鳴りやまぬベル
トントン
トントン
何度も叩くが反応がない。疲れて寝てしまったか?
よしここは思い切って一気に行こう。
ガチャ。
シーンとしたところに鍵の開く音が響き渡り何とも言えない緊張感。
まさか気付かれたか?
お邪魔します。
やっぱり点けっぱなしで寝てやがる。本当に世話の焼ける男だな。
気付かれないようにゆっくり。
あれ…… 何でない?
凶器の壺がどこにも見当たらない。
作戦の裏の裏を掻き各部屋に壺を戻したはずなのにその凶器が見当たらない。
撲殺には丁度いい大きさの鈍器だったのに。あるはずのものがない不思議。
これは一体どう言うこと?
せっかく皆と同じように撲殺してあげようと思ったのに。
仲間想いのリーダーにはぜひとも同じ処刑方法をと考えていたが難しいらしい。
まあいいか。では予定変更して絞殺にする。
どうせ自殺に見せかけて失踪させるつもりだったからな。
被害者がどうなろうと大して問題ではない。
それにもし私が捕まっても本望。逃げ仰せようなどとセコイことは考えていない。
「おい! 」
怒りに震えつい大声を出してしまう。だが相手は無反応。
「いい度胸だな。しかしここで起きないのは単なる間抜けでしかないぞ」
酒でも入ってるのか気持ち良さそうに寝やがって。
こっちのことも少しは考えろよな。やる気が削がれるだろうが。
「おい起きろ! 起きろってんだ! 」
怒りをコントロール出来ずに叫んでしまう。
まずいまずい。他の者に気付かれては面倒だ。
ここは慎重に。焦らずじっくりと。
それにしてもこいつ…… うつ伏せで寝てやがる。これでは顔も見えやしない。
うごおお! ふうう……
イビキはうるさいし寝言も言うし屁までこいて。本当に緊張感のない奴だ。
「今から殺されるんだぞ。いい加減に目を覚ませ。起きろってんだ! 」
仕方がない。無反応の奴を始末するのは私の主義ではない。
だがここで手をこまねいてはいられない。そろそろ処刑の時間だ。
もしもの為に用意したロープを手に慎重に近づく。
まあこれだけ熟睡してれば仕留めるのは造作もない。
ムニャムニャ……
いい気持ちで寝ている。もう怒る気にもなれない。
ではそろそろフィニッシュと行きますか。
ロープを巻き付ける。そして命一杯後ろに引っ張る。
もう目を覚ましても遅い。
暴れても食い込んだロープは決して解けない。どんどん食い込んで行くぞ。
もしロープが解けるとしたらそれはお前が意識を失い最後を迎える時だ。
さようなら。これですべての計画が予定通りに。
まさか私がドスグロ山の雷人だとは夢にも思わないだろうな。
うううう……
苦しみだした。これでいい。これで。
「私たちの苦しみを思いしれ! 自殺した息子の苦しみを味わえ。ははは! 」
もう間もなくだ。あと数分もすれば意識を失いそのまま地獄に。
ゴーン! ゴーン!
突然ベルが鳴った。
誰も訪れることのないドスグロホテルでベルが鳴る。
しかもこんな夜中に…… あり得ない。
これは異常事態。いやただの怪奇現象か?
壊れたように鳴り続けるベル。
おい誰か? ダメだ。ベルが止まない。
どうする? どうする?
うおおおお!
「そこまでです! 」
いつの間にか部屋の中に人が。
ライトを向けられロープを落とす。
万事休す。
「ふふふ…… まさかこれも罠…… 」
「あんたが犯人なのかい? 感謝するよ」
お婆さんが姿を見せる。
「危ないから近寄らないで。下がって早く! 」
念の為に注意する。もちろん犯人がお婆さんを襲うことはないだろう。
真犯人はそんな人間じゃない。ターゲット以外を決して傷つけようとはしない。
ましてやお婆さんを人質に取り逃走を図ろうなどとは思ってないはずだ。
真犯人の正体さえ分かってしまえば何てことはない帰結。
「いや同志だからね。いいじゃないか」
四人も殺し最後のターゲットにも手を掛けようとした真犯人に仲間意識を持つ?
「それにしても鍵を落とせって言われた時はぶっ飛ばしてやろうかと思ったよ。
これは三〇三号室のだろ? ならあの女の部屋の鍵ってことになるね」
率直な感想を述べ、ついでに説明するお婆さん。小駒さんだ。
「小駒さんなら上手くやってくれると思いました」
「そうかい。買い被りすぎだよ」
そう今回の計画で外せないのが小駒さんの存在。
「彼女に真犯人であるあなたの目の前で鍵をわざと落とすようにお願いしました。
それを拾うかまではこちらとしても賭けでしたが。
どうやらこの勝負は我々の勝ちのようですね」
ここは三○四号室。黒木の部屋。
三〇四号室はこの三〇三号室の鍵で開けることが可能。
反撃開始!
ついに真犯人のドスグロ山の雷人を追い詰めた。
続く




