慈悲の試練、偽りの幸福
北の都を後にしたシャク、アレス、カーミラの三人は、須弥山を目指す旅路についた。先代王から伝えられた三つの試練を乗り越え、ロアの呪縛を解き放つ手がかりを得るために。
最初の試練は、「慈悲の試練」。道中、欲望や憎しみを増幅させる誘惑に遭遇するという。
旅の途中、三人は、見る者を惑わすかのような、美しい花が咲き乱れる森に迷い込んだ。その花は、甘く魅惑的な香りを放ち、人々の心を惹きつけてやまない。
「うわあ……! すごく、いい匂い……!」
カーミラは、その香りに誘われるように、花に近づいていく。
「カーミラ、待て! その花、なんだか、変だ……!」
アレスが叫ぶが、カーミラは聞く耳を持たない。
「大丈夫よ、アレス。ただの花じゃない」
カーミラが花に触れた途端、花から放たれる香りが、カーミラの吸血衝動を増幅させる。
「う、うぅ…… ! 血が……、血が欲しい……!」
カーミラは、苦悶の表情を浮かべながら、シャクに襲い掛かろうとする。
「カーミラ、落ち着いて! 僕だよ!」
シャクは、カーミラの攻撃をかわしながら、必死に呼びかける。
「うるさい! 血をよこせ!」
カーミラは、理性を失い、シャクに襲いかかる。
シャクは、カーミラの攻撃を受け流しながら、観音経を唱え始める。朗印との修行で得た、慈悲の心で、カーミラの心を鎮めようとする。
「カーミラ、僕の声を、聞いてくれ! 君は、そんなこと、望んでいないはずだ!」
シャクの声は、森全体に響き渡り、カーミラの心を包み込んでいく。
カーミラの脳裏に、シャクとの思い出が蘇る。吸血衝動に苦しんでいた自分を、優しく抱きしめてくれたシャクの姿。
「……シャク…………」
カーミラは、シャクの声に、理性を少しずつ取り戻していく。
その時、森の奥から、美しい歌声が聞こえてきた。その歌声は、カーミラの吸血衝動をさらに増幅させ、カーミラは再び、理性を失いそうになる。
「くっ……! この歌声は……!」
シャクが、歌声の主を探すと、森の奥に、美しい女性が立っていた。
「シャク、私と一緒に、永遠を生きましょう……」
女性は、シャクに甘く語りかける。
シャクは、女性の言葉に、一瞬、心が揺らぐ。しかし、シャクは、カーミラのことを思い出す。
「……あなたは、カーミラじゃない……!」
シャクは、女性の正体を見破り、鬼切丸を構える。
女性は、シャクの言葉に、悲しそうな表情を浮かべ、姿を消した。
すると、森全体が静けさを取り戻し、美しい花々も、ただの枯れ木へと変わっていく。
「シャク……」
カーミラは、シャクに駆け寄り、抱きしめる。
「ごめんなさい……。私……、また、あなたの優しさに甘えて……」
「いいんだ、カーミラ。君は、慈悲の試練を乗り越えたんだ」
シャクの言葉に、カーミラは涙を流す。
アレスも、二人の姿を見て、安堵のため息を漏らす。
三人は、慈悲の試練を乗り越え、次の試練へと向かう。




