。
東の都へ向かう道中、三人は、様々な出会いを経験する。
道中、ロアが逃げた痕跡をたどるうちに、ロアの悪行を知る人々に出会う。ロアに家族を奪われた者、ロアによって吸血鬼にされた者、ロアの魔力によって苦しめられている者……。人々の話を聞くにつれ、ロアの憎しみの深さと、それに巻き込まれた人々の悲しみが、シャクたちの心に深く刻み込まれていく。
「ロアは、かつて、多くの人々を吸血鬼に変え、その魂を弄んできた……」
人々は、ロアの悪行を、震える声で語る。しかし、シャクは、その悲しみを知るたびに、ロアを討ち果たすという決意を、より一層強固なものにしていく。
やがて、三人は、東の都にたどり着いた。東の都は、南の都とも、北の都とも違う、厳かで、しかし、どこか温かい雰囲気に包まれていた。
「ここが、東の都……」
シャクが、都の入り口で、静かに呟く。
「朗印様、いるかな……?」
カーミラが、少し緊張した面持ちで、シャクに尋ねる。
「きっと、いるさ。俺たちを、待っていてくれるはずだ」
アレスが、カーミラを励ますように、優しく語りかける。
三人は、朗印のいる寺を目指し、東の都の街を歩き始めた。しかし、東の都は、ロアの魔力によって、不穏な空気に包まれていた。
「……ロアの、魔力だ……」
シャクは、街のあちこちに、ロアの魔力が残っているのを感じる。
ロアは、東の都を、次の拠点にしようとしているのだろう。東の都の、神聖な力を汚染し、自身の力に変えようと企んでいるのかもしれない。
三人の旅は、新たな局面を迎えていた。ロアとの最終決戦の地、東の都で、シャクたちは、ロアを討ち果たし、カーミラを救い、この世に平和を取り戻すことができるのか。
物語は、いよいよ佳境へと入っていく。




