最後の夜
最後の夜。
念の為に黒木からも話を聞くつもりだったが予定が狂う。
肝心の黒木の姿がどこにも見当たらない。
「おい何で奴が居ないんだよ! 」
相棒に突っかかる。
「ごめん。いくら止めても言うことを聞かなくて。怖くてつい…… 」
相棒は言われるまま送りだしたようだ。抵抗ぐらいしろよな。
情けないんだからまったく。と言っても相棒にこれ以上求めるのは酷か。
黒木はもう放っておくしかない。
部屋に閉じこもったなら問題ないだろう。
さあそろそろフィナーレと行きましょうか。
食堂で再度話し合うことに。
「ではそろそろおやすみの時間ですが…… 」
何だかんだと警察のやる気のなさと自然の脅威によってもう一晩過ごすことに。
想定外の出来事。もう食糧だっていつ底をつくとも限らない。
そんな危機的状況。
「皆さん。黒木さんのことは放っておいて我々だけでも団結し乗り切りましょう」
賛成と反対が半々に分かれる。
相棒と龍牙にマジシャンがこちら側に着いた。
それ以外は反対に回る。従業員の二人は立場を保留。
「ちょっと皆さん。決して悪い話ではないと思うのですが…… 」
食堂で一晩過ごすよう提案。体に負担も掛かり大変だがその分安心感がある。
これ以上ない理想的な話のはずなのに。
黒木がどうだろうとここから誰も抜け出さなければ事件は起きないはず。
ここに至っては外部の者のせいには出来ない。
身を守るにはベストな提案のはずだがなぜか理解を示さない困った人たち。
「私しゃ嫌だね。元々一人で静かに眠りたいんだ。
それに次のターゲットは決まってるだろ。黒木。黒木以外いないさ。
だったらどこで寝ても関係ないだろ? 」
頑固なお婆さん。我がままが過ぎて苦労する。伝説の小駒さんが聞いて呆れる。
「そうだよな。俺は恨まれる覚えがない。好きにさせてもらうぜ」
奈良は反対意見を曲げずに小駒さんの援護射撃に回る。
まあ当然か。自分が被害者にならないなら別に怖くはない。
だがそれではあまりに都合が良すぎないか?
まだ完全に詐欺の恨みとは断定してないのに。
仮に詐欺による恨みであろうと我々の安全が保障されたことにはならない。
四人もの人間を殺した犯人が本当に我々を見逃してくれるだろうか?
黒木に復讐を果たすために皆を道ずれにしても何ら不思議はない。
次々と人を殺した冷酷な犯人がそこまで人が出来てるか?
真犯人、ドスグロ山の雷人の狙いはまだ分かっていない。
勝手に決めつけて痛い目に遭うのは自分自身だ。
「どうしようかな…… 」
奈良に唆されて部屋に戻ろうとする優柔不断な龍牙。もうこれはダメだな。
「山田さんはどうしますか? 」
「探偵さんには申し訳ないですがここにいる方が危険と判断しました。
特に女性陣は気を付けた方がいいですよ。
こんな時ですから。何が起きるか分かりませんし」
忠告する山田さん。以外にも冷静だ。
「そうですよね…… 」
賛成も反対も表明してない従業員の二人も喰いつく。
「いやいや一緒にいた方が安全ですって! 信じてください! 」
強く言えば言うほど女性陣は離れていく。
まさか邪な心を感じ取ったのかもしれないな。
あれだけ実験と称して色々要請も協力もしてもらったからな。
疑う気持ちも分からないでもない。
結局山田さんの一言で龍牙も部屋に戻ることに。
従業員二人も倣った。
残るはマジシャンと相棒の意志だが……
これではもうあまり意味がないとなり解散することになった。
本当に残念でしかない。
これが真犯人の思惑通りなら再び事件が起きる。
それともまさか起こらないのか?
マジシャンが姿を消し仕方なく部屋に戻ることにした。
さあこれからだ。この後何が起きるのかまったく想像がつかない。
どう黒木が料理されるのか興味深い。
「なあどうする? 」
相棒と今夜のことを話し合う。
夜を徹して見張りをする価値はある。
狙われるのは黒木。ならば警備もしやすいはずだ。
とにかく出来る限りのことをする。
それが探偵。明後日探偵の意地。
今晩は犯人にとっても最後のチャンス。
これを逃せば明日には警察が到着するだろう。
遅れに遅れた警察の到着。
情報伝達のまずさに加え天候の悪化、土砂崩れがとどめを刺す。
こんな不運が重ならなければ被害は食い止められたかもしれない。
最初の対応。初手を見誤ったことに尽きる。
我々にとってもそれは同じ。
黒木だってここを逃げ切れさえすれば自由だ。
絶対に扉を開けなければいいのだ。
果たして真犯人はどのような作戦で我々の裏を掻いて来るか?
見物だが実際そうなったら嫌だな。
想像するだけで吐き気がする。
凶器はやはり壺なのだろうか?
最後の攻防が始まろうとしている。
次回解決編突入!
続く




