部屋割りの謎
黒木は罪に問わないことを条件に協力した。
まったく何て図々しいのか。
この条件を呑まなければ黒木は沈黙を貫くだろう。
今さら海老沢氏の人隣りを聞いても意味ないが生前の彼を知るのは奴しかいない。
「前にも言ったが俺たちには依頼人がいる。そもそも依頼人なくては始まらない。
その依頼主がこの海老沢って爺さんだ。
俺たちは奴の命令で泣く泣く詐欺を働いた。
ガラクタを売りさばくように強要したのも奴だ。
俺たちはそのお礼としてお金を得ていたがそれも微々たるものさ。
奴はケチでケチで。俺たちのことを奴隷か何かと考えていたんだろう。
口車に乗って色々悪いことをした。結局俺たちは踊らされていたのさ。
奴が作ったマニュアルの通りに動いていただけなんだからな。
犯罪被害者のメンバーが恨んでいるのも無理はない。俺たちだって嫌だった。
殺されて当然な人間さ海老沢は。だが仲間は違う。俺たちは何も悪くない。
俺はいつだって被害者に寄り添うつもりだ」
何て白々しいことを。今さら改心しても遅い。いやこれはしてる振り。
本心ではない。いい加減己の罪と向き合え。
罪から逃れることは決して出来ないのだから。
「では海老沢さんは詐欺グループでは依頼する立場だったと? 」
もはや死人に口なし。適当に言っても分かりはしない。
そのことをよく理解してるから海老沢氏にすべての罪を擦り付けている。
「ああ俺たちはただの下っ端さ。言われるまま動いただけ。
お前らだってそうだろ? 言われるまま会社の言いなりに。
情けないが刃向かう力も勇気もない」
同情してもらおうとあらゆる手段を取る。
ただ私は探偵なのでその常識は通用しない。
他の者は説得されそうになるが…… 一体いつまでふざける気だ?
黒木を見てるだけで腹が立つ。下っ端? そんなはずがないだろ。
お前が被害者を脅したんだろ? 仮に海老沢の指示だとしても良くて共犯さ。
信じられるか? 信じられるはずがない。
説得力のカケラもない。ただの言い訳であり責任転嫁でしかない。
そうやって空気を吸うように嘘を吐き被害者を騙し地獄に落としてきた。
黒木の言葉を真に受けてはいけない。
もうつまらない言い訳は聞きたくない。
話を戻すことにする。
「ではまず海老沢さんが三〇一号室へ」
殺されるとも知らずに真犯人の用意した檻へ。
「それでは黒木さんに聞きます。なぜ皆さんバラバラの部屋に? 」
海老沢は一号室、ミサさんは三号室、黒木はなぜか四号室、雑見は六号室。
千田は九号室。見事にバラバラ。これは偶然と言うよりも示し合わせたのだろう。
「もちろん仲間だって知られると後の仕事に差し支えるからな。
ジュエリー販売までは他人の振りさ。その後はまあ密かに集まったりしてたがな」
「そうですか。ではなぜあなただけミサさんの隣の部屋へ? 」
彼だけがミサさんの隣の部屋を選んだ。
はっきり言えば彼がそんなことをしなければ目立つこともなかった。
もはや意味不明の行動を取るお茶目な黒木?
「それは何だ…… 俺たちは愛し合ってるからさ」
恥ずかしげもなく言い放つ。ただの不倫関係のはずだが。
好きにすればいいが時と場合がある。
「まあいいでしょう。それで二人以外はバラバラに散らばったと」
「ああ別に大したことでもないがこれも念のためって奴だ」
黒木の指示らしい。そのくせ自分は守らないのだから矛盾してる。
間抜けとしか言えない黒木の行動が事件を複雑化させる。
それにはもう一組似たような者たちの存在も大きく関わっている。
「では小駒さんたち犯罪被害者の会の方はどうしてこのような部屋割りに? 」
「ああそれはやっぱり黒木たちに悟られたくないからさ。
だがそれも取り越し苦労だったみたいだね。奴ら騙した人間を覚えていなかった。
バスに乗って気づいた時は心臓がどきどきしたもんだ」
突然の再会に彼らも手を打った。全員がバラバラに。
偶然にも二つのグループが同じ思考の元で動いた。
果たしてこれは偶然なのか?
そうするように仕組まれていたとしか思えない。
小駒さんたちもバラバラ。
ただ龍牙と奈良がくっついたせいでそれもおかしくなった。
ただこれくらいのイレギュラーがあった方が自然。
詐欺グループも犯罪被害者の会も真犯人の思惑通りバラバラに。
こうして第一関門を突破した。
続く




