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恋と友情の仲直り

 ロアの一件以来、シャクとカーミラの間に流れる空気は、どこかギクシャクしたものになっていた。シャクは、カーミラを失いたくない一心でロアの討伐を躊躇し、結果的にカーミラを深く傷つけてしまったことを後悔していた。


 一方、カーミラもまた、シャクの優しさを疑い、辛辣な言葉を浴びせてしまったことを深く悔やんでいた。互いを想う気持ちは以前にも増して強くなっているにもかかわらず、どう言葉を交わせばいいのか分からず、二人の間には重苦しい沈黙が漂うばかりだった。


 そんな二人を見て、アレスも頭を悩ませていた。


「なんとか、二人を仲直りさせてやりたいんだが……」


 アレスは、骨だけの頭を掻きながら、うまい言葉が見つからずに困り果てていた。二人のぎこちない空気に、アレスも居心地が悪く、かといって、どうすることもできない。友情と恋心のもつれは、アレスの理解を超えた問題だった。


 ある日、三人が泊まった宿屋の食堂で、シャクは意を決してカーミラに話しかけようとした。


「あのさ、カーミラ……」

 しかし、言葉が喉に詰まって出てこない。カーミラも、シャクの視線を感じてはいるものの、どう返事をすればいいのか分からず、俯いたままだ。


 沈黙が続き、食堂の空気がさらに重くなる。


 アレスは、二人の気まずさに耐えかね、そっと席を立った。


「……俺、ちょっと散歩に行ってくるわ」

 そう言って、アレスは食堂を出ていった。


 二人は黙り込んだまま、1時間くらい経過していた。その様子を、台所で洗い物をしていた宿屋のおかみさんが、じっと観察していた。


「あらあら、若い二人が、ずいぶん気まずそうだねぇ」

 おかみさんは、そう呟くと、食堂に顔を出し、シャクとカーミラの前に立った。


「あんたたち、喧嘩かい?」

 おかみさんの問いかけに、シャクは慌てて首を振る。


「いえ、そういうわけでは……」

「そうかい。でもね、顔を見りゃわかるよ。どうせ、恋のもつれだろう?」


 おかみさんは、そう言うと、シャクとカーミラの腕を掴み、強引に立たせる。


「いいかい、若い者。もつれた糸は、すぐに解かないと、どんどん絡まって、どうしようもなくなっちまうんだよ!」


 おかみさんは、強引にシャクの腕をカーミラの背中に回させ、カーミラの腕をシャクの背中に回させた。


「さあ、抱き合って、仲直りしな!」

 不意の出来事に、シャクとカーミラは顔を赤くして固まる。


「ちょ、ちょっと、おばさん!?」

 カーミラが叫ぶが、おかみさんは聞く耳を持たない。


「いいから!  喧嘩したときは、抱き合って仲直りするんだよ!」

 そう言って、おかみさんは、二人の背中を押しつけ、強く抱き合わせる。


 シャクの腕の中で、カーミラは驚きと恥ずかしさで固まっていた。しかし、シャクの温かさを感じると、カーミラの心は少しずつ解けていく。


その温かさに触れ、カーミラは素直な気持ちを口にした。

「……シャク……ごめんなさい……。私、酷いことを言って……」


 カーミラの謝罪に、シャクも言葉を絞り出す。

「俺の方こそ、ごめん。君を失いたくないばかりに、ロアを討伐することを躊躇してしまった。結果的に、君を不安にさせてしまった……」


 シャクの謝罪に、カーミラは涙を流す。

「私、シャクが私のことを嫌いになったのかと……。もう、どうでもよくなったのかと……」

「そんなこと、絶対にない!  カーミラは、僕にとって、大切な仲間だ。そして……」

 シャクは、言葉を詰まらせる。


「そして?」

 カーミラが首を傾げると、シャクは意を決して言葉を続けた。


「……大切な人だ」

 シャクの言葉に、カーミラはさらに顔を赤くする。


 シャクは、カーミラを優しく抱きしめ直す。

「黙って、アレスにだけ相談していたことも、ごめん。君に、心配をかけたくなかったんだ」


 シャクの言葉に、カーミラはそっと頷く。


 二人の間には、以前にも増して強い絆が生まれた。

散歩から帰ってきたアレスは、食堂で抱き合っているシャクとカーミラの姿を見て、ホッと胸を撫で下ろす。


「やれやれ……。俺が心配するまでもなかったか」

 アレスは、少し照れくさそうに笑うと、二人のもとへ向かう。


「おい、お前たち。仲直りしたなら、そろそろロアをどう攻略するか、相談しないとだぞ」


 アレスの言葉に、シャクとカーミラは、顔を赤くしながらも、力強く頷く。

 三人は、再び心を一つにし、ロアを倒すための作戦を練り始めた。


「今度こそ、ロアを確実に倒す。そして、カーミラを、呪縛から解放する」

 シャクの言葉に、アレスとカーミラは頷く。


 三人の、そしてカーミラの心の闇を晴らすための戦いは、再び幕を開けようとしていた。

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