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恨まれる覚え

犯人が分かった気がする。たぶんあいつだ。


姿と声を変え今回のバスツアーに無理矢理参加させた依頼人。

結局奴の素性は掴めなかった。

てっきり俺たち同様詐欺師だとばかり…… こっち側の人間だと疑わなかった。

だがよく考えれば初めから俺たちをドスグロ山に閉じ込める気だったのだろう。

もし今回の連続殺人が奴の仕業なら俺たちはまんまと一杯喰わされたことになる。


探偵に相談しても良かったがどうせこんな都合のいい話など誰も信用しない。

それどころか言い逃れしてると思われ余計に疑われるだけ。

奴らは探偵も含め俺を信用してない。俺だって奴らを信用してない。

信用できるのは仲間だけ。

もうそいつらも居なくなっちまった。

昔堅気の詐欺師は絶滅するしかないのか?

見てろよ。俺は奴らとは違う。

絶対に生き残ってやる。生き残ってやるからな!

そしてもっと人を騙し続けてやるんだ。

警察なんか信用できない。

警察とは一切関わるつもりもない。


ハアハア!

ハアハア!

やっぱりビール一本じゃ酔いはしない。

買い足すかな? だがこんな夜中に出歩いたら真犯人の思う壺。

殺してくれと言ってるようなもの。俺はそんな間抜けじゃない。

ここは大人しく寝るか。だが本当に眠れるのか?


取り敢えず冷静に冷静に。

よく考えれば俺は何もしてない。殺人犯なんかじゃない。

殺人には一切関与してない! 一切だ!

だから令状でもない限り俺を拘束できない。

もちろん逃亡犯でもない。

まだ俺たちは捜査の網には引っかかってはいないはずだ。


うーん。それにしても何で奴は次々俺たちを狙うのか?

俺を…… 俺たちを殺そうとするのか?

まったく理解が出来ない。

真犯人は一体何を考えてやがる?


だってよ。詐欺は今現在どこでも起きてること。

俺は人間が出来てるから被害者が悪いとは思わない。

騙されるのが人間だと心得ている。

だからこれは仕方ないこと。諦めてくれよな。

物凄い額を詐欺したんじゃない。

高くても二百万かそこら。

確かに高いって感じるだろうがこれをもって破産することもない。

勉強代だと思えば安上がりだ。

感謝して欲しいぐらい。これで悪質な詐欺に遭わずに済むかもしれないんだから。


不動産に株、Fx。この手のやばい投資に嵌ればすぐ借金を負うことになる。

その損失を取り戻そうと大きく張れば余計に借金が膨らみ大変なことに。

政府はそれを推奨している。

貧乏人を焚き付けて搾り取るだけ搾り取る最新の貧困ビジネスだ。

俺たちには想像もつかない世界さ。

命がいくらあったって足りねえ。

そもそもそれらは投資ではなくて投機だ。

俺たちがやってるのも凍死じゃなくて陶器だ。

あーもう寒いな。何で山はこんなに冷えるんだよ。


何であれ命あってのものさ。

うん…… 命? まさかあのことがばれたか?

だがあれは俺の指示じゃない。

俺はただ詐欺が発覚しないように壺を壊せと命令した。

それなのに千田の奴が轢いちまった。

だから奴は交通刑務所に。

去年出所したんだったけか。

目撃者が壺を持った被害者の前方不注意だと証言してくれたから助かったが。

もちろん目撃者ってのは一緒に歩いていたミサのことで……

うん? あの当時の記憶が蘇ってくる。


だがそれでも何で他の奴まで殺す必要がある?

特に鑑定士や美術商の爺は表向きはただの雇われ人。

もちろん美術商の爺の指示の下で俺たちは動いた訳だが……

まさか漏れてるのか? すべて筒抜け?

ドスグロ山の雷人はもちろん存在しないさ。

でも俺らを恨んでいた者は確かにいた。

特に犯罪被害者の会の奴らだ。

まずい。これは一人や二人ではない。

全員で俺たちを抹殺しようとしてる。

くそ! やはり早く逃げるべきだった。


あの探偵もその仲間もバスガイドも料理人の女もグルなのか?

もしそのことに気付いたと知られたら豹変して八つ裂きにされる。

俺が悪くないと言っても聞いてはくれない。

仮に理解されても婆さん辺りが仕方ないねと続行する気だ。

土下座でもするか?

いやそんなんで通用する相手じゃない。

警察が来るまで閉じこもって警察の監視の中下山するしかない。


くそ! もう考えるのも面倒だ。

寝るとしよう。

電気をつけっぱなしにして横になる。


ガサガサ

ガサガサ

ついに真犯人が動き出した?

まずい眠っちまった。

あれまだ朝じゃないのかよ。

もういいや。眠っちまおう。

物音がしたから起きてみたがどうやら勘違いらしい。

大丈夫。鍵さえきちんとかけておけば襲われることもないさ。

あれ誰かいる…… 訳ないか。


               続く

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