小駒さんの不気味な予言
衝撃の事実。
残された血文字は一部真犯人が書いたもの。
「自分の血? 」
「ナイフか散らばった破片で手を切ればいい。
たぶん人差し指。それも右の人差し指。この被害者右利きだろう? 」
遺体の状況からも右利きなのは明らか。
「ちょっと待ってください。被害者は右利きでも犯人が右利きとは限りませんよ」
「馬鹿だねあんたも。それでいいのさ。犯人は関係ない。
被害者がどちらの手で書いたかが問題なんだからね」
「はああ…… 」
「納得いかないのかい? だったら犯人の心理を考えて見なよ」
小駒さんはなぜかよく心理を持ち出す。だが私はその分野に明るくない。
でも考える振りでもしないと機嫌を損ねる。
心理…… 犯人の心理と……
「ああそうか! 仮に左利きでも真似をするには右を使うしないのか」
「そう。左利きでも根性で右で書くのさ。どうせ血文字は乱れてるんだからね」
ごまかすには右を選択せざるを得ない。
「でもなぜそこまでするんでしょうか? 」
「さあね。実際は放っておいても良かった気もするよ。でも怖かったんだろう。
ダイイングメッセージをこすり落とすのも難しかっただろうしね」
焦った犯人の行動は我々には理解不能。
「ありがとうございます」
これでダイイングメッセージの謎さえ解ければ真犯人を追い詰められる。
一歩も二歩も前進だ。気合いを入れ直す。
「ちょっと待ちな! 自分の血で付け足したってのはあくまで想像でしかないよ。
確認が必要だからね。そこんところは慎重にやりな」
小駒さんから有難いお言葉を頂く。
「分かってます。でもたぶん間違いないでしょう」
「ねえ…… これは勘だけどさ。捕まるのは覚悟の上な気がするんだよね」
小駒さんの見立て。犯人の心理を読み解く。
「どう言うことですか? 」
「いやだから現場に自分の血を残す馬鹿がどこにいるんだい?
警察が入れば一発で分かっちまう。容疑者はこの中にいるんだからさ」
確かにそうだ。間抜けな犯人。思い描いた犯人像とはかけ離れている。
もっとこう冷静沈着で計画通りに進めてる感じがしたがどうも違うらしい。
「それにまだ事件は終わってない気がするんだよね」
小駒さんが不気味な予言をする。
連続殺人はまだ終わってないと。
それどころか真犯人は決定的な証拠を残しており捕まることを恐れていないとも。
小駒さんの不穏な予言に冷や汗が止まらない。
「冗談でしょう? だって…… 」
「最後の殺人がまだ…… でなければダイイングメッセージを隠す意味がない。
自分の血を使ってまで偽装する必要がないんだ。後は捕まるだけなんだから」
結局は詐欺師を皆殺しにする気なのか?
「いやいや、ちょっと待ってください。その最後のターゲットってまさか? 」
「さあね。奴しかいないんじゃないかい」
奴とは恐らく黒木。詐欺グループのリーダーで最後の生き残り。
黒木が最後のターゲット。
これはある意味小駒さんによる宣戦布告。
暗に止めてみろと言っている気がする。考え過ぎか?
このことは誰にも漏らさないようにと釘を刺す。
続いてガイドさんを尋問。
人がいない静かで落ち着いたところがいい。
ガイドさんの部屋にしよう。
食堂を覗いたら相棒の奴がまたイビキを掻いてやがった。
昼間あれだけ切れていたのにもう使いものにならないとは計算外。
仕方ないので相棒に代わって料理人に監視を頼むことに。
まあ大丈夫でしょう。不審な動きをすればすぐに気付かれてしまう。
一か所に皆を集めれば危険はない。
このまま警察が来るまで食堂にいてくれると助かるんだけど。
言うことを聞かないワガママな被害者候補兼容疑者。
今夜も好き勝手言って自分の部屋に籠るんだろうな。
小駒さんの言う通り確かに黒木が最後のターゲットだろうがそれも確実じゃない。
犯人がどう出るか分からない。警戒は怠れない。
「あのガイドさん。実は…… 」
「嬉しい! 」
いきなり抱き着いてきた。予想外の展開につい受け入れようとする。
だが今は尋問中。余計な感情に流されてはいけない。
一応はガイドさんと田中さんは容疑者から外れてるので形だけの尋問。
「どうしました? 落ち着いてください」
必死に冷静さを装う。
そうしなければ理性を失う恐れがある。
続く




