新たなる脅威
毒龍を浄化したシャク、アレス、カーミラの三人は、荒れ果てた森の奥深く、魔女たちが逃げ去った先へと足を踏み入れた。そこには、禍々しい魔力が渦巻く巨大な城塞がそびえ立っていた。城塞の中心からは、全てを圧倒するような強大な魔力が放たれており、それがこの地の瘴気の源であることを物語っていた。
「ここが、奴らの親玉の居城か……」
アレスが剣の柄に手を置き、警戒しながら呟く。
「まるで、世界が終わる前の景色みたい……」
カーミラは、その不吉な城塞に恐怖を覚える。
シャクは、静かにその城塞を見つめていた。その瞳には、悪政王の城で感じたものとは比べ物にならない、純粋な悪意が映っていた。
「ここにいるのは、毒龍を操っていた魔女たちだけではないようだ。さらに強力な魔物が、たくさんいる……」
シャクの言葉に、二人は息をのむ。
三人は、南の都へと戻り、王都で事の次第を報告した。悪政王から王位を継いだ新王は、三人の話に耳を傾け、事の重大さを理解する。
「まさか、毒龍の背後に、魔導王なる存在がいたとは……。このまま放置すれば、いずれは我が国も、そして世界も滅びてしまうだろう」
新王は、討伐軍を編成することを決意する。そして、南の都の兵士たちに加え、冒険者ギルドにも協力を要請した。
集まった兵士と冒険者たちは、数万にも及んだ。皆、魔導王の脅威から世界を救うため、戦うことを決意した者たちだ。
シャク、アレス、カーミラは、その討伐軍の先頭に立ち、魔導王の拠点へと進軍する。
魔導王の城塞にたどり着いた討伐軍は、その不気味な光景に言葉を失った。城塞の周りには、無数のゾンビ兵が蠢いている。彼らは、かつて命を持っていた者たちのなれの果てだ。
「なんてことだ……。 このままじゃ、全滅してしまう……!」
冒険者の一人が、ゾンビ兵の悍ましい姿に怯える。
「怯むな! ゾンビ兵など、我々の敵ではない!」
アレスが、剣を抜き、先陣を切る。しかし、ゾンビ兵はいくら倒しても、次から次へと湧いてくる。
「くそっ、キリがない!」
アレスが苦戦していると、ゾンビ兵の後ろから、下半身が蛇、上半身が美しい女性の姿をした、ラミアの兵士たちが現れた。彼らは、鋭い爪と毒牙で兵士たちを襲う。
「シャク、カーミラ! こっちは任せろ!」
アレスは、ゾンビ兵とラミアの兵士たちを相手に奮戦する。
一方、シャクとカーミラは、城塞の門を突破し、城内へと侵入する。城の中は、闇に包まれており、不気味な気配が漂っていた。
その闇の中から、無数の吸血鬼が襲いかかってくる。カーミラは、同族である吸血鬼の群れに戸惑い、一瞬動きが止まる。
「カーミラ、気をつけろ!」
シャクが叫ぶが、吸血鬼たちは、カーミラの隙をついて襲いかかる。
「きゃっ!」
カーミラは、吸血鬼に腕を噛まれ、鮮血が流れる。しかし、カーミラの血には、吸血鬼たちにとって毒となる成分が含まれていた。吸血鬼たちは、カーミラの血を吸った途端、苦しみだし、次々と灰になっていく。
「な、なにこれ……!?」
カーミラは、自分の血が毒になっていることに驚く。
城の奥へと進んでいくと、一人の悪魔が立っていた。執事服を着たその悪魔は、不敵な笑みを浮かべている。
「ようこそ、我が主、魔導王様のもとへ。わたくし、執事のデーロクと申します」
デーロクは、恭しくお辞儀をすると、その手に持った杖を振るう。すると、大地が揺れ、巨大な岩石がシャクたちに襲いかかる。
「くっ!」
シャクは、結界を張り、岩石を防ぐ。しかし、デーロクの魔力は、シャクの結界を容易に打ち破ってしまう。
「シャク、大丈夫か!?」
アレスが、駆けつけてくるが、デーロクはアレスにも容赦なく魔法を放つ。
「ふふふ……。あなたたちごときが、我が主、魔導王様に勝てるとでも?」
デーロクの圧倒的な強さに、シャクたちは苦戦を強いられる。
城外では、討伐軍が魔物たちの圧倒的な数に押されていた。ゾンビ兵はいくら倒しても再生し、ラミアの兵士たちは、兵士たちを次々と毒牙で倒していく。吸血鬼の群れは、冒険者たちを襲い、彼らの血を吸い尽くしていく。
「撤退だ! 全軍、王都に退却しろ!」
南の王の指揮官が叫ぶが、すでに多くの兵士と冒険者が倒されていた。
討伐軍は、魔導王の圧倒的な強さの前に惨敗し、王都へと逃げ帰るしかなかった。
シャク、アレス、カーミラは、なんとかデーロクの手を逃れ、王都へと戻った。
「なんてことだ……。 まさか、ここまで圧倒的な差があるとは……」
アレスが、悔しそうに拳を握りしめる。
「デーロクという悪魔も、とんでもない強さだった……。魔導王は、いったいどれほどの力を持っているの……」
カーミラは、恐怖に震えながら呟く。
シャクは、静かに俯いていた。自らの力不足を痛感し、悔しさを滲ませる。
「……俺たちの力が、足りなかった。このままでは、魔導王を倒すことはできない」
しかし、シャクは諦めてはいなかった。
「……でも、まだ、方法はある。もっと、力をつけなければ」
三人は、魔導王を倒すため、さらなる修業の旅に出ることを決意する。だが、魔導王の脅威は、すでに王都に迫っていた。世界は、魔導王の支配下に置かれてしまうのか。三人の、新たな戦いが、今、始まろうとしていた。




