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ロアの呪縛と、カーミラの孤独

 北の都を目指して旅を続けるシャク、アレス、カーミラの三人。中央の都で準備を整え、再び出発しようとした矢先、突如として不穏な影が彼らの前に立ちふさがった。


「やあ、カーミラ。久しぶりだね」


 闇の中から現れたのは、かつてカーミラを吸血鬼に変えた男、ロアだった。漆黒の衣を纏い、不気味な笑みを浮かべるロアの姿に、カーミラは恐怖で身を震わせる。


「ロア……!」

 シャクとアレスが警戒する中、ロアは一瞬でカーミラを攫い去ってしまう。


「カーミラ!」

 シャクとアレスは、ロアの素早さについていけず、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


 カーミラを攫われたシャクとアレスは、必死にカーミラの行方を探した。ロアが残したわずかな痕跡を頼りに、彼らは中央の都の外れにある、古びた貴族屋敷にたどり着く。朽ち果てた屋敷は、禍々しい魔力に包まれており、ロアの住処であることを物語っていた。


「きっと、この中にカーミラがいる……!」

 アレスが叫ぶが、屋敷の周りには多くの吸血鬼が潜んでいた。ロアが屋敷を守らせているのだ。


 一方、屋敷の一室に閉じ込められたカーミラは、ロアの言葉に心を蝕まれていた。


「カーミラ。お前を助けに来る者などいない。所詮、シャクは人間だ。魔導王との戦いで強くなった奴はお前を足手まといに思っている、今さら助けに来る義理などない」


 ロアは、カーミラの心を抉るような言葉を浴びせ続ける。


「あの鬼神のような強さの男がそこそこの強さしかないお前をどう思っているか……。そう、きっと邪魔だと思っている」


 ロアの言葉に、カーミラは次第に疑念を抱き始める。確かに、シャクは以前、自分の力の暴走に苦しんでいた。その彼が、再び鬼神の力を使ったカーミラを、以前と同じように受け入れてくれるだろうか。


 何日経っても、シャクもアレスも現れない。カーミラの心は、不安と絶望に塗りつぶされていった。


 一方、シャクとアレスは、ロアを倒さずに撃退する方法を模索していた。朗印の教えを受け、力任せに敵を倒すのではなく、慈悲の心を持って事態を解決しようとしていたのだ。


「ロアを殺せば、カーミラも死んでしまう……。なんとか、ロアの魔力を抑え込み、カーミラを解放する方法はないか……」

 シャクは、幾度となく観音経を唱え、瞑想を続けた。しかし、ロアの魔力は強力で、シャクの力だけではどうにもならない。


「シャク、俺も手伝う。ロアの魔力を、俺が抑え込む!」

 アレスは、骨だけの体から光を放ち、シャクの瞑想を助ける。


 そして、ようやく、シャクはロアを倒さずに撃退する方法を見つけ出した。

数日後、シャクとアレスは、ついに貴族屋敷に現れた。シャクの穏やかながらも巨大な力、そしてアレスの光の魔力に、ロアは驚きを隠せない。


「なんだ……!  この小僧、以前とはまるで違う……!」

 ロアは、シャクの成長に恐怖を覚える。


「貴様の企みは、全てお見通しだ、ロア!」

 シャクの言葉に、ロアは顔を歪める。


「くそっ、このままでは不味い……!」

 ロアは、部下の吸血鬼たちにシャクの相手を任せ、屋敷の奥へと逃げていく。

シャクは、吸血鬼たちを瞬く間に倒し、カーミラのもとへと駆けつける。


「カーミラ!  無事だったか!」

 シャクがカーミラに声をかけると、カーミラはシャクの顔を見て、涙を流しながら叫んだ。


「遅い!  遅すぎるわ!」

 カーミラの怒りの言葉に、シャクは戸惑う。


「カーミラ……?」

「もう、私のことなんて、どうでもよくなったんでしょう!?  ロアを殺したら、私も死ぬから、面倒くさいって、見捨てようとしたんでしょう!?」


 カーミラは、感情的にシャクに詰め寄る。


「違う、カーミラ!  俺は……!」

 シャクが弁明しようとするが、カーミラは聞く耳を持たない。


「どうせ、私のことなんて……」

 カーミラの言葉に、シャクは驚く。


(カーミラは……ロアを殺したら、自分も死ぬって知っていたのか……)


 シャクは、その事実に気づき、カーミラの心中を察した。


「カーミラ……。俺は、君を見捨てようなんて、一度も思わなかった。ただ、君を助ける方法を、ずっと考えていたんだ」


 シャクは、カーミラに優しく語りかける。


「嘘よ!  そんなの、嘘に決まってるわ!  ずっと、ずっと待ってたのに……!」

 カーミラは、シャクの言葉を信じることができない。


 二人の間には、深い溝が生まれてしまっていた。


 シャクとアレスは、ロアの呪縛からカーミラを解放する方法を探すため、再び旅を続けることになった。カーミラは、シャクとアレスに助けられたものの、ロアの言葉と、何日も現れなかった二人の行動に、深い傷を負っていた。


「シャクは、私のことを、もう嫌いになったのかな……」

 カーミラは、旅の道中、何度もそう考える。


 シャクは、カーミラの心を癒すため、優しく接するが、カーミラはシャクの優しさを素直に受け取ることができない。


「どうせ、同情してるだけなんでしょう……」

 カーミラは、そう言ってシャクに冷たく当たる。


 シャクは、カーミラの態度に戸惑いながらも、諦めずにカーミラに寄り添い続けた。


 一方、ロアは、シャクの成長に驚き、恐怖を覚えていた。

「まさか、あの小僧が、あれほどの力を手に入れるとは……。だが、奴は、カーミラを助けることはできても、呪縛から解放することはできない……!」


 ロアは、再びシャクたちを襲う機会を窺っていた。


 シャク、アレス、カーミラの三人の旅は、新たな試練を迎えていた。ロアの呪縛、そして、カーミラの心の闇。三人は、この困難を乗り越え、再び絆を取り戻すことができるのか。

 物語は、新たな展開を迎える。

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