城の奥、魔女たちの実験室
翌朝、三人は朽ち果てた城へと足を踏み入れる。城の中は、毒々しい色彩の植物や、不気味な魔法陣で彩られていた。城の奥から、毒龍の咆哮と、魔女たちの不気味な詠唱が聞こえてくる。
城の最深部にたどり着くと、そこは巨大な実験室になっていた。部屋の中央には、禍々しい魔力を放つ魔法陣があり、その上に、巨大な毒龍が横たわっている。そして、その毒龍の周りを、数人の魔女たちが囲み、儀式を行っていた。
「やはり、復活の儀式か……!」
アレスが、剣を抜き、戦闘態勢に入る。
魔女たちは、三人の姿に気づくと、不気味な笑みを浮かべる。
「人間め……! この偉大なる毒龍様の生贄となるがよい!」
魔女たちが、魔法を放ってくる。シャクは、素早く結界を張り、魔法を防ぐ。
「シャク、結界は俺たちが破る。お前は毒龍を狙え!」
アレスは、シャクに指示を出すと、カーミラとともに魔女たちへと突進していく。
アレスは、剣で魔女たちの魔法を弾き飛ばし、カーミラは、俊敏な動きで魔女たちの懐に入り込み、鋭い爪で切り裂く。
シャクは、結界を張りながら、毒龍へと近づいていく。毒龍は、シャクの存在に気づくと、巨大な口を開き、毒のブレスを放ってくる。
「くっ……!」
シャクは、結界を最大限に強化し、毒のブレスを防ぐ。しかし、ブレスの威力は凄まじく、結界は少しずつひび割れていく。
「シャク、大丈夫か!?」
アレスが、シャクを心配する。
「大丈夫! それよりも、毒龍を止めるのが先だ!」
シャクは、結界を張りながら、毒龍へと精神を集中させる。そして、静かに観音経を唱え始める。
シャクの声は、慈愛に満ちた澄んだ響きとなり、森の瘴気を打ち消していく。毒龍は、その声を聞くと、苦悶の声を上げ、暴れだす。
「ぐぅぅぅぅ……! な、なんだ……この声は……!?」
毒龍の体が、シャクの声に呼応するように、光を放ち始める。魔女たちは、シャクの持つ力に驚き、恐怖する。
「まさか、あの小僧……! 観音経を唱えているのか!?」
「毒龍様の力が、弱まっていく……!?」
シャクの声が響き渡る中、毒龍の動きは次第に鈍っていく。咆哮も小さくなり、その体から放たれる瘴気も薄れていく。
そして、シャクは、観音経を唱えながら、毒龍の心を浄化していく。毒龍は、かつて持っていたであろう、清らかな心を取り戻していく。
「……すまない、人間よ……。 私は……ただ……」
毒龍は、弱々しい声でそう呟くと、再び静かに横たわる。
シャクは、毒龍の心に触れ、その苦しみを知った。毒龍は、魔女たちによって無理やり復活させられ、自我を失い、操られていただけだったのだ。
シャクは、最後の力を振り絞り、陀羅尼を唱え始める。シャクの体から、光が放たれ、毒龍を包み込んでいく。毒龍は、苦悶の声ではなく、安堵の声のようなものを上げながら、光に浄化され、消滅した。
魔女たちは、毒龍の消滅に驚き、恐怖する。そして、シャクの放つ光に、怯えながら逃げ出していく。
「……終わったか」
アレスが、安堵のため息を漏らす。
「ええ……。これで、この森も、平和になるわね」
カーミラも、ほっと胸を撫で下ろす。
三人の、新たな戦いは、こうして幕を閉じた。しかし、彼らの旅は、まだまだ終わらない。新たな依頼、新たな冒険が、彼らを待っている。




